肩の痛みを訴えている患者に対して、肩のみにアプローチしても改善が乏しいケースは結構あります。
その中には胸鎖乳突筋をほぐすことで快方に向かう場合があり、なぜそうなるかを理解するためには筋膜の知識が必要です。
胸鎖乳突筋はSFL(スーパーフィシャル・フロント・ライン)を構成しており、この筋膜が硬くなると身体は前方に丸まっていきます。
さらにSFLはSFAL(スーパーフィシャル・フロントアーム・ライン)にも連なり、上肢の背面を筋膜でつなげています。
このラインでとくに重要なのが大胸筋であり、とても大きな筋肉なので姿勢を崩してしまう原因となりやすいです。
胸鎖乳突筋から胸骨筋、大胸筋に繋がる筋膜に短縮が生じると、肩関節は前方や上方に偏位していきます。
その状態で肩を動かしていくと正常な軌道を描けないために、インピンジメントを起こして痛みが起こることになります。
このような患者は見た目でも肩関節の高さが違うことは一目瞭然なので、見落とすことはないかと思います。
頸部の動きを確認してみると、胸鎖乳突筋が緊張状態にあるため、右肩が痛い場合は頸部の左側屈が制限されます。
また、胸鎖乳突筋には頸部回旋(反対側)の作用がありますので、右肩が痛い場合は頸部の右回旋が制限されます。
頸部の動きが硬くなっている場合は、筋膜を通じて肩の痛みを引き起こしていることもあるので、必ずチェックしてみてください。
最後におまけで胸鎖乳突筋のストレッチを2つほど掲載します。
ストレッチは手で頭を押しながら30秒ほど止めておくと効果的で、お風呂上がりなどに実施していただくとよいです。
治療者が徒手的に実施する場合は、肩関節に水平外転を加えながら行うことで、より前方の筋膜が伸張できます。
筋膜のつながりを覚えるとストレッチのバリエーションも増えるので、興味がある方は勉強してみてください。