「低い椅子や床から立ち上がるときに膝に力が入らないので、机などに掴まってから立ち上がるしかない。」
「階段を上るときに悪いほうの脚に力が入らないので、良いほうの脚で一段ずつ上がるようにしている。」
整形外科で働いていると上記のような訴えをよく聞きますが、これらの問題の根底にあるのは筋力の低下です。
具体的にどの筋肉に問題があるかですが、ほとんどの場合は「大殿筋」と「外側広筋」に問題があると考えています。
これらの筋肉は階段を上るときに最も必要な筋肉になりますが、両者はBFLという筋筋膜の路線を通じて強く繋がっています。
大殿筋は機能低下を起こしやすい筋肉であり、それに連結する広背筋や外側広筋は緊張を保つために硬くなりやすい傾向にあります。
外側広筋が硬くなると膝蓋骨は外上方に変位して、膝関節伸展の筋力低下や膝蓋大腿関節症を発生する原因になります。
また、外側広筋には下腿を外転・外旋させる作用があるため、下肢がX脚傾向となっているケースも多いです。
膝関節伸展に最も貢献するのは大腿四頭筋ですが、その中でも1番は中間広筋で、2番は外側広筋の貢献度が高いです。
下の図(大腿部の断面図)を見ていただくとわかりやすいですが、両者の境目は内側広筋や大腿直筋と比べて不明瞭です。
そのため、外側広筋が硬くなると膝関節伸展の主力筋である中間広筋も同時に硬くなり、大腿四頭筋の筋力は著しく低下します。
これらの理由が昇段や立ち上がりのしにくさを招いている原因であり、どのようにして改善していくかを考えるうえで重要となります。
外側広筋が硬くなった原因に大殿筋の機能低下があるなら、大殿筋のリラクゼーションや筋力強化をする必要があります。
大殿筋の機能低下を起こした原因に拮抗筋である腸腰筋の短縮や緊張があるなら、腸腰筋のリリースやストレッチをする必要があります。
そのようにして中間広筋に影響を与えている因子を取り除いてから、筋出力を発揮できるように調整していかないと効果は期待できません。
筋肉の繋がりに目を向けることで症状を整理できることは多いので、明日からの臨床の参考にしてみてください。