貧乏ゆすり(ジグリング)の簡単な方法と効果について

変形性股関節症の患者に対して、脚を小刻みに動かす運動(ジグリング)を実施することで関節軟骨が再生した。

こんな嘘みたいな本当の大発見をしたのが柳川リハビリテーション病院名誉院長の井上明夫先生です。

これは数年前から度々メディアに取り上げられたので、テレビで貧乏ゆすりの効果について知っている読者は多いかと思います。

今回は井上先生の最新作が発売されたので、あらためて読んでみて、その効果に半信半疑ながら深い関心を覚えました。

実際に効果を出すためには一日に2時間以上のジグリングが必要となるので、柳川リハビリテーション病院では専用の機器を用いて実施しています。

アマゾンにも「健康ゆすり」という名前で売られていますが、個人で購入すると考えたらかなり高額です。

しかしながら、機器を使用しないと2時間も貧乏ゆすりをするなんて現実的ではなく、頑張りすぎたら筋肉痛で悪化する場合も多いです。

激安で似たような効果を出すための方法としては、EMS(電気治療器)を下肢に使用することです。

下腿三頭筋にパッドを適当に貼り付けたら、足関節の底屈運動が繰り返されますので、ジグリングと同様の動きが再現です。

椅子に腰掛けてから、膝関節を90度以上の屈曲位に保持して実施するようにしてください。(脚が前に出ないように)

もちろん電気治療器なのでビリビリとした感覚はありますし、苦手な人は短時間でも使用することが困難だと思います。

実際に自分が使用してみた感想としては、やや強めに電気を流さないとしっかりとした動きが出ないので、1回の使用は30分ぐらいが限度でした。

ジグリングによる関節軟骨の再生が期待できる人の特徴として、著書にて井上先生は以下のポイントを挙げています。

  1. 片側性の変形性股関節症
  2. 一次性の変形性股関節症(有効だった年齢は51〜81歳)
  3. 肥満でない
  4. 活動量が少ない
  5. 変形は中等度以下(骨頭臼蓋指数が60%以上、骨頭の扁平は軽度)
  6. 臼蓋縁の骨棘形成が認められる
  7. 1日2時間以上の使用で効果が出るのは平均2年後

ジグリングの考え方の根本にはCPM(持続的他動運動)訓練があります。

また、呼吸に伴って24時間小刻みに動き続ける胸郭の関節(肋骨の骨端)には関節症が起こらないということも参考としています。

そのため、1日2時間以上というのも最低限の数値目標であり、それよりも長く実施するほうが軟骨再生には有効と考えられます。

ちなみに井上先生は、筋力トレーニングや水中歩行訓練なども基本的に禁止しており、なるべく杖を使用して免荷に努めることを推奨しています。

軟骨再生のためにはそれだけの努力と犠牲を払わなければならず、実際の現場では難しいことも多々あるかと思います。

臨床に取り入れられる部分は参考にして、難しい部分は無視しながら、その人に合ったプログラムを考えてみてください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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