ここでは、平成27年度の介護報酬の変更点を、誰にでもわかりやすく説明していきたいと思います。従来の二重診療問題についても言及しております。
この記事の目次はコチラ
事業所ごとにどう変化したか
今回の改訂では、訪問系や24時間対応型のサービスが増額した一方で、特養や通所系のサービスが減額となりました。以下に具体的な増減額を記載します。
事業所 | 増減幅 |
訪問介護 | +4.8% |
訪問看護 | +2.3% |
通所介護/デイサービス | -1.6% |
特別養護老人ホーム | -2.4% |
老人保健施設 | -0.2% |
24時間の定期巡回・随時対応 | +4.5% |
看護小規模多機能型の在宅介護 | +3.8% |
基本サービス費の減額
従来 | 改訂 | 比較 | |
要支援 | 307 | 302 | -5 |
要介護 | 307 | 302 | -5 |
訪問リハビリテーションは、1回(20分)あたりの基本サービス費が307単位/回だったのが302単位/回に減額となりました。これは要介護、要支援ともに同額となっております。算定要件に関しては従来と変化ありません。
リハビリテーションマネジメントの強化
従来の「訪問リハ訪問介護連携加算(300単位/3月に1回)」が廃止され、リハビリテーションマネジメント加算(Ⅰ)(60単位/月)とリハビリテーションマネジメント加算(Ⅱ)(150単位/月)に変更となりました。
リハマネ加算(Ⅰ)の算定要件
平成21年度に包括化されたリハビリテーションマネジメント加算と同様。(リハマネ加算の詳細はコチラ)
リハマネ加算(Ⅱ)の算定要件
- リハビリテーション会議を開催し、目標やリハビリテーションの内容を、訪問リハビリテーション事業所の職員の他、介護支援専門員、居宅サービス計画に位置づけた指定居宅サービス等の担当者、その他関係者と共有すること
- 訪問リハビリテーション計画は、医師が利用者又はその家族に対して説明し、同意を得ること
- 3月に1回以上、リハビリテーション会議を開催し、訪問リハビリテーション計画を見直すこと
- 理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が、介護支援専門員に対し、利用者の有する能力、自立のために必要な支援方法及び日常生活上の留意点に関する情報提供をする
- 理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が、家族若しくは指定訪問介護等の指定居宅サービスの従業者に対し、利用者の居宅で、介護の工夫及び日常生活上の留意点に関する助言を行うこと
- 1から5のプロセスについて記録すること
以上の6つが算定要件となります。訪問リハはデイケアよりもリハマネ(Ⅱ)が算定がしやすいと思われますので、積極的に取りにいく方向で進めるべきだと思います。
今後は、リハビリテーション関係書式の説明者は全て医師に統一されていく傾向にありますので、必ず3月に1度は受診が必要であることを事前に説明しておくことが大切だと思います。
社会参加支援加算(新設)
これは、利用者が訪問リハを積極的に卒業できている施設には報酬を上げましょうといった内容です。通所介護などへの移行でも評価されます。加算単位は「17単位/日」になります。
社会参加支援加算の算定要件
- 評価対象期間において指定訪問リハビリテーションの提供を終了した者のうち、指定通所介護、指定通所リハビリテーション、指定認知症対応型通所介護、通所事業その他社会参加に資する取組を実施した者の占める割合が、100分の5を超えていること
- 評価対象期間中に指定訪問リハビリテーションの提供を終了した日から起算 して14日以降44日以内に、指定訪問リハビリテーション事業所の従業者が、リハビリテーションの提供を終了した者に対して、その居宅を訪問すること又は介護支援専門員から居宅サービス計画に関する情報提供を受けることにより、指定通所介護、指定通所リハビリテーション、指定認知症対応型通所介護、通所事業その他社会参加に資する取組の実施状況が、居宅訪問等をした日から起算して、3 月以上継続する見込みであることを確認し、記録していること
- 12 月を指定訪問リハビリテーション事業所の利用者の平均利用月数で除して得 た数が100分の25以上であること
短期集中リハビリテーション実施加算
従来は退院(所)日又は認定日から起算して1月以内は340単位/日、1月超3月以内は200単位/日でしたが、今回の改訂で3月以内は200単位/日と統一化されました。
こちらはかなりの減算であり、月9回の利用と仮定したら、月額で13,000円前後の減収になりそうです。この分を補うためにも、リハマネ加算(Ⅱ)と社会参加支援加算は必ず取れるようにしておきたいところです。
短期集中リハビリテーション実施加算の算定要件は、1週につき概ね2日以上、1日あたり20分以上の個別リハビリテーションを提供することです。
同一事業所内の通所リハと訪問リハの共通化
