腰が悪いと膝が悪くなるとはよく言いますが、そこには膝関節の荷重ポジションが大きく関わっています。
例えば、膝関節の前方に上半身の体重が常に乗っている人では、前方組織への過負荷によって痛みが起こります。
そのため、腰椎を伸展させて膝関節の荷重を後方に移動させることで、前方組織が除圧されて痛みが軽減します。
反対に、膝関節の後方に上半身の体重が常に乗っている人では、後方組織への過負荷によって痛みが起こります。
そのため、腰椎を屈曲させて膝関節の荷重を前方に移動させることで、後方組織が除圧されて痛みが軽減します。
上記の理由から腰椎の過前彎や後彎(前彎の減少)は膝に影響を与えるため、腰が悪いと膝が悪くなることにつながりやすくなります。
この場合は膝に問題が現れるのですが、上半身のポジションを整えることのほうが治療には重要であるため、腰椎を中心にアプローチしていきます。
具体的な方法として、膝関節の前方に荷重が集中している場合は、立位で壁に手をついた状態から腰を反らす運動を反復していきます。
腰椎の前彎が作られることで上半身の重みが後方に移動するので、膝の前方組織の除圧を図ることができます。
膝関節の後方に荷重が集中している場合は、壁から30センチほど離れた位置に立ち、壁によりかかった状態からおじぎ動作を反復します。
そうすると腰椎の屈曲運動を促すことができ、腰椎の過前彎が修正されて上半身の重みが前方に移動することで膝の後方組織の除圧を図れます。
実際には前方と後方の他以外にも、内側や外側といった側方への荷重が原因となっている場合もあるので、それらのチェックも同時に行います。
方法としてはお尻を左右に動かしてもらい、上半身の重みを膝関節の内側と外側にかけて痛みの変化を聴取していきます。
痛みが改善する方向への運動は、そのまま治療体操の方向にもなるので、時間があるときには頻回に行うことが理想となります。
問題がある部位が前外方といったように前方型と側方型が複合している場合も多いので、その場合は両方向にアプローチすることが必要です。
このように過負荷による痛みの発生は非常に多く、実際の現場でも類似した症状に出会っていることは多いと思います。
例えば、右膝の痛み(変形性膝関節症)でリハビリを実施している途中で、左膝まで痛みが出てくる患者をよく見かけます。
これは痛みのために右膝関節に十分な荷重ができず、つねに左膝関節に荷重をかけて過負荷となったために起こっています。
そのため、健側の膝の状態は常に確認しておき、違和感が出てきている場合は活動量を制限するように説明します。
上半身の位置が膝関節に悪影響を与えている場合、どれだけ膝だけにアプローチを続けてもあまり改善は望めません。
まずは荷重ポジションを確認して、圧を移動させることで痛みにどう変化を与えるかをみていくようにお願いします。