肩関節の外側に起こる痛みの原因といったら、棘上筋腱の炎症や石灰沈着、三角筋下滑液包炎などが挙げられます。
他にも四角間隙(大円筋と小円筋の隙間)を通過している腋窩神経が圧迫されることで、肩関節の外側に痛みが起こります。
しかしながら、これらの代表的な原因だけを考慮して治療しても、あまり効果が出ないことは非常に多いです。
高齢者では棘上筋腱の部分断裂は一般的ですが、痛みがある人もいれば、痛みがない人も半数以上は存在します。
そもそも急性期でない腱板断裂が痛みの主因であるとは考えにくく、内側半月板損傷みたいなものと推察しています。
高齢者における膝関節の内側半月板損傷は一般的な所見ですが、こちらもほとんど膝内側痛には関与していません。
多くは膝蓋下脂肪体が痛みをひろっており、膝関節に炎症などが起こって周囲組織が拘縮することで二次的に障害を受けています。
では、肩関節外側の痛みで上記以外のどこが原因として考えられるかというと、重要なのが烏口上腕靱帯になります。
烏口上腕靱帯は、烏口突起基部から上腕骨の大結節をつないでおり、棘上筋と肩甲下筋の間(腱板疎部)で骨頭上面を補強しています。
この靭帯は膜様で弾力性と伸張性に富んでおり、停止部では関節包と一体化することがわかっています。
棘上筋腱の断裂が一般的な所見であることは前述しましたが、断裂前は炎症が起こりますので、そのときに周囲組織は影響を受けます。
上の画像は三角筋鎖骨部を取り除いた解剖図ですが、棘上筋腱と烏口上腕靱帯は連結していることがわかります。
実際はさらに肩甲下筋腱や上腕横靭帯とも連結しており、表層は三角筋下滑液包、深層は関節包が上腕骨頭を覆うようにして存在しています。
つまりは棘上筋腱が断裂して炎症が起こると、烏口上腕靱帯と周囲組織が癒着したり、靭帯そのものが拘縮することにつながるわけです。
烏口上腕靱帯は他の靭帯と比較して伸張性に富んでいるため、拘縮することで関節可動域制限を引き起こします。
最も障害を受けるのは下垂位での肩関節外旋ですが、制限とともに肩関節外側に痛みを訴えることになります。
これには三角筋下滑液包が影響していると考えられ、烏口上腕靱帯の拘縮に伴う伸張ストレスや滑走不全が疑われます。
具体的な治療方法としては、患者に仰臥位をとってもらい、施術者は肩関節を軽度外転・外旋位に保持します。
その状態から骨頭(大結節)を引き出すように力を加え、さらに肩関節を内転させていくことで、烏口上腕靱帯を集中的に伸張していきます。
持続的に伸張すると断裂する危険があるため、リズミカルに伸張と弛緩を加えながら実施していくとよいです。
周囲組織との癒着剥離を行うためには、一定の量を確保する必要があるため、原因と考えられるなら集中的にアプローチしてみてください。