運動連鎖によるアライメント変化を筋肉で調整する方法

安定した姿勢を保つためには重心を中央に整えることが大切なんですが、実際にどのような筋肉が貢献するかを解説していきます。

矢状面を整える筋肉

例えば、足関節が背屈したら下図のような運動連鎖をたどることになります。

姿勢分析と運動連鎖|矢状面

しかし、それは全てが連鎖的に働いた場合であり、ほとんどの場合はどこか特定の関節で相殺していることが多いです。

先ほどの足関節背屈による重心の前方移動では、脊椎を伸展させることで後方に戻して相殺することもできます。

足関節背屈の姿勢調整

このような形で、重心を前方に移動させる筋肉と後方に移動させる筋肉がありますので、以下の表にまとめてみました。

部位 前方 後方
足関節 前脛骨筋 ヒラメ筋
膝関節 大腿四頭筋 ハムストリング
股関節 大殿筋 腸腰筋
脊椎 腹直筋 脊柱起立筋
頸部 頸部屈筋群 頸部伸筋群

基本的には身体前面に位置する筋肉が重心を前方に移動させますが、股関節のみは後方の大殿筋が前方移動に貢献します。

前額面を整える筋肉

足関節が内反すると重心が外側に移動するので、そこから連鎖的に関節が動いて重心を調整していきます。

姿勢分析と運動連鎖|前額面

前額面では、重心を左右に移動させる筋肉がありますので、そちらを以下の表にまとめてみました。

左側の筋肉が収縮した場合に、左右のどちらに重心が移動するのかを視点にしています。少し紛らわしいかもしれませんがご了承ください。

部位 左側 右側
足関節 後脛骨筋 腓骨筋
膝関節 鵞足 大腿筋膜張筋
股関節 内転筋群 中殿筋
脊椎 左脊柱起立筋 右脊柱起立筋

膝関節は屈曲伸展の動きしかないので、厳密には重心移動をさせる筋肉ではありませんが、内反や外反といった動揺がある場合の制動に働きます。

鵞足は薄筋、縫工筋、半腱様筋、半膜様筋(文献によっては含める)の総称で、膝関節外反の際は矯正方向に作用します。

水平面を整える筋肉

水平面は身体の捻れを調整するように働く連鎖するので、各部位でどのような筋肉が捻れを調整するか解説します。

姿勢分析と運動連鎖|水平面

こちらも側屈と同じで、左側の筋肉が収縮した場合に、左右のどちらに回旋運動が生じるかを視点にしています。少し紛らわしいかもしれませんがご了承ください。

部位 左回旋 右回旋
下腿 外側広筋 内側広筋
大腿 大殿筋,外旋筋群 中殿筋前部,大内転筋
体幹 右内腹斜筋 左内腹斜筋
頭部 右胸鎖乳突筋 左胸鎖乳突筋

姿勢矯正についての考察

上記に挙げてきた筋肉は、その動きに対して貢献度の高い一部の筋肉だけであり、もちろんですがその他にも多くの筋肉が関与しています。

脊柱起立筋とひとくちに言っても、いくつも筋肉の総称であり、脊椎の高さやアライメントによっても貢献度は異なりますので考慮が必要です。

姿勢矯正の基本は筋トレとストレッチであり、その関節を動かしたい方向に働く筋肉は強化し、姿勢を崩している方向に働く筋肉はストレッチしていきます。

側弯症3

そのためには、まずは骨のアライメントの状態を評価し、次に周囲筋の緊張度合いや痛みなどを確認していきます。

そこから実際にどの筋肉を治療対象としていくかを決めていくようにします。

姿勢矯正の注意点

最後にひとつだけ覚えておいてほしいことは、なぜアライメントが崩れているのかを考えることです。

例えば、痛みからの疼痛回避によって崩れている(無意識に崩している)のであれば、矯正することが逆効果になる場合もあります。

そのため、その姿勢は矯正するべきなのか、矯正できるものなのかは常に頭に入れながら取り組んでいくことが大切です。


他の記事も読んでみる

The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
rehatora.net © 2016 Frontier Theme