肝臓(liver)は、右上腹部に位置する人体最大の器官で、上方は横隔膜に覆われており、下方には胃や横行結腸、右腎臓などがあります。
肝臓の重さは体重の約2%で、体重60kgのヒトで1.2kgほどになります。
再生能力が非常に高い臓器であるため、手術で一部を切除しても、ほとんど元のサイズにまで戻ることができます。
肝臓の機能は主に3つで、①胆汁の生成、②栄養分の貯蓄、③解毒作用になります。
肝臓には門脈と肝動脈の2つから血液が流れてきて、その割合は門脈が8割を占めています。
生成された胆汁は総肝管を通過し、胆嚢にて蓄えられた後、総胆管を通って十二指腸に流れます。
肝臓に問題がある場合は、上腹部の不調を繰り返したり、黄疸や原因不明の発熱などが起こります。
肝臓に慢性的な炎症が起きている場合は、身体のだるさや食欲不振を訴える程度で、ほとんど症状がないのも特徴です。
急性肝炎に限っては、発熱や吐き気、嘔吐、食欲不振、強いだるさ、黄疸などの症状が出現します。
その場合は、ウイルス性肝炎や薬剤性肝障害、自己免疫性肝炎などが考えられます。
肝臓の関連痛は、前面では右頸部から右肩上面にかけて、後面では右上背部に限局して現れることが多いです。
肝臓は右側に大きく位置しているので、関連痛も右側に起こります。
支配神経は、T7〜T10から出て大内臓神経と小内臓神経を経由する交感神経系と迷走神経になります。
肝臓の関連痛が頸部から肩にかけて出現する理由として、肝臓を覆う被膜は横隔神経(C3〜5)を介して支配を受けます。
上の図は、脊髄神経における皮膚知覚の支配領域ですが、C3〜5の領域がちょうど頸部から肩上面にあることがわかります。
肝臓は右側に位置しており、右側から神経支配を強く受けていますので、右側に痛みが出現すると推察されます。
肝臓に問題がある場合は、右第5〜6肋間隙または右第6〜7肋間隙に圧痛点が生じます。
後面にも出現する場合があり、その際は右側のT5〜6の横突起の間、棘突起と横突起の尖端の中間に生じます。
この部位はそのまま治療手技に用いることができ、肝臓に障害がある場合は非常に敏感となっています。
なので、指1本で軽い圧をかけながら、ゆっくりと回転させるようにしながらアプローチしていきます。