あくまで考察程度の記事にはなりますが、女性は男性よりも腱板損傷が少ない代わりに関節内インピンジメントが多いように感じます。
具体的には、肩関節を水平内転させると最終域で肩前方に痛みを訴えるケースが男性よりも圧倒的に多いです。
そのような患者は小胸筋が硬くなっており、肩甲骨が前傾・内旋している傾向にあります。
肩甲骨が内旋すると相対的に上腕骨は外旋するため、肩関節を外転させるときに肩峰下インピンジメントは起こりにくくなります。
それは結果的に腱板損傷を発生しづらくしており、小胸筋が硬くなりやすい女性ほど顕著になると考えられます。
ただし、肩関節を水平内転させるときには上腕骨が内旋している必要がありますが、肩甲骨が内旋していると難しくなります。
実際に肩関節を外旋した状態で水平屈曲してみるとわかりますが、健常者でも肩前方で詰まる感覚が出てきます。
これらのことを考慮したうえで治療を考えるなら、小胸筋のストレッチと肩関節内旋の可動性を引き出すことが重要となります。
肩関節の内旋制限に関しては、三角筋後部と棘下筋の癒着が影響していることが多いため、徒手的に剥離していくことが必要です。
肩関節内旋の主力筋である肩甲下筋が弱化していることもあるため、必要に応じて在宅トレーニングを指導していきます。
反対に腱板損傷を起こしやすい男性は、肩関節外旋があまり出ていないケースが非常に多いです。
そのため、上腕骨の外旋を引き出すように誘導していき、棘下筋を鍛えていくことが有効となります。
男性は女性よりも手を後ろに回せる範囲が少ないですが、その原因のひとつに肩甲骨の内旋・前傾が出にくいことが挙げられます。
そのことを考慮すると、肩甲骨の内旋を引き出すことが結果的に上腕骨の外旋を大きくすることにつながることがわかります。
もちろん全てではありませんが、男女で明らかに障害を起こしやすい場所は異なるので、それを考慮したうえで評価すると原因の特定が早くなります。
そういった検証作業を繰り返していると、どうしてこの障害が男性に多いのか、女性に多いのかといった疑問が一気に解決していきます。
簡単な考察ではありましたが、ぜひ明日からの臨床に少しでも役立ててみてください。