肩関節の治療で「肩甲上腕リズムが崩れてる」とよく言われますが、具体的にどこが悪くて、どう対処したらいいのかと悩ましいところです。
臨床的に崩れてる場所(問題のある部分)はおおむね決まっており、そこに対処することだけ考えたら上手くいくことが多いです。
まずは肩甲上腕リズムの説明ですが、肩関節を180度外転させたときに、肩甲上腕関節の外転が120度、肩甲骨の上方回旋が60度となります。
以上のことから肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節は2:1の比率で動くといわれますが、これは単純に180度外転させたときの結果に過ぎません。
肩関節外転の角度を30度ごとにみていくと、リズムは非常に不規則であり、角度によって動く関節は異なります。
外転角度 | 肩甲上腕関節 | 肩甲胸郭関節 |
0〜30° | 主に動く | 肩甲骨下制 |
30〜60° | 同程度に動く | 同程度に動く |
60〜90° | 主に動く | 肩甲骨下制・内転 |
90〜120° | 動きは少ない | 主に動く |
120〜180° | 肩甲上腕リズム(2:1)で動く |
上の表で最も大切なことは、肩関節は90度外転までは肩甲骨は動かなくていいというところです。
正常の場合は、外転60〜90度で肩甲骨が下制・内転しますが、肩甲上腕リズムが崩れてるヒトでは肩甲骨が挙上してしまい、肩が挙がりません。
実際にやってもらうとわかりやすいですが、肩甲骨を挙上した状態で肩を外転挙上させると非常に挙げづらいはずです。
リハビリでは、この部分だけに着目して徒手的に誘導を加えることにより、肩関節がスムーズに外転できるケースも少なくありません。
具体的な方法としては、患者に側臥位をとってもらい、肩関節外転を自動介助運動にて反復していきます。
その際に治療者は、片手で肩甲骨の挙上を抑えながら、もう片方の手で上肢を外旋させるように誘導しながら外転させていきます。
肩峰下インピンジメント(腱板損傷)がある患者では、この方法が効果的である場合が多いのでぜひ試してみてください。