短趾屈筋(flexor digitorum brevis)

この記事では、短趾屈筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。

短趾屈筋の概要

短趾屈筋の起始停止

短趾屈筋は足裏に位置する内在筋で、その表層は足底腱膜により完全に覆われています。

足底腱膜の負担を減らす作用があるため、足底腱膜炎の治療や予防として短趾屈筋の筋力強化は有用です。

前足部横アーチの保持にも貢献しており、アーチが低下している症例では、母指球筋とともに短趾屈筋の筋力低下が認められます。

基本データ

項目

内容

支配神経 内側足底神経
髄節 L5-S1
起始 踵骨隆起下面および足底腱膜
停止 2-5(または4)趾骨の中節骨底
動作 2-5趾の屈曲(PIP,MP関節)
速筋:遅筋(%) 55.544.5

運動貢献度(順位)

貢献度

足趾屈曲(第2〜5趾)

1 長趾屈筋
2 短趾屈筋

短趾屈筋の触診方法

短趾屈筋

写真では、足関節を完全底屈位、母趾を屈曲位に保持した肢位で、第2-5趾のMP関節の屈曲運動にて、短趾屈筋を筋腹にて触診しています。

母趾を屈曲保持する理由は、短趾屈筋の足底前方に起始する短母趾屈筋腱の収縮を防ぐことができるからです。

また、足関節を最大底屈位に保持することで長趾屈筋の収縮を緩めることができ、選択的に短趾屈筋を収縮させて触知しやすくしています。

ストレッチ方法

短趾屈筋のストレッチング

軽く膝を曲げた両脚を前後に開き、後方のつま先を床に押しつけていきます。

足趾がしっかりと伸展するようにストレッチしていきます。

筋力トレーニング

短趾屈筋の筋力トレーニング

床にタオルを伸ばして引いて、その端を足の指で掴みながらたぐり寄せていきます。

その際に足関節を底屈位に保持しておくことにより、長趾屈筋の収縮力が弱まり、短趾屈筋を選択的に鍛えることができます。

トリガーポイントと関連痛領域

短趾屈筋のトリガーポイントは筋腹中央(第3中足骨頭と踵骨との中間)に出現し、関連痛は内側足底神経の支配領域に発生します。

アナトミートレイン

短趾屈筋はSBL(スーパーフィシャル・バック・ライン)の筋膜経線につながる筋肉であり、体幹前屈動作などで重要な筋肉になります。

例えば、テニスボールなどを使用して短趾屈筋の緊張を和らげると、腓腹筋やハムストリングにつながる筋膜が緩むため、前屈の可動域を増大することができます。

また、脊柱起立筋を通過して頭部前方まで伸びているため、背部全体の筋膜を緩めることにもつながります。

内在筋と外在筋

内在筋は足根骨もしくは足趾骨に起始と停止を共に持つ筋を指し、外在筋は足関節よりも近位に起始を持ち、足趾骨に停止する筋を指します。

長趾屈筋は外在筋で、短趾屈筋は内在筋に属し、支配神経も異なります。

また、内在筋の中でも趾骨のみに起始と停止を共に持つ筋肉のことを中足筋と呼びます。

外在筋 筋肉

支配神経

母趾 長母趾屈筋 脛骨神経
長母趾伸筋 深腓骨神経
他趾 長趾屈筋 脛骨神経
長趾伸筋 深腓骨神経

内在筋

筋肉

支配神経

母趾 短母趾屈筋 内側足底神経,外側足底神経
短母趾伸筋 深腓骨神経
母趾外転筋 内側足底神経
母趾内転筋 外側足底神経
他趾 短趾屈筋 内側足底神経
短趾伸筋 深腓骨神経
足底方形筋 外側足底神経
短小趾屈筋 外側足底神経
小趾外転筋 外側足底神経
小趾対立筋 外側足底神経
虫様筋 内側足底神経,外側足底神経
中足筋 背側骨間筋 外側足底神経
掌側骨間筋 外側足底神経

関連する疾患

  • 開張足
  • 中足骨頭部痛
  • 足底胼胝
  • モートン病
  • 扁平足障害 etc.

開張足

足関節のアーチ|横アーチ|内側アーチ|外側アーチ

短趾屈筋の重要な役割は、遠位横アーチ(前足部横アーチ)の構成です。

短趾屈筋や母趾屈筋に筋力低下が認められる症例では、遠位横アーチが低下しています。

遠位横アーチが低下すると前足部が横に広がる開張足がみられたり、足底を通過する底側趾神経が圧迫されてモートン病を引き起こします。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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