腰痛の原因になりやすい脊柱起立筋群(erector spinae)について、筋肉のプロである理学療法士がわかりやすく解説していきます。
この記事の目次はコチラ
脊柱起立筋群の概要
脊柱起立筋群は脊柱の浅層に位置しており、脊柱に対して平行に走行している長背筋群の総称になります。
具体的には、以下の8つの筋肉から構成されています。
①頚腸肋筋(詳細はコチラ)
②胸腸肋筋(詳細はコチラ)
③腰腸肋筋(詳細はコチラ)
④頭最長筋(詳細はコチラ)
⑤頸最長筋(詳細はコチラ)
⑥胸最長筋(詳細はコチラ)
⑦頸棘筋(詳細はコチラ)
⑧胸棘筋(詳細はコチラ)
固有背筋の覚え方
固有背筋は細かく分類すると26個もあるため、すべての名称を覚えるのは非常に大変ですが、一定のパターンも存在しています。
そのパターンさえ覚えてしまったら、おおむねの筋肉の配置や名称を暗記ではなく理解して覚えることができます。
以下に、固有背筋を覚えるための表を掲載します。
固有背筋表 |
頭棘筋が「△」となっているのは、頭半棘筋と融合している場合が多いため、数えないこともよくあるためです。
また、多裂筋は頸・胸・腰部で三つに分ける場合もありますが、基本的にはひとつにまとめられて表現される場合が多いです。
脊柱起立筋は重力に抗するあらゆる動きで作用する抗重力筋に分類され、拮抗筋の腹直筋よりも日常生活で使用される頻度が高い筋肉です。
そのため、速筋線維(白筋)よりも遅筋線維(赤筋)の割合のほうが多いといった特徴を持っています。
運動貢献度(順位)
貢献度 |
体幹伸展 |
体幹回旋 |
体幹側屈 |
1位 | 脊柱起立筋 | 内腹斜筋(反対側) | 外腹斜筋 |
2位 | 腰方形筋 | 外腹斜筋(同側) | 内腹斜筋 |
3位 | 半棘筋 | 脊柱起立筋 | 腰方形筋 |
4位 | 多裂筋 | 回旋筋 | 脊柱起立筋 |
アナトミートレイン
脊柱起立筋はアナトミー・トレインにおけるSBLに属する筋肉で、足底筋膜やアキレス腱、帽状腱膜との繋がりを持っています。
そのため、アキレス腱損傷などの怪我で筋膜に歪みが生じると、損傷部が治癒してからも筋膜を牽引して関連痛を起こす可能性があります。
脊柱起立筋の深層には多裂筋が存在しており、主に表層筋は関節運動を、深層筋は関節の安定性を担っています。
多裂筋は機能不全を起こしやすい筋肉であり、もしも役割を果たせていない場合は、表層の脊柱起立筋が代償的に働くことになります。
その状態が持続すると徐々に脊柱起立筋は硬くなっていき、筋膜性腰痛やSBLに沿った関連痛を引き起こします。