超音波療法の治療効果と方法ついて

超音波療法の効果について解説していきます。

超音波療法の歴史

超音波は1880年フランスのCurie兄弟が圧電効果を発見し、世界ではじめて発生可能となりました。

その後、フランスのLangevinが1917年に潜水艦探知器を目的としたソナーを開発し、超音波が実用化されました。

医学に超音波が応用されたのは、1942年にDussikが脳の超音波検査を行ってからであり、現在では診断や治療の様々な分野で使用されています。

理学療法領域では、1930年代後半〜1940年代に坐骨神経痛や関節炎に対しての実施されるようになったのが最初です。

現在の医療分野では、超音波メスや癌組織に対するハイパーサーミアなど幅広く活用されています。

【ハイパーサーミアとは】悪性腫瘍に対して温熱療法は通常禁忌ですが、本来の癌細胞は熱に弱いため、腫瘍部を集中的に約42℃まで加温することで選択的に破壊する方法です。この治療法は医師のみが可能で、理学療法の範疇には含まれません。

超音波療法の概要

超音波は音の一種であり、人間の可聴範囲の限界である20kHz以上の周波数を持つ音波のことを指します。

一般に治療用の超音波機器では1-3MHzの周波数が用いられており、1MHzでは深さ3-5㎝、3MHzでは深さ1-2㎝の組織を中心に加温することが可能です。

加温効果は3MHzのほうが3倍以上に高くなるため、1MHzで適用する場合の1/3以下の強度で用いられることになります。

超音波の使用方法

超音波治療器から照射される超音波は、空気中を伝搬しないため、体内に超音波を取り込むためには、導子と皮膚との間にゲルなどの媒介物質が必要となります。

凹凸がある部位ではゲル剤を使用しても隙間が生じる場合があるため、水中にて照射面と導子を10㎝程度離した状態で照射する水中法が用いられます。

水中法が使用できない場合はポリエチレン袋などに水を入れて、導子と皮膚の間に介在させて照射することも可能です。

温熱効果と非温熱効果の設定方法

超音波療法の目的は、①温熱効果を利用したもの、②振動効果(非温熱効果)を利用したものの2つに大別されます。

両者を区別するための設定条件として、①周波数、②強度、③照射率、④導子の移動速度、⑤照射面積、⑥実施時間によって決定します。

温熱効果 非温熱効果
周波数 1-3MHz 主に1MHz
強度 0.5-1.5W/㎠ 0.1-0.3W/㎠
照射率 50%以上 20%以下
移動速度 2-4㎝/秒 固定
照射面積 1.5-2倍 固定
治療時間 3-10分 3-20分

温熱効果を目的とした場合は、ビーム不均等率によって起こる熱点が発生してしまい、一部分だけが過剰に加熱されて火傷を起こすリスクがあります。

そのため、移動範囲は有効照射面積の1.5-2倍とし、導子の移動速度は2-4㎝/秒で移動させながら実施していく必要があります。

非温熱効果を目的とした場合は強度と照射率を下げて実施し、加熱作用をできるかぎりに抑えてから実施します。

低強度の低照射率であるため、導子を固定していても熱点は発生せず、火傷の心配はほとんどありません。

治療時間は部位によって異なり、通常の軟部組織で3-5分、腱損傷で15分、骨折で20分程度が治癒促進のためには必要な時間とされています。

温熱効果を利用した治療法

超音波の吸収係数の高い組織は、一般にコラーゲン含有量が高い組織であり、一方、吸収係数が低い組織は水分含有量が高い組織になります。

そのため、血液や脂肪、筋肉といった組織への加温効果は少なく、腱や靭帯、関節包、筋膜、骨といった組織の加温効果が高くなります。

1W/㎠の強度で1MHzの超音波を照射した場合、平均で軟部組織の温度は毎分0.2℃上昇することが報告されています。

組織 1MHz 3MHz
血液 0.028 0.084
脂肪 0.14 0.42
神経 0.2 0.6
筋肉(平行) 0.28 0.84
筋肉(垂直) 0.76 2.28
血管 0.4 1.2
1.12 3.36
軟骨 1.16 3.48
3.32   -

超音波の吸収は伝播された組織の蛋白質の含有量に比例するため、膠原組織を多く含む骨や関節包などでよく吸収し、温度上昇が起こりやすくなります。

とくに関節包は関節拘縮を引き起こしている最大の原因部位であるため、制限している部位に照射してから伸張を加えると効果的です。

超音波の適応は限局した深部組織で、ギプス固定後や火傷後の拘縮、術後の癒着や瘢痕などに対して高い効果を発揮します。

非温熱効果を利用した治療法

低強度の超音波療法では、以下のような生体反応が起こることが報告されています。

  1. 細胞内カルシウムの増加
  2. 細胞膜の透過性の増加
  3. 肥満細胞の脱顆粒の増加
  4. 走化性因子とヒスタミン遊離の増加
  5. マクロファージの反応性の増強
  6. 繊維芽細胞による蛋白合成率

これらの反応は組織の治癒を早め、障害からの復帰を早める効果が期待されています。

研究によると、骨折部位への超音波の照射は骨癒合期間を40%ちかくも短縮できると報告されています。

とくに難治性骨折に対しては有効で、骨癒合の成功率を大幅に向上するとされています。

頻度は1日1回、時間は20分程度が推奨されています。

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引用元:TEIJIN MEDICAL WEB


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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