ベッドで仰向けをとった際に膝裏が床面につかず、膝関節が少し曲がった状態で伸展制限をきたしている変形性膝関節症の患者は多いと思います。
伸展制限の原因となっている可能性のひとつが膝関節の後方関節包の短縮であり、徒手的にアプローチすることで可動域の改善が望めます。
後方関節包の短縮をきたしている患者には特徴があり、日常生活では畳のうえで膝を曲げている時間が多い傾向にあります。
畳では椅子に腰掛けるよりも膝を深く曲げている姿勢となりやすく、後方関節包が短縮位をとりやすくなります。
その状態が続くと次第に膝は伸びにくくなっていき、さらに伸展制限が進行するといった悪循環に陥ります。
とくにこれまでに膝を痛めた経験(炎症の既往)がある患者では、関節包が炎症によって硬くなり、短縮をきたしている場合が多いです。
治療法としては、膝関節を伸展させて後方関節包を伸ばしていき、最終域で膝蓋骨(大腿骨)を押し込むように圧を加えると効果的です。
椅子に腰掛けた状態で膝を伸ばし、自分の両手を膝の皿の上にかざして置き、下方に押すようにすることでセルフエクササイズも可能です。
この運動を実施する際に膝関節前面の痛みを訴えることがよくありますが、その場合は膝蓋下脂肪体の挟み込みが原因として挙げられます。
そのため、事前に膝蓋骨のモビライゼーションや膝蓋下脂肪体のマッサージを実施し、動きを改善させておくことで痛みを防ぐことができます。
次に膝関節の前方関節包が短縮している場合ですが、このケースは立ち仕事などで日常的に立位をとる時間が長い人に多く起こります。
そのため、高齢者よりも比較的に若い人たちに多く、働いている人にはその仕事内容についても詳しく聞いておくことが大切です。
治療法としては、膝関節を屈曲させて前方関節包を伸ばしていき、最終域で膝関節を引き離すように牽引操作を加えると効果的です。
椅子に片足を乗せた状態から膝を深く曲げていくようにすることで、セルフエクササイズとしても運動が可能です。
膝関節屈曲時に前面が突っ張るような感覚なら問題ありませんが、別の部位が痛むようなら無理をせず、他を治療してから実施するようにしてください。
前方関節包の短縮と後方関節包の短縮が混合していることも多く、その場合は両者にアプローチしていくことが必要となります。
患者によって膝の痛みの原因は様々なので、まずはしっかりと問診や評価を行い、病態を整理してから治療するようにしてください。