この記事では、腹直筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
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腹直筋の概要
腹直筋は腹部前面に位置しており、語名はrectus(真っ直ぐな)とabdominis(腹)から構成されます。
筋腹は4〜5段に分かれており、その境目となる横線を「腱画」、左右の境目となる縦線を「白線」といいます。
胸郭を引き下げて体幹を屈曲させる主力筋ですが、胸郭をが固定されているときは骨盤を後傾させます。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | 肋間神経(胸腹神経) |
髄節 | Th5-12 |
起始 | 恥骨結合、恥骨稜、恥骨結節の下部 |
停止 | 第5-7肋軟骨の外面、剣状突起、肋剣靱帯 |
栄養血管 | 下腹壁動脈 |
動作 | 体幹の屈曲
胸郭前壁の引き下げ、腹腔内圧の拡大 |
筋体積 | 170㎤ |
筋線維長 | 29.9㎝ |
速筋:遅筋(%) | 53.9:46.1 |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
体幹屈曲 |
1位 | 腹直筋 |
2位 | 外腹斜筋 |
3位 | 内腹斜筋 |
腹直筋の触診方法
写真では、回旋を伴わない体幹の屈曲運動にて、腹直筋を触診しています。
外腹斜筋や内腹斜筋も両側同時に収縮することで体幹屈曲に作用するため、その境目を探るようにして触診していきます。
トリガーポイントと関連痛領域
腹直筋にトリガーポイントが出現している場合は、体幹伸展時に腹部から背部にかけて電撃要痛み(関連痛)は肩甲骨から上肢尺側にかけて放散します。
腹直筋に短縮が存在すると胸椎の後弯(円背)を生じやすくなるため、姿勢指導をする場合は事前に緩めておくことが必要です。
腹直筋はSFL(スーパーフィシャル・フロント・ライン)の筋膜経線につながる筋肉であり、身体前面浅層において重要な筋肉になります。
腹直筋の弱化は筋膜による力を伝達する働きを低下させ、前脛骨筋や胸鎖乳突筋といった身体前面の筋肉にも影響を及ぼすことになります。
腹直筋と外腹斜筋
※腹部の断面図 |
普段から身体を鍛えている人では、脂肪が少なく、腹直筋が発達しているために腹筋が割れているようにみえます。
そのため、腹直筋は表層に位置しているようにみえますが、実際は表層の多くを外腹斜筋に覆われています。
図を見ていただくとわかりやすいですが、外腹斜筋は最外層に位置し、内腹斜筋は腹直筋を覆っている腹直筋鞘の外側に停止します。
腹横筋に関しては腹直筋の深部を走行しています。
ストレッチ方法
うつ伏せで腰を床につけたまま、床に両手をついて上体を起こしていきます。
腹部の筋肉が伸ばされているのを感じながら実施してください。
筋力トレーニング
仰向けにて片脚を股関節を90度屈曲し、もう片方の下肢をゆっくりと伸展挙上していきます。腹直筋下部を中心に鍛えられます。
仰向けにて両脚を伸展した状態から、ゆっくりと挙上していきます。腹直筋下部を中心に鍛えられます。
仰臥位にて下肢を屈曲位に保持し、ゆっくりと上体を起こして手が膝に触れるようにします。腹直筋上部を中心に鍛えられます。
仰臥位にて下肢を屈曲位で挙上し、上体をゆっくりと起こしていきます。手が踵に触れるまで起きたら、またゆっくりと上体を倒していきます。
仰臥位にて下肢を椅子に挙上し、上体をゆっくりと起こしていきます。
手を頭の後ろに組むことで負荷量を上げることができます。
仰臥位にて下肢は軽度屈曲位に保持し、少し上体を起こして止め、次は最大限に起こして止め、手を天井に向けて挙上していきます。
腹直筋のトレーニングポイント
腹筋群を鍛えるトレーニングで起き上がり運動を実施する場合は多いですが、屈曲中期では腹直筋が、後期では大腰筋が活躍します。
また、膝関節を伸展すると腸腰筋が、足部を固定すると大腿直筋が活躍します。
腹直筋を選択的に鍛えるためには、膝屈曲位で固定はせず、起き上がりの初期にて負荷を与える方法が有効です。
関連する疾患
- 脊髄損傷
- 頚髄症性不全四肢麻痺
- 慢性腰痛 etc.
慢性腰痛
腹直筋や腹斜筋の弱化は腰椎の前彎を増強することになるため、しばしば慢性腰痛の原因となります。
腰椎の過前彎の原因は、脊柱起立筋や腸腰筋の過緊張なども大きく関与しているため、問題を起こしている筋肉を調整することが求められます。