肩関節不安定症のリハビリ治療

整形外科で外来リハビリをしていると、多くの頻度で腱板の筋出力低下に伴う肩関節不安定症を担当することがあります。

肩が不安定な状態にあると、動かしたときにガリガリと音がしたり、動きの途中で急激な強い痛みが生じることになります。

理由としては、上腕骨頭が正常な軌道で回転していないために、周囲組織とぶつかったり、挟み込んで痛みを起こしています。

腱板が機能不全に陥る主な原因としては、棘上筋腱が肩峰下インピンジメントによって部分断裂を起こしていることが挙げられます。

肩峰下インピンジメント

腱が切れてるのだから筋出力を発揮できないのは当然ですが、臨床ではそれだけが原因ではないことも多いと感じています。

肩関節不安定症を起こしている患者のほとんどは、棘上筋や棘下筋などの腱板以外にも過剰な緊張が生じています。

肩関節腱板1

その関連性を考えていくうえで必要な知識として、DBAL(ディープ・バックアーム・ライン)という筋膜の繋がりがあります。

アナトミートレイン:筋膜:DBAL

棘上筋や棘下筋の筋出力低下を起こしている患者の多くに、肩甲挙筋と菱形筋の過緊張が存在しています。

これは棘上筋腱の損傷によって、その筋膜ラインに存在する筋肉が硬くなり、スムーズに動けなくなることを意味します。

腱板の出力を発揮させるためには、肩甲挙筋や菱形筋の硬さを取り除き、DBALの力伝達を遮らないことが必要です。

肩甲骨の動きと筋肉2

肩甲挙筋や菱形筋は肩甲骨を挙上・内転させますが、肩関節不安定症を呈している患者では拮抗筋である小胸筋にも過緊張が生じています。

また、棘上筋の機能を補うようにして僧帽筋上部も緊張しているため、それらの筋肉も硬さを取り除くことが求められます。

そのようにして肩関節周囲の状態を整えることで筋出力が改善するケースも多いので、不安定がある場合はアプローチしてください。

ちなみに肩関節不安定症の評価としては、側臥位で肩関節の外転運動(棘上筋)と外旋運動(棘下筋)を中心に行なっています。

外転運動は肩甲棘と上腕骨軸を一直線にした状態で30度ほどの範囲で反復させ、運動時に代償運動や疼痛、軋轢音が生じないかを確認します。

肩関節が安定してきたら、それらの運動はそのまま腱板トレーニングとして実施していき、肩関節不安定症を治療していきます。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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