主訴は肩関節外転位(90度)での水平外転時痛で、疼痛部位は肩関節外側の症例について考察します。
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症例情報
基本情報 | 60代女性 |
運動時痛 | 左肩関節外転90度からの水平外転時痛 |
疼痛部位 | 左肩関節外側、圧痛なし |
姿勢分類 | 胸椎後弯の増強 |
力学的推論
日常動作では痛みを感じることはほとんどなく、特定の動きのみで痛みを誘発している。
疼痛部位や姿勢を考慮した際に、肩峰下インピンジメントの可能性が高いと予測されるが、肩関節外転運動時は痛みを伴わない。
可動域制限はほとんどないが、関節モビライゼーション時は前方関節包にタイトが認められる。
前下方関節包が縮小しているケースでは、肩関節水平外転時に上腕骨頭が後上方に偏位するため、インピンジメントを起こすリスクが高い。
組織学的推論
肩峰下インピンジメントが疼痛の原因である場合は、疼痛誘発組織は腱板(とくに棘上筋腱)と考えられる。
腱板損傷では肩関節外側に痛みが生じるので、疼痛部位に関しても腱板損傷の可能性を示唆している。
肩関節外側の圧痛は認められないが、肩関節を内旋させる広背筋のタイトがあり、前方関節包が縮小しやすい姿勢を呈している。
腱板の萎縮や収縮不全は認められないため、初期の腱板損傷と考えられる。
治療についての考察
左肩関節外転90度からの水平外転時痛が主訴であったが、そこには肩峰下インピンジメントに伴う腱板損傷の可能性が考えられた。
治療は、①前方・下方関節包モビライゼーション、②上腕骨内旋筋のリラクゼーション、③上腕骨外旋運動を中心に実施していく。