先日に担当した患者さんの話になりますが、主訴は歩行時(とくに歩き始め)の左膝関節前方(やや内側)の痛みでした。
X-pは問題なかったため、主訴や疼痛部位から内側広筋と縫工筋の間の筋膜に滑走不全があると予測しました。
しかし、実際に触診をしてみたら滑走不全は見つからず、膝蓋下脂肪体にも硬さや圧痛は存在していませんでした。
視点を変えるために、これまでに整形や整体などに行くような痛めた場所はないかという質問をすると、「昔に交通事故でむち打ちをした」という回答が返ってきました。
頸部は場所的に離れていたので、質問を変え、これまでに骨折したことはないかと質問をすると、「3年前に左足首を骨折した」とのことでした。
それから足首が硬くなっているとのことで、私としては内心「なぜそちらを先に言わなかったのか…」と思いながらも、足をチェックすることにしました。
うつ伏せでベッドから足首を出してもらい、アライメントを確認すると、右足は軽く内反するのに対して、左足は正中位でした。
左足部外側(上腓骨筋支帯など)に触れると滑走不全が認められ、足関節底屈に可動域制限が認められました。
足関節捻挫後に影響を受けやすい長趾伸筋(下腿前区画)にも硬さがみられ、足部外側と合わせてリリースすることで底屈の可動域が改善しました。
下腿前区画(長趾伸筋)と膝蓋腱は深筋膜を通じて機能的に連結していますので、互いに強く影響を与えることになります。
下肢前方ラインに滑走不全が存在していることがわかったので、さらに大腿四頭筋上の滑走不全を探しながらリリースしていきました。
最後に歩いてもらうと歩き始めの痛みも消失したため、これで初回の治療は終了としました。
筋膜変性の有無を推測する場合に、過去の外傷(捻挫や骨折)、仕事内容や運動歴(過用症候群)について聴取することは必須です。
そこから痛みが誘発された原因が見つかるケースも多いので、疼痛部位とは離れた場所であっても、しっかりと確認しておくことが大切です。