腓腹筋外側頭の筋膜リリースで膝関節の外側動揺が軽減した理由

メールで質問がきましたので、その内容と回答について記事にしてみます。

間違ってる部分や足りない部分もあるかと思いますので、ご意見をいただけると非常に有り難いです。メールの内容は以下になります。(一部改編して掲載)

”上腕三頭筋の筋膜リリースにより、肩甲挙筋や斜角筋、僧帽筋上部線維の筋緊張軽減を認めました。その理由について教えていただけないでしょうか。

実際にこの文面から推察した内容を記載していきます。

上腕三頭筋はディープ・バック・アームライン(DBAL)という筋膜経線の流れにあるので、リリースすることでその経路上にある肩甲挙筋が緩んだと考えられます。

アナトミートレイン|DBAL|ディープ・バックアーム・ライン

肩甲挙筋が緩むと肩甲骨挙上位が是正されるので、僧帽筋上部線維は短縮位から正常の位置に戻ります。そうなると触診的には緩んだように感じとれるかもしれません。

これは斜角筋も同様で、肩甲骨と肋骨は肩甲胸郭関節を構成していますが、この関節は筋肉のみで連結している関節です。

そのため、肩甲骨周囲筋(とくに僧帽筋)が緊張しているとすぐ前方を通過する斜角筋も緊張が感じとられやすくなります。

このあたりは実際に肩甲骨を挙上させてみるとわかりますが、斜角筋は肩甲骨挙上運動に関与しないにも関わらず、緊張が感じ取れると思います。

なので、僧帽筋と斜角筋に関しては肩甲骨の位置が是正されたことで緊張の減少が感じ取れたのではないかと推察されます。

もう一つの質問は以下になります。(一部改編して掲載)

”腓腹筋外側頭の筋膜リリースにて、膝関節の外側への動揺が軽減しました。その理由について教えてください

おそらくこちらは歩行時に起こる急激な外側への動揺であるラテラルスラスト(lateral thrust)についての質問だと思われます。

変形性膝関節症|歩行姿勢|ラテラルスラスト歩行

ラテラルスラストが発生する機序として、立脚期に加わる膝内反へのストレスを制御できず、膝関節が外側に動揺することで骨によって食い止めている状態になります。

問題点となりやすい主な部分として、①膝関節のロックが不十分、②膝関節外反に影響する筋肉の出力が不十分といったことが挙げられます。

腓腹筋は二関節筋であり、膝関節屈曲の作用を持っています。そのため、腓腹筋の過緊張は膝関節のロックを妨げる原因となります。

また、筋膜経線上で膝関節屈曲の主力筋であるハムストリングと連結しているため、筋膜リリースによってハムストリングの緊張を緩める効果もあったと推察できます。

アナトミートレイン|SBL|スーパーフィシャル・バック・ライン

今回は腓腹筋の外側頭を緩めることで動揺が軽減したと述べていますが、外側頭には下腿を内旋させる方向に働く作用があります。

ラテラルスラストの発生には、膝関節外反に影響する筋肉の出力が不十分であることが関与していることは前述しました。

外反に影響する筋肉とは、股関節内旋筋(股関節内転筋群、大腿筋膜張筋、中殿筋の前方筋束)と下腿外旋筋(内側広筋、大腿二頭筋)になります。

もしも腓腹筋外側頭の緊張が強まっている場合は、下腿は内旋方向に誘導されるため、下腿外旋筋の筋力が発揮しにくい状態となります。

そのため、今回のケースでは腓腹筋外側頭をリリースすることで内旋位が是正され、下腿外旋筋の出力が回復してラテラルスラストが軽減したのだと推察できます。

返信内容は以上で、文面から考え得る過程を考えてみました。

つじつまが合うように考察していきましたが、もちろんこれだけではない部分も多くあると思います。

質問者の方は骨盤の後傾が改善した影響についてまで言及していましたし、連鎖的に考えていくともちろんそれも影響していると考えられます。

これからも時間があるときはなるべく質問に対して一緒に考えていこうと思いますので、気になることがある方は気軽にご連絡をお待ちしております。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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