膝関節後方に起こる痛みの原因とリハビリテーションによる治療方法について解説していきます。
①筋膜性疼痛:SBL
膝関節後方の痛みで多いのは、SBL(スーパーフィシャル・バック・ライン)の筋膜性疼痛です。
この筋膜上に問題を起こしている場合は、ハムストリングス(とくに大腿二頭筋)に圧痛が認められます。
治療方法としては、圧痛点に硬さと筋膜の滑りにくさが確認できるため、徒手圧迫を加えながら前後左右と斜めに動かしていきます。
マニピュレーションを実施して3〜4分ほど経つと筋膜の硬さがとれて滑りがよくなり、圧痛が半減することを確認できます。
そこで徒手圧迫を解除し、2日ほど筋肉痛(炎症)が起きることを伝えて治療は終了とします。
②膝関節後方インピンジメント
膝関節深屈曲時に後方関節包や外側半月板がインピンジメントを起こし、痛みが生じている状態の多くに膝窩筋が関与しています。
ただし、膝窩筋が後方関節包に付着するのは57%、膝窩筋が外側半月板に付着しているのは55%に過ぎません。
外側半月板に関しては、密に結合しているのはわずか17.5%であり、必ずしも膝窩筋が膝関節のインピンジメントに関与しているかは不明です。
膝窩筋以外の筋肉としては、後方関節包には大腿二頭筋短頭が、外側半月板には半膜様筋が付着しています。
そのため、膝関節のインピンジメントが認められる場合は、膝窩筋とハムストリングスにアプローチすることが重要です。
膝窩筋を効率よく筋収縮させるためには、膝関節屈曲112度以上での下腿内旋運動が有効とされています。
理由として、平均112度の膝関節屈曲で膝窩筋腱は膝窩筋腱溝内にはまり込んで遊びがなくなり、膝窩筋の緊張が高まるからです。
ハムストリングスの機能不全が関与している場合は、前述した筋膜性障害が影響している可能性を考慮して対応します。
③膝窩筋の緊張
膝窩筋には膝関節の屈曲または伸展作用があるといわれていますが、これらの作用はあまり意味をなすものではありません。
膝窩筋の主な作用は、下腿の内旋作用と脛骨と大腿骨を接触させるように軸圧を与えることで、下腿の外旋不安定性を制動しています。
そのため、knee in toe out といった不良姿勢を有する患者で緊張が高くなりやすく、安静時も筋内圧が減圧せずに自発痛を有することもあります。
knee in toe out が原因にあるため、テーピングによって下腿の外旋制動を行うことにより、歩行時痛を軽減することができます。
④膝窩嚢胞(ベーカー嚢胞)
膝の裏に関節液が貯留し、ゴルフボール大の弾力性のある膨らみを帯びた状態を膝窩嚢胞と呼びます。
原因としては、滑液包炎にて膝に大量の関節液が溜まり、変形性膝関節症の影響で関節液が後方に押し出されることで起こります。
膝の裏が膨隆することで深く曲げた時に引っかかり、関節可動域制限や違和感をきたすことになりますが、あまり痛みは出ないことが特徴です。
重度の場合は後方に位置する神経や血管を圧迫することがありますので、その際は穿刺吸引や手術療法で治療を行います。