筋膜損傷(筋膜炎)は炎症所見が乏しい

組織損傷のある場所は、機械的刺激によって自由神経終末の侵害受容器が興奮し、一次痛(刺すような痛み)が生じます。

これは損傷部位を知らせる警告信号なので、無意味に刺激しすぎないように注意が必要です。

組織が損傷して数十秒後からは、炎症によって生じるさまざまな化学物質により、二次痛(鈍くうずくような痛み)が生じます。

これは炎症に伴う痛みであり、炎症の4徴候が認められます。

筋膜炎(筋膜損傷)においては、動かすと痛みを伴いますが、黙っていると痛くない場合が多いので炎症をほとんど伴いません。

例えば、足底筋膜炎(土踏まず部分)では歩くと痛みを生じますが、歩くのをやめると痛みは感じません。

土踏まず部分にはほとんど炎症徴候が認められないので、一次痛が主な症状となります。

組織損傷は時間の経過とともに治癒することになるので、安静を保つことが早期に改善させるためには不可欠です。

リハビリにおいては、損傷部位にストレスをかける原因となった組織を中心にリースしていきます。

例えば、上腕骨外側上顆炎では上腕外側筋間中隔からの牽引ストレスが関与しているので、そこに連結する組織の硬さを取り除く必要があります。

具体的には、上腕筋や三角筋などがありますが、さらに、それらに連結する組織(僧帽筋や胸筋など)までリリースしていくとより効果的です。

受傷機転のない筋膜損傷では、炎症がほとんど生じていないので瘢痕治癒することはありません。

しかし、損傷(炎症)が著しい場合は瘢痕が形成された状態で炎症が終息するので、その後に新たな場所に牽引ストレスを生む原因となり得ます。

そのことを考慮すると、損傷部位に対する直接的なリリースは、瘢痕治癒後に限っては有効な手段といえます。

疼痛部位(損傷部位)へのアプローチは、ひとつ間違うと痛みを増悪させることに繋がるため、組織のイメージを持ちながら治療することが大切です。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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