超一流と呼ばれるアスリートをケアしているトレーナーが書いた本を読むと、彼らの筋肉はお餅のように柔らかいと表現されているのをよく目にします。
私はトップアスリートの身体に触れたことがないので推測の域は出ませんが、彼らは力を入れる場面と抜く場面が明確にコントロールできているのではないかと考えています。
反対に、全身に痛みを訴えて線維筋痛症と診断されているような人たちの身体に触れると、とにかく筋肉がこわばっています。
これらのことから言えるのは、「筋肉はなるべく力が抜けている状態のほうがいい」ということです。
なにを当たり前のことを書いてるんだと文句がきそうなので補足すると、白筋線維が豊富な表層筋はなるべく使いすぎないほうがいいわけです。
例えば、イチロー選手のような超一流になると、バッターボックスに立っている瞬間も表層筋は力が抜けているので餅状態です。
それがバットを振ってボールに当たるインパクトの瞬間だけ表層筋が硬くなり、爆発的なパワーとバットコントロールを実現しています。
人間が身体のバランスをとるときは、関節の微妙な動きをコントロールするために表層筋よりも深層筋が活動する必要があります。
もしもバットを振る瞬間やその前から表層筋が強く働いていると、あれほどの絶妙なバットコントロールはできないはずです。
だからこそインパクトの瞬間だけに力が入ることが理想であり、そのためにはバッターボックスでどれだけ力が抜けているかが鍵になるのだと思います。
ここからさらに逆説的に考えていくと、普段から身体を動かすのに表層筋を使用している状態というのは、深層筋をうまく使えていない状態です。
そうなると身体をうまくコントロールできないので表層筋は硬くなってしまい、それ以上に無理をさせないように身体が痛みというシグナルを送ることになるわけです。
筋筋膜性疼痛を起こしている患者の多くは、負担となっている原因(多くは仕事)を取り除くことで痛みが楽になります。
だからといって仕事をやめるわけにはいかないので、マッサージなどでごまかしながら続けていくといったスタイルを選択しています。
この問題を根本的に解決するためには、いかに表層筋を使用しすぎないで動けるかというところに尽きます。
そこを解決することが運動療法であり、運動療法につなげるために徒手療法が存在しているのだと思います。
アスリートなら力を入れる場面と抜く場面をコントロールし、ここぞという場面で力を発揮できるようにしてください。