腰椎が平坦化(生理的前弯が減少)しているケースでは、脊柱起立筋の深層にある腰多裂筋の収縮が乏しくなっています。
多裂筋は脊椎全体にわたって長く付着しているようにみえますが、実際は細かい筋肉がいくつも連なって構成されています。
そのため、ひとつひとつの脊椎を伸展させることが可能であり、腰椎の生理的前弯を作ることに貢献します。
腰多裂筋の収縮が乏しい場合は、代償的に浅層にある脊柱起立筋が働くことになります。
ほとんどの筋肉に共通する事項として、深層の筋肉は遅筋線維が豊富で日常的に使用され、浅層の筋肉は速筋線維が豊富で緊急時に使用されます。
わかりやすい例で書くと、下腿三頭筋の中でもヒラメ筋は歩行時に使用され、腓腹筋は走行時に使用されやすいです。
それが普段から浅層の速筋線維が豊富な筋肉を使用してしまうと、すぐに疲労してしまい、筋肉が硬くなってしまうことにつながります。
前述したように腰椎が平坦化している場合は、腰多裂筋がうまく働くことができず、脊柱起立筋を使用する頻度が多くなります。
先日に担当した患者では、農作業をすると腰が痛くなるとのことで、触診してみると腰腸肋筋や胸最長筋に攣縮が認められました。
腰腸肋筋や胸最長筋は脊柱起立筋の中のひとつであり、腰痛患者では必ずチェックしておくべき筋肉です。
おそらくは農作業の中腰などで脊柱起立筋が上半身を支えるように働いており、それが結果的に攣縮を引き起こしていると推察されました。
そのため、治療では脊柱起立筋のリリース、腰椎伸展のモビリティ向上、腰多裂筋の収縮促通を中心にアプローチしていきました。
農作業を繰り返すとまた痛くなることが予測できるので、脊柱起立筋が疲労しないような動き方についても指導することが大切です。
脊柱起立筋のアプローチポイントとしては、第11肋骨付近から脊柱起立筋の外縁を両母指で押すようにしながら実施してみてください。