先日に、国内でもトップクラスの技術を持つ理学療法士の園部先生の講義を受けてきました。
内容は膝関節の治療についてでしたが、その中で、ほとんどの膝の痛みに膝蓋下脂肪体と滑膜が関与しているとおっしゃられていました。
これは他のトップランナーたちも同じ回答をしており、変形性膝関節症の治療において、とくに注目すべき組織であることがわかります。
膝蓋下脂肪体とは、名前の通りに膝蓋骨の下方に位置する脂肪体であり、膝関節を守るために存在しています。
膝蓋下脂肪体は、膝関節の内側に貯留しやすい傾向があり、変形性膝関節症の人では膝内側が膨隆している場合も多いです。
膝蓋腱の内側や外側を押してみて、圧痛が認められるようなら膝蓋下脂肪体が原因の痛みである可能性が高くなります。
膝蓋下脂肪体は、膝関節を伸ばしているときは下方に膨隆し、曲げているときには膝蓋骨の裏に流れ込んでいきます。
そのため、膝蓋下脂肪体が痛みの原因である場合には、膝関節伸展時には圧痛があり、屈曲時には圧痛が消失する傾向にあります。
私が実際に圧痛を確かめる際には、膝蓋骨を下方に押し下げた状態に保持し、膝の裏に存在する脂肪体まで圧痛の有無を確認します。
痛みがあるようなら、普段に感じる痛みと似ているかを尋ねてみて、さらに左右差を確かめてから原因の可能性を推察していきます。
治療においては、膝蓋骨を下方に押し下げた状態から痛みのある脂肪部分をマッサージするように揉みほぐします。
このときに膝蓋骨の裏に流し込むように誘導することで、膝関節を曲げ伸ばしする際の摩擦力を軽減する効果が期待できます。
この方法は在宅メニューとしても指導することができるため、その場で患者に教えながら実践しても良いです。
次に滑膜ですが、滑膜は関節包の内膜であり、外膜の線維膜と合わせて関節包と呼ばれています。
滑膜の主な役割は関節液(潤滑液)の分泌であり、この液があることで関節はスムーズな動きを行えるようになっています。
しかしながら、変形性膝関節症では関節軟骨が磨り減ってしまい、軟骨の破片が関節内に浮遊します。
その破片が関節を包んでいる滑膜を刺激することにより、滑膜に炎症が起こり、関節液を多量に生産することになります。
これはいわゆる関節に水が溜まった状態であり、炎症の影響や関節内圧の上昇、破片の刺激によって膝に痛みが生じます。
滑膜が原因による痛みは炎症所見を伴いやすいので、先ほどの膝蓋下脂肪体が原因の場合と鑑別するうえでも役立ちます。
ここで紹介した組織以外にも、内側側副靱帯や半月板、鵞足、腸脛靭帯などが膝痛を起こしやすい原因として挙げられます。
変形性膝関節症と単純に一括りにせず、まずはどの組織が痛みの主因であるかを探るようにし、そこにアプローチしていくことがなによりも大切です。
最初に紹介した理学療法士のトップランナーである園部先生の著書はマジでお薦めなので、是非ともチェックしてみてください。