関節の炎症を抑えるための方法について

膝関節の治療をしていてよく思うのですが、関節に炎症が存在しているとリハビリをしても痛みを完全に取り除くことはできません。

根本的に治すには患部の炎症を消失させる必要があるのですが、そのためには日常生活からしっかりと整えていく必要があります。

ポイントはいくつかあるのですが、以下の方法が有用となります。

方法①:患部の安静

膝関節に炎症が存在するかを簡単に調べる方法として、膝に手を触れて、熱感および腫脹が存在していないかを確認していきます。

炎症がある場合は歩行時に痛みが生じるようになり、患部に負担が加わっているという合図になります。

怪我をしている場所を刺激し続けても早く治ることはなく、余計に悪化してしまう可能性が高いので、患部は安静に保つことが鉄則です。

働いている人は安静にすることが難しい場合がほとんどなので、以下に挙げる方法を参考にしてみてください。

方法②:消炎鎮痛剤の使用

炎症を抑えるために最も効果的なのは「薬」です。

当たり前の話ですが、炎症を抑えるために膨大な時間と費用をかけて研究されてきたので、健康食品などとは比べ物にはなりません。

私が勤めているクリニックでは膝関節炎にステロイド注射(当院ではデキサート注射液)を実施しますが、その効果は絶大です。

ただし、痛みの主因が炎症でない場合は効果が今ひとつですが、原因を調べるという意味ではやはり重要な所見となります。

近年は、炎症を抑える効果を持つアスピリンが癌の発症リスクを下げると報告されており、医療業界でも注目を集めています。

もちろん薬には副作用が存在しますので、慢性的に飲み続けると胃腸障害などの問題が起こってくることは間違いありません。

しかし、慢性的な炎症が身体に悪影響を及ぼすこともまた事実なので、過剰にならない範囲で適切に使用することが大切です。

前述した膝関節の炎症を例にすると、部分的に強く現れているものに対しては、貼付や塗布の消炎鎮痛剤を使用することが推奨されます。

現在はネットで簡単に購入することもできますので、自分に合ったモノを見つけていくと良いでしょう。

方法③:温熱療法(または寒冷療法)

温めることによるメリットはいくつも存在しますが、炎症を改善させるために最も重要なのが血流の促進効果です。

血流が良くなると血管内皮細胞からNO(一酸化窒素)が出て、傷ついた血管を修復してくれる作用があります。

軽い運動で血流を良くすることも効果的なのですが、痛くて運動ができない、またはする気になれないという人には温めることが有効です。

血管(動脈)は身体の深層に位置している場合が多いので、表面的に温めるだけではあまり効果が期待できません。

そのため、しっかりと時間をかけて保温することが重要であり、お風呂などに入浴することはお薦めです。

痛みを我慢しながら働いている人では、仕事の後に炎症が悪化してしまっているケースも多いと考えられます。

その場合は「急性炎症」と同じ状態になるので、アイスパックなどで熱感が強い部分を冷やすことが効果的になります。

野球の投手も試合後にアイシングを徹底していますが、それも使用後の炎症を抑えるためということに尽きます。

方法④:軽い運動

最初に誤解がないように説明すると、急性期の炎症や患部に痛みが出るような運動は炎症を強めるので絶対に行わないでください。

ここではあくまで慢性炎症(1ヶ月以上続くような痛み)を中心に解説しており、痛みを伴わない範囲で実施していくことが重要です。

例えば、急性期の五十肩でエビデンスが認められている治療法は少ないのですが、その中で「痛みのない範囲での自動運動が有効」とされています。

この理由については最近までよくわからなかったのですが、どうやら筋肉から分泌されるマイオサイトカインという物質が関わっているようです。

まだマイオサイトカインについてはわからないことも多いですが、わかっていることのひとつが炎症の抑制効果です。

他動運動と自動運動の違いは筋収縮が起こるかどうかですが、自動運動だけが有効というなら十分に関与している可能性は高いと考えられます。

方法⑤:適切な食事

炎症を抑えるための成分として重要なのは、EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)の2つです。

これらは脂肪酸の一種になるのですが、オメガ3系脂肪酸に属しており、魚油やえごま油、亜麻仁油、チアシードオイル、クルミに多く含まれます。

反対に炎症を促すための成分としては、AA(アラキドン酸)があり、こちらはサラダ油などに多く含まれます。

炎症を促すからAAの全てが悪いというわけではなく、大切なのはバランスであり、AAはEPAと1:1で摂取することが推奨されています。

しかし実際は、ほとんどのヒトがAAのみが過剰に摂取されている状況なので、積極的にEPAの摂取が促されることになります。

えごま油や亜麻仁油などは高級品なので、一般の人に薦めたとしても簡単には摂取することが難しい部分だと思います。

なので食事の指導をする際は、油モノを減らすことと、マグロなどのDHAが豊富に含まれているものを食べることを促します。

魚を簡単に食べる方法として、水煮のツナ缶もお薦めであり、EPAとDHAを効率的に摂取することが可能です。

加えて野菜もなるべく摂るようにし、お酒やタバコもできる限りに控えて、健康的に生活することで炎症を抑えることができます。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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