テーピングの効果と目的に応じたテープの選び方について解説していきます。
テーピングの効果
理学療法士にも関わりの深いテーピングですが、その効果については大きく以下の4つに分類することができます。
①筋活動の促通と抑制
対象となる筋肉の走行にそってテーピングを施すことにより、筋活動の促通と抑制が可能となります。
促通テーピングでは筋出力を高めることができますが、拮抗筋のパフォーマンスは低下してしまうので、バランスを考えながら貼ることが求められます。
起始部と停止部に皮膚を誘導するテープを貼ることで、より効果的に促通が可能となります。
垂直跳びの実験では、ふくらはぎに痙攣防止のテープを貼ることで地面を蹴る力が向上し、跳躍高が平均して1%伸びたことが報告されています。
効果は少ないようにみえますが、スポーツの世界では僅かな差が勝敗を決めることもあります。
ちなみに筋活動を抑制するテーピングは、促通と反対方向に力が加わるように貼るようにします。
②関節可動域の拡大と抑制
テーピングにて関節可動域が改善する機序として、皮膚のたわみを利用することになります。
例えば、腰椎伸展時に痛みが出現する症例に対して腰椎伸展運動を制限しようとした場合は、下図のようなテーピングを施します。
黄色部分が痛みの出現する椎間関節だと考えると、患部に対して皮膚を集めるような誘導を行います。
そうすることで体幹伸展運動を制限し、屈曲運動は拡大することになります。
腰椎屈曲時に痛みが出現する場合は、先ほどとは反対方向に力が加わるテーピングを施すようにします。
③疼痛の軽減
疼痛の原因となっている部位をテーピングにて圧迫することにより、固有感覚が向上して疼痛の軽減をはかることができます。
また、応急処置の際は氷のうなどの上からテーピングを施して固定することにより、炎症の早期沈静化が期待できます。
圧迫目的のテーピングは、あくまで一時的な対症療法であり、長期的に使用すると血行不良や筋肉の弱体化を招くので注意が必要です。
市販で売られているエルボーバンドなどのように、テーピング代わりに使用できるものもあります。
④関節の固定
関節の動揺は関節に過剰な負荷が加わり、骨を痛めてしまう原因にもなります。
また、痛みのある運動方向への制限を加えることにより、疼痛の軽減をはかることも可能です。
関節のサポートを実施する場合は、あまり強く締めすぎないことがポイントです。
同様の効果が期待できるものにサポーターがありますが、こちらはひとりでも着脱が簡単ですので、長期的に使用する場合はサポーターをお勧めします。
テープを使い分ける
テーピングの効果が4つに分類できるように、それぞれに合ったテープの種類が存在します。
その代表的なものを例にして、以下に説明していきます。
①キネシオロジーテープ
筋活動の促通と抑制、関節可動域の拡大と抑制を目的として使用されます。
キネシオロジーテープは伸縮性が強いため、筋肉の走行に沿って貼ることで、筋肉の力を補助し、関節の動きを円滑にすることができます。
筋肉のサポートはサポーターには代用できませんので、テーピングの醍醐味といえます。
②ハード伸縮テープ
関節軟骨の摩耗や靱帯の損傷などにより、関節がゆるんで不安定になっている場合に使用します。
関節のサポートでは、完全な固定はせずに遊びが残る程度で貼っていきます。
関節の自然な動きが制限されないように注意してください。
③ホワイトテープ
関節を完全に固定をする際は、伸縮性のほとんどないホワイトテープを使用します。
足関節の捻挫といった受傷初期に使用し、関節を動かさないにして保護します。
遊びを作らないように貼っていきますが、血流障害や神経障害をきたさないように注意が必要です。
皮膚テーピングの理論
なぜ関節可動域がテーピングで変化するかについては、皮膚運動の五つの原則について理解しておく必要があります。
例えば、体幹前屈動作では身体が丸まって骨同士は開いていきますが、皮膚は脊椎中央のほうに集まっていきます。
そのため、テーピングにて皮膚の動きを促通することにより、皮膚の張りがなくなって関節可動域が伸びるようになります。
実際に脊椎屈曲の動きが乏しい椎間関節を中心に、上図のような皮膚誘導のテーピングを実施すると可動域が伸びるので試してみてください。
揃えておきたい用具
①はさみ(テーピングカッター)
テーピングを切ったり剥がしたりする際に使用します。
②ガードクッション
皮膚の上に置き、その上からテープを巻いていきます。患部の圧迫や保護を目的として用います。
③ワセリン
皮膚が痛みやすい部位に塗り、摩擦から保護します。
④粘着スプレー
皮膚に直接吹きかけて、テープと皮膚の接着力を高めます。
⑤粘着除去スプレー
皮膚とテープの間に吹きかけて、テープを剥がしやすくします。
テーピングには解剖学の知識が必須
テーピングの貼り方はよくわからないという人も多いですが、上述した目的をまず念頭に置くことが大切です。
そして、どのようにして貼ったら効果が得られるかを考えていくことで、より柔軟なテーピングを施すことができるようになります。
そのためにも、まずは関節の動きや筋肉の走行といった基礎的な解剖学を理解しておくことが必大切です。