脛骨高原骨折のリハビリ治療について、わかりやすく解説していきます。
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脛骨高原骨折の概要
膝関節を形成する脛骨上部は、中央部が盛り上がった凸状、外側部が平面状、内側部は凹状を成しています。
脛骨高原骨折は脛骨プラトー骨折とも呼ばれており、荷重を支えるための上部の平面(高原)に起こる問題を意味しています。
正常の膝関節は軽度外反位(FTA:約176度)にあり、骨密度は外側の方が低く、とくに前方2/3が脆弱部位となっています。
そのため、膝関節に外反強制が加わると外側関節面に骨折や陥没が生じやすい構造となっています。
手術療法の適応基準
手術の絶対的適応は楔状骨折に転位がある場合や、関節面の陥没が5㎜以上のものが対象となります。
関節面の陥没が2〜5㎜の範囲のもので、若年から壮年者までの方は手術の相対的適応となり、状態に応じて決定します。
これらに該当せずに保存療法で治癒が可能であると予測される場合は、ギプス固定にて対応となります。
1.関節切開法(book-open法)
関節内骨片を軟骨下骨下の海綿骨と一塊にして挙上整復し、骨欠損部に自家骨または人工骨を充填し、スクリューやプレートで固定する方法です。
2.鏡視下法(開窓法)
外顆下方の骨皮質を開窓し、鏡視とX線透視を併用しながら陥没欠損部に自家骨または人工骨を充填してスクリューにて固定する方法です。
治療成績判定基準
術後の治療成績は、以下の判定基準を用いて判断していきます。
判定 | 基準 |
優 | 5度以内の正常外反度 |
転位が5㎜以下に整復 | |
関節症変化なし | |
良 | 5度を超える外反変形 |
最小限の関節症変化 | |
10度を超える外反変形 | |
可 | 中等度の関節症変化 |
骨折が整復されていない | |
不可 | 中等度または重度の関節症変化 |
骨折が整復されていない | |
10度を超える外反変形 |
術後リハビリテーションの流れ
1.術後(術後から約6週間)
方法 | 内容 |
装具療法 | 外固定はなし |
運動療法 | 患部外トレーニング、神経筋協調運動 |
ROM運動 | 膝関節屈曲90度(術後2週)、膝蓋骨モビライゼーション |
歩行訓練 | 両松葉杖歩行(荷重免荷) |
2.術後(術後6-12週間)
方法 | 内容 |
運動療法 | 膝周囲筋の強化(等張性収縮) |
ROM運動 | 膝関節屈曲90度、伸展0度 |
歩行訓練 | 1/6荷重(6週)、1/2(8週)、全荷重(10週) |
3.術後(術後12週以降)
方法 | 内容 |
運動療法 | 階段昇降、エアロバイク |
ROM運動 | 全可動域の獲得 |
歩行訓練 | ランニング許可(12〜16週以降) |
患部外トレーニング
骨折部の癒合には接合や固定が不可欠ですが、これらは癒合に必要な血流を阻害してしまう方向に働いてしまいます。
その対策として、患部の動きに影響を与えない周囲の筋肉をトレーニングすることにより、患部への血行を促進するように働きかけていきます。
脛骨高原骨折は手術によって強く固定されていますので、骨離開に関してはあまり心配ないため、周囲筋の積極的なトレーニングが推奨されます。
具体的には、足趾・足関節の底背屈運動、膝蓋骨セッティングなどを中心に実施していきます。
神経筋協調運動
荷重の免荷期間が長い骨折では、足底からの感覚入力が乏しくなるため、荷重期になって歩行状態の不安定性などを招く原因になります。
そのため、術後早期より感覚入力トレーニングやタオルギャザーといった神経筋協調運動の実施が推奨されています。
歩行のように骨折部に離開が生じるような負荷はないため、医師の指示のもと、努力性の少ない範囲で行っていきます。
歩行補助具を使用した免荷歩行
骨折部の仮骨が形成されてきてからは、骨化を促進するために骨折部位への適度な圧迫刺激が必要となります。
骨折の程度にもよりますが、通常は術後6週より1/6荷重から開始するようにし、まずは平行棒内で体重計を用いながら荷重感覚を養います。
以下に、代表的な歩行補助具と免荷の割合について記載します。(歩行器はつま先のみを接地した場合)
方法 | 免荷(荷重) |
歩行器 | 80%(1/5) |
松葉杖 | 67%(1/3) |
ロフストランド杖 | 33%(2/3) |
Q杖(四点杖) | 30%(2/3) |
T杖(一本杖) | 25%(3/4) |
パターンとしては、①両松葉杖(完全免荷)➡②歩行器or片松葉杖➡③T杖という順序で進めていくことが多いです。
杖を使用する場合は、まずは3動作歩行を習得してから2動作歩行に移行するようにして、徐々に負荷を上げていくようにします。
後方重心の修正
膝関節外側に負担の加わりやすいヒトの特徴として、足関節の背屈制限や足部内反があり、足底後方に荷重が乗りやすい傾向にあります。
単純に足部が内反すると膝関節も内反しそうですが、実際は歩行時(立脚後期)に内反すると脛骨は内旋して下肢は内方に傾斜します。
そうすると膝関節外側の圧が高まることになり、ストレスが繰り返されることで脛骨外側の骨挫傷や外側半月板損傷を引き起こします。
このような積み重ねが骨の陥没を招くことになるので、後方重心を修正していくことが再発予防や陥没の進行防止につながります。