同一事業所内で通所リハと訪問リハを利用している場合、リハビリテーション会議の開催等を通じて、共通の目標及びリハビリ提供内容について整合性のとれた計画を作成したなら、計画書を統一できることになりました。
また、計画書を統一した場合は診療記録も統一できるものとなります。算定の基準については以前と変更ありません。
①訪問リハビリテーションは、計画的な医学的管理を行っている医師の指示の下、実施すること。訪問リハビリテーションは、計画的な医学的管理を行っている医師の診療の日から3月以内に行われた場合に算定する。また、別の医療機関の計画的な医学的管理を行っている医師から情報提供(リハビリテーションの指示等)を受けて、訪問リハビリテーションを実施した場合には、情報提供を行った医療機関の医師による当該情報提供の基礎となる診療の日から三月以内に行われた場合に算定する。この場合、少なくとも3月に1回は、訪問リハビリテーション事業所は当該情報提供を行った医師に対して訪問リハビリテーション計画について医師による情報提供を行う。 |
②訪問リハビリテーションは、利用者又はその家族等利用者の看護に当たる者に対して1回当たり20分以上指導を行った場合に、1週に6回を限度として算定する。 |
③事業所が介護老人保健施設である場合にあって、医師の指示を受けた理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が、利用者の居宅を訪問して訪問リハビリテーションを行った場合には、訪問する理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士の当該訪問の時間は、介護老人保健施設の人員基準の算定に含めないこととする。なお、介護老人保健施設による訪問リハビリテーションの実施にあたっては、介護老人保健施設において、施設サービスに支障のないよう留意する。 |
④居宅からの一連のサービス行為として、買い物やバス等の公共交通機関への乗降などの行為に関する訪問リハビリテーションを提供するに当たっては、訪問リハビリテーション計画にその目的、頻度等を記録するものとする。 |
二重診療の問題について
従来の訪問リハでは、主治医と訪問リハを提供する事業所の医師が異なる場合は、3月に1度は二人の医師からの診療が必要でした。しかし、今回の改定で処方箋は「主治医」が出すことが決定し、その処方箋で事業所のスタッフはリハビリを提供できるようになりました。
a.算定の基準について(従来の原文)
訪問リハビリテーションは、指示を行う医師の診察の日から3月以内に行われた場合に算定する。また、別の医療機関の医師から情報提供を受けて、訪問リハビリテーションを実施した場合には、情報提供を行った医療機関の医師による当該情報提供の基礎となる診療の日から3月以内に行われた場合に算定する。
この場合、少なくとも3月に1回は、リハビリテーションの指示を行った医師は当該情報提供を行った医師に対してリハビリテーションによる利用者の状況の変化等について情報提供を行う。なお、指示を行う医師の診療の頻度については利用者の状態に応じ、医師がその必要性を適切に判断する。
b.算定の基準について(改定後の原文)
訪問リハビリテーションは、計画的な医学的管理を行っている医師の指示の下、実施すること。訪問リハビリテーションは、計画的な医学的管理を行っている医師の診療の日から3月以内に行われた場合に算定する。
また、別の医療機関の計画的な医学的管理を行っている医師から情報提供(リハビリテーションの指示等)を受けて、訪問リハビリテーションを実施した場合には、情報提供を行った医療機関の医師による当該情報提供の基礎となる診療の日から三月以内に行われた場合に算定する。
この場合、少なくとも3月に1回は、訪問リハビリテーション事業所は当該情報提供を行った医師に対して訪問リハビリテーション計画について医師による情報提供を行う。
医師による情報提供をどう解釈するか
最後の部分の、「該情報提供を行った医師に対して訪問リハビリテーション計画について医師による情報提供を行う」についてですが、ここでは「診療」という語句が外されています。
その理由として考えうるのは、従来から問題視されていた二重診療を防ぐためです。リハ処方箋は主治医が出すことで統一し、訪問リハ計画書は事業所の医師が主導となって作成するものですので、その計画書をもって主治医への情報提供とするようです。
今回、リハマネ加算(Ⅱ)を算定する要件に「3月に1回のリハビリ会議」と「医師からの説明と同意」がありますので、その会議の際に事業所の医師が状態観察(もちろん算定しません)を行い、あらかじめ作っておいた計画書に変更点などがあったら追記し、その場でリハ医が説明と同意を行うことが限りなく現実的な対応だと思います。
もちろん医師が関わって作成していますので、主治医への情報提供の内容としては、内容の薄いペラペラ書かれたものよりも十分はなずです。新様式のリハビリテーション計画書の「情報提供先」に「医師」とあるのは、おそらく外部の主治医を指しているでしょうし(内部のリハ医に送る必要ないですよね?)。
