足の親指(母趾)の付け根が痛む原因は4つある

母趾の付け根(MTP関節)に痛みが起こる原因は、主に四つの障害が考えられます。各障害の痛みが出現する部位とその特徴について解説していきます。

痛みの原因部位と障害

痛みのある部位 障害名
母趾内側 外反母趾
母趾背側 強剛母趾
母趾底側 種子骨周囲炎
母趾全体 痛風

原因①:外反母趾

母趾の痛みの原因で最も頻繁に起こる障害のひとつです。内的要因(身体的素因)と外的要因(ハイヒールの使用など)が相まって発症します。

母趾に外反変形が起こることにより、母趾内側が圧迫されて痛みが生じます。圧倒的に女性で多く(男性の10倍)、変形が重度になると外科的治療が必要となる場合もあります。

通常、保存的治療では母趾の外反を防ぐために親指と人差し指の間にクッションを入れて矯正を図ります。また、外反を防ぐ筋肉(母趾内転筋,背側骨間筋,前骨間筋)を強化し、短縮する筋肉(母趾外転筋)をストレッチします。

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原因②:強剛母趾

母趾の変形性関節症で、主に関節背側に変性(痛み)をきたすのが特徴です。50歳以上の男性に多く発生し、母趾MTP関節全体に腫脹をきたします。

痛みの有無は炎症の状態や骨棘の有無に左右されるので、インソールなどを利用してMTP関節に負担が加わらないようにし、炎症の鎮静化や力学的変化を図ることが重要です。

底が柔らかい靴では母趾が沈み込んで背屈の動きが強制されるので、やや硬めの靴底を選ぶほうが効果的です。重度の場合は、松葉杖の使用なども検討します。

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原因③:種子骨周囲炎

母趾底側には種子骨が存在しており、その周囲に炎症が生じることで起こります。そのため、痛みは足底側を中心にして訴えることになります。

通常、母趾の種子骨は内側と外側にひとつずつ存在し、その間を長母指屈筋の腱が通過しています。

内側種子骨の内側を母趾外転筋が、上側を短母指屈筋内側頭が通過しす。また、外側種子骨の上側を短母指屈筋外側頭が、その深層で母趾内転筋(横頭,斜頭)が外側種子骨を経由して第1基節骨の底に停止しています。

種子骨は腱や靱帯の方向を変える滑車としての役割があり、その滑車部分に上述した筋腱が繰り返しに擦れることで炎症を起こし、種子骨周囲炎を発症します。

治療では炎症部位に荷重が加わることを避けるため、種子骨部を免荷できるパッドを使用するように調整します。

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原因④:痛風

痛風とは、尿酸結晶が関節に沈着し、急性の関節炎を起こした状態です。母趾MTP関節に最も出現しやすく、次いで足関節や膝関節、肩関節などに出現します。

上記の三つの障害は痛みが限局的であるのに対し、痛風は関節全体が腫れて、動かせないほどの激しい痛みを伴います。そのため、まともに歩くことができず、足を引きずるような歩行となります。

治療は薬物療法(NSAIDsやコルヒチンなど)が主で、通常は2,3日で状態は改善します。

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おわりに

足の親指が痛む原因を4つほど紹介しましたが、どの原因においても正しく治療を行うことが必要になるので、お近くの足の外科専門医にて診察を受けることをお勧めします。

靴や中敷きを調節するだけで痛みが即時になることもあるので、我慢して症状を進行させないように注意してください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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