要介護・要支援被保険者は外来リハビリができなくなるの?

要介護・要支援被保険者に対する維持期・生活期リハビリテ―ションは、平成31年の4月からは算定が不可能となりそうです。

この内容は中央社会保険医療協議会総会の第386回の資料(p248)に記載されており、ほぼ確定の改定内容になるかと思います。

まずは維持期リハビリとは何ぞやって話ですが、疾患別リハビリテーションには治療期間の目安として標準的算定日数が設けられています。

脳血管疾患等 180
運動器 150

上記以外にも心大血管疾患や呼吸器疾患などにリハビリを行いますが、それらは維持期リハビリには該当しません。

脳血管疾患等や運動器に限っては標準算定日数を超えた場合に維持期と呼ばれ、従来は維持期でも月に13単位を上限として算定可能でした。

それが要介護・要支援被保険者(簡単に書くと介護認定を受けている人)に限っては算定ができなくなります。

前回の改定では要介護・要支援被保険者に対する維持期リハビリは著しい減算となったため、今ではほとんどの病院が標準算定日数を越えたら打ち切っているのではないでしょうか。

政府の方針としては、病院などで延々と疾患別リハビリを受け続けるのではなく、介護保険を利用した通所リハや訪問リハに移行してほしいわけです。

移行することで国にどのようなメリットがあるのかを理解するためには、保険料をどこが負担しているのかを知る必要があります。

以下は医療保険と介護保険の負担構造になります。(医療保険は平均をざっくりと記載)

医療保険 介護保険
都道府県

15%

12.5%

市町村

12.5%

30%

25%

事業主

25%

50%

被保険者

30%

表を見ていただくとわかりやすいですが、医療費が増え続けるほうが国にとっては負担が大きいわけです。

そのため、なるべく介護保険で補えるものはそちらに移行していき、地方(都道府県や市町村)に負担してもらいたいのです。

負担が増えた地方は財政が圧迫されるので、どうしたら介護保険料が少しでも減るのかを真剣に考え始めます。

埼玉県和光市では4割以上が介護保険の卒業を達成し、その多くを無料の介護予防事業に移行することができました。

なぜそんなことが可能になったかというと、元気になって介護度が下がるほうが利用者も和光市もメリットがある構造を確立したからです。

利用者は介護保険を卒業した後もほぼ同じ内容のサービスを無料で受けられるため、元気になることのほうが絶対に得になる流れを作りました。

私はこれまでに介護度が下がることを嫌がる利用者をたくさん見てきましたので、そのあたりの認識を変えていかないことにはどうしようもないと肌で感じていました。

それをコツコツと積み重ねてきたことが和光市の最大の功績であり、これから全国的に拡げていくべきことだと思います。

話が大きく脱線しましたが、これからは介護保険に移行できるものは移行していくでしょうし、医療保険も介護保険も自己負担の割合は増えていくはずです。

そのことを理解すると、自費でも受けたいと思えるリハビリを提供することこそが、我々が今後も生き残り続けることができる手段かもしれません。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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