踵骨骨折のリハビリ治療について、わかりやすく解説していきます。
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踵骨骨折の概要
足根骨は7個の短骨から成りますが、その中で最も大きい骨が踵骨になります。
踵骨は上部の距骨と距骨下関節を、遠位の舟状骨および立方骨とショパール関節を形成しています。
距骨下関節は足部の内転と外転の動きを担っており、距腿関節の底背屈の動きと合わせて足部の柔軟な動きを実現しています。
踵骨骨折の90%以上は高所からの転落で足部から着地することにより発症し、その形態から陥没型と舌状型に分類されます。
距骨下関節の後部にまで骨折が及ぶ場合は予後が不良となりやすく、骨癒合が完成しても疼痛が残存するケースが多いです。
その原因として、関節拘縮や骨萎縮、距骨下関節の不適合、踵骨外壁の骨性隆起などが起こりやすいことが挙げられます。
踵骨骨折の治療における注意点
踵骨骨折の治療では、受傷部位周辺の筋緊張を緩和させ、踵骨への血流を増加させることにより骨折の修復促進を図ることが大切です。
骨萎縮を防ぐためにも早期荷重は重要ですが、骨転位を助長する可能性が高いため、荷重時期については慎重に検討していく必要があります。
踵骨には人体で最強の腱であるアキレス腱が付着しているため、下腿三頭筋の作用である足関節底屈の動きは極力避けます。
手術療法の適応基準
踵骨骨折はいくつかの重症度分類が存在しますが、ここでは簡便なSanders分類を用いて考えていきます。
分類 | 内容 |
type I | 非観血的療法 |
type II, III | 非観血的療法、転位がある場合は観血的整復固定術を選択 |
type IV | 観血的療法、距骨下関節固定術を考慮 |
引用元:http://kotoseikeigeka.life.coocan.jp/ |
手術療法について
徒手的に整復することが困難なケースでは、手術でスクリューや踵骨専用プレートなどを用いて固定していきます。
通常は術後6週目から部分荷重を開始し、徐々に荷重を増加させていきながら、10〜12週目に全荷重が可能となります。
引用元:http://kotoseikeigeka.life.coocan.jp/ |
踵骨骨折の合併症
踵骨骨折の合併症には、距骨下関節症(内反変形)、内反小趾、コンパートメント症候群、足底腱膜炎、脚長差などが挙げられます。
手術療法の合併症では、腓腹神経損傷が約10%に生じます。
整復方法(大本法)について
踵骨骨折のほとんどは高所からの転落による垂直方向の負荷によって生じるため、足関節周囲の靭帯は損傷されていないケースが多いです。
大本法では、患者を腰部麻酔下で腹臥位とし、患側膝関節を 90度屈曲します。
助手は患側に立ち大腿の膝付近を押さえ込み、施術者は患者の足元に立ち、両手掌を踵骨の内外側に当てて包み込むように両手指を組みます。
強い圧迫を加えながら踵部を上方に持ち上げつつ、同時に強く速く内外反を行って整復していきます。
大本法による整復後は一般的にギプスは必要とせず、足関節を45度底屈位で取り外しのできる膝下装具を使用します。
整復後1ヶ月でプールでの免荷歩行が開始となり、2ヶ月でヒールサポートを装着しての杖歩行、3ヶ月で全荷重歩行が可能となります。
神経筋協調運動
足部の損傷や固定では、足底の感覚機能低下を及ぼす原因となり、歩行時の障害を招くことになります。
そのため、術後早期より感覚入力トレーニングやキャスター付きボードで下肢の振り出し練習といった神経筋協調運動の実施が推奨されています。
力を入れすぎると下腿三頭筋にまで緊張が波及しますので、収縮が入らない範囲で実施していきます。
免荷歩行
レントゲンにて仮骨の形成が確認できたら、平行棒内での部分荷重訓練を実施していき、骨癒合の促進を図っていきます。
荷重量に関しては医師と相談しながらになりますが、通常は受傷後4週から体重の1/6負荷で疼痛のない範囲で実施します。
以下に、代表的な歩行補助具とその荷重目安を掲載します。(歩行器に関してはつま先のみを接地した場合)
方法 | 荷重(目安) |
歩行器 | 20% |
松葉杖 | 33% |
ロフストランド杖 | 67% |
Q杖 | 70% |
T杖 | 75% |
以下に、大本法で推奨されているプール歩行の推移と荷重目安について掲載します。
水位 | 荷重(目安) |
頸 | 10% |
乳頭 | 35% |
臍部 | 55% |
大転子 | 62% |
膝 | 92% |
足底挿板療法(ヒールサポート)
ヒールサポートとは、簡単に説明するとハイヒールのようなもので、踵の高さを上げることによって荷重を前足部に誘導する方法です。
足底挿板を作製するのが一般的ですが、踵の高いサンダルなどを利用して除圧することも可能です。
高さを上げるほどに荷重は減少しますが、場合によっては下腿三頭筋の過緊張を誘発することにもなるので、痛みのない適度な高さに調節します。