Q&Aが出ていないのでまだ確定ではありませんが、以前より問題になっている二重診療は廃止になると予測しております。
訪問リハビリテーションの選択について
訪問リハビリテーション費は「通院が困難な利用者」に対して給付することとされているが、通所リハビリテーションのみでは、家屋内におけるADLの自立が困難である場合の家屋状況の確認を含めた訪問リハビリテーションの提供など、ケアマネジメントの結果、必要と判断された場合は訪問リハビリテーション費を算定できるものです。
「通院が困難な利用者」の趣旨は、通院により、同様のサービスが担保されるのであれば、通所系サービスを優先すべきということになります。
頻回のリハビリテーションを行う必要がある旨の特別の指示を行った場合の取扱い
「急性増悪等により一時的に頻回の訪問リハビリテーションを行う必要がある旨の特別の指示を行った場合」とは、保険医療機関の医師が、診療に基づき、利用者の急性増悪等により一時的に頻回の訪問リハビリテーションを行う必要性を認め、計画的な医学的管理の下に、在宅で療養を行っている利用者であって通院が困難なものに対して、訪問リハビリテーションを行う旨の指示を行った場合をいいます。
この場合は、その特別の指示の日から14日間を限度として医療保険の給付対象となるため、訪問リハビリテーション費は算定できません。
記録の整備について
①医師は、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士に対して行った指示内容の要点を診療録に記入する。理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士は、訪問リハビリテーション計画書に基づき提供した具体的なサービスの内容等及び指導に要した時。間を記録にとどめておく。なお、当該記載については、医療保険の診療録に記載することとしてもよいが、下線又は枠で囲う等により、他の記載と区別できるようにすることとする。 |
②リハビリテーションに関する記録(実施時間、訓練内容、担当者、加算の算定に当たって根拠となった書類等)は利用者ごとに保管され、常に当該事業所のリハビリテーション従事者により閲覧が可能であるようにすること。 |
最も効率的なのは通所リハとの併用
みんなの負担を限りなく減らせる方法は、通所リハとの併用だと思われます。もし、週に1度でも通所リハを利用しているなら、その時に医者が状態観察も行えますし、リハビリテーションカンファレンス会議を開催することもできます。
今回の改定で、通所リハと訪問リハが同一事業所の場合は、計画書や診療記録が統合できるようになりましたし、面倒なリハビリ会議への出席も集まりやすいはずです。まあ問題は、サービス利用限度額でおさまるかどうかですね。
リハビリテーション実施計画書の変更
今回の介護報酬改訂に伴い、リハビリテーションマネジメントとプログラムに活用する様式について整理がなされました。通所リハビリ/訪問リハビリの新書式(平成27年度版)というページに内容は詳しく書いており、書式の方もダウンロードできるようにしていますのでご確認をお願いいたします。
報酬比較表(訪問リハビリ)
報酬項目 | 従来 | 改訂 | 備考 | |
訪問リハビリテーション費/回 | 307 | 302 | 減額 | |
事業所と同一建物に居住する者又はこれ以外の同一建物の利用者20人以上にサービスを行う場合 | 90/100 | 90/100 | 継続 | |
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算 | 5% | 5% | 継続 | |
短期集中リハビリテーション実施加算(従来) | 退院(所)日又は認定日から1月以内 | 340 | – | 廃止 |
退院(所)日又は認定日から1月超3月以内 | 200 | – | 廃止 | |
短期集中リハビリテーション実施加算(改訂) | 退院(所)日又は認定日から3月以内 | – | 200 | 新設 |
リハビリテーションマネジメント加算/月 | (Ⅰ) | – | 60 | 新設 |
(Ⅱ) | – | 150 | 新設 | |
訪問介護計画を作成する上での必要な指導及び助言を行った場合(3月に1回限度) | 300 | – | 廃止 | |
社会参加支援加算/日 | – | 17 | 新設 | |
サービス提供体制強化加算/日 | 6 | 6 | 継続 |
おわりに
平成27年度の介護報酬改訂では、マイナス2.27%の引き下げとなり、多くの介護事業所が大打撃を受けることになりました。その中では、訪問リハビリの改訂は易しいものであるといえます。
しかし、延々と訪問リハビリを継続している事業所には少なからず減収となりますので、今後はできる限りの卒業と新規受け入れを積極的にしていかなければなりません。そういった意味では、リハビリ職の真価が問われる時代といえると思います。