整形外科の理学療法士がレントゲン写真をみるときには、骨に不整な部分がないかをチェックすることはとても重要です。
例えば、スポーツ習慣者で脛骨粗面に痛みがみられる患者では、そのほとんどに脛骨粗面の不整が認められます。
この情報から読み取れるのは、脛骨粗面に何らかのストレスが加わり続けているということです。
脛骨粗面に付着するのは大腿四頭筋腱(膝蓋腱)なので、大腿四頭筋からの牽引ストレスを頻繁に受けていると予測できるわけです。
上のレントゲン写真では、左右ともに不整が認められますが、膝蓋骨の位置が左写真のほうが上位にあります。
このことから予測されるのは、大腿四頭筋の緊張は左写真のほうが高く、脛骨粗面へのストレスも強いと考えられます。
もうひとつ実例を示すと、上記のレントゲン写真の患者は股関節の痛みが主訴でリハビリ開始となりました。
股関節にはほぼ変形がないため、この画像だけで医者が疼痛の原因を診断することはかなり難しいかと思います。
ここで活用したいのが前述した「骨の不整がないか」ですが、大転子の上方をよく見てみると牽引ストレスによる不整がみられます。
大転子に付着する筋肉は、中殿筋や小殿筋、股関節外旋六筋があります。
大転子上縁に付着する筋肉は梨状筋ですが、実際に触れてみると小殿筋の圧痛が最も強く、そこから下肢外側にかけて痛みが波及していました。
骨棘や骨挫傷などもそうですが、骨にストレスが加わっている部分には、何かしらのサインが見て取れる場合が多いです。
そこを見落とさないようにすることで、介入前でも患者情報だけである程度に疼痛誘発組織を絞ることは可能となります。
最後にもう一例だけ紹介しますが、上記のMRI画像では大腿骨内顆と脛骨内顆に骨挫傷がみられます。
これまでの経験から書かせてもらうと、変形性膝関節症のヒトで骨挫傷が起こるかは、変形の程度とはあまり関係ありません。
関係があるのは半月板の有無(位置)であり、上の画像では内側半月板が関節外(右側)に飛び出していることがわかります。
そのせいで骨同士が衝突しやすくなっており、結果的に骨挫傷として見てとることができるようになっています。
臨床をしている理学療法士なら、画像の異常と疼痛が一致しないケースが多いことはよく知っているかと思います。
しかしながら、だからといって画像所見をおざなりにしていいわけではなく、そこから見えてくる情報も大切にすることが上達のコツです。
すぐに使える知識なので、明日からの臨床でぜひ参考にしてみてください!