関節可動域訓練の方法と注意点について

最近はあまり「訓練」という言葉は使われなくなってきたようで、ROMexのことを関節可動域運動と呼ぶそうです。

まあそれはどうでもいいとして、ROMexはセラピストなら毎日のように行っている基本的な手技かと思います。

しかし、実際にどういった部分に注意しながら身体に触れていくかについては、学校でもあまり教わった記憶はないはずです。

関節可動域運動の大切なのは触れ方

最も基本的な部分であるはずなのに、実はイマイチよく説明できない部分、それが患者の身体に触れる技術です。

よく患者があのリハビリの先生は上手とか下手とか言ってますが、そのほとんどは触れ方の問題を言っているのだと思います。

無意識にできている人もいたら、無意識だから全然できていない人もいます。その辺りの実際を、疾患治療の実際に当てはめながら解説していきます。

肩関節周囲炎に対するROMex

臨床でもよく遭遇する肩関節周囲炎のリハビリでは、流れとして肩甲骨周囲の筋緊張を緩めてから、関節可動域運動に持っていくことが一般的です。

緊張が高いままでは痛みも強く、関節をうまく動かせませんので、まずはリラクゼーションを図ることから開始します。

肩甲骨周囲を適当にモミモミしていたら緊張は落とせますが、それだと関係ない部分まで触れることになり、緩めるまでに時間がかかってしまいます。

そこで最初の触れる技術になりますが、痛みが強いのは筋肉の過剰な緊張(防御収縮)ですので、それをいかにして効率的に緩めるかを考えます。

ポジションニングとリラクゼーション

具体的な方法として、まずはポジショニングが重要で、最もリラックスできる姿勢(緊張が緩む姿勢)をとっていただくようにします。

次に筋肉の硬結部(圧痛部)を探していきますが、基本は筋線維の走行に沿いながら、中枢から末梢にかけて手指を滑らせて確認していきます。

ここでは無駄な刺激を与えないようにするため、筋線維に対して横断する刺激を与えたり、末梢から中枢に滑らせて皮膚(毛)への摩擦を強めたりしないように注意します。

実際に硬結部を見つけたら無痛領域(痛みを感じない程度)の刺激で持続圧迫を加えていき、筋肉が緩むまで待ちます。緩んだかどうかは、筋の硬さや圧痛の有無で判断します。

そのようにして肩関節周囲の筋緊張を緩めたら、実施前よりも関節可動域が大きく拡がりますので、次はその状態から関節可動域運動に移っていきます。

セラピストのポジショニング

筋緊張は痛みがあったり、関節が不安定な位置に持っていかれることで急激に上がりますので、ここからは慎重に関節を動かしていくことが必要になります。

肩関節周囲炎の場合は内旋や外旋を引き出していくことが必要ですが、その際に上肢をどれだけ安定させた状態におけるかが重要になってきます。

なるべく患者の上肢は広い範囲で支えるように把持し、セラピスト自身も安定した姿勢を保てるようにします。

もしも自分のポジションが不安定だと、その動揺は支えている上肢を介して患者にまで伝わってしまいます。

その場所が不安定だと認識したら、患者は痛みを起こさないために防御収縮が起こりますので、そこでそれまでの作業が無駄になることすらあります。

なので、お互いに最も安定したポジションを保持するようにし、そこから他動的に制限されている方向への関節可動域運動を行っていきます。

他動運動から自動介助運動へ

動かしている間もできる限りに上肢の重さは免荷できるように支え、周囲筋の収縮を必要としない状態に保持します。

しばらく反復することで無理なく実施できる可動範囲がわかりますので、そこからは徐々に自動介助運動に移行していき、筋収縮を伴った運動を行います。

目的としている筋肉以外が収縮している場合は、負荷が強いと判断されるため、介助量を増やして過剰な収縮が入らないように調整していきます。

自動介助運動まで無事に行うことができたら、その後に制限されていた動き(結帯動作)を実際にしていただき、リハビリ前後での変化を確認します。

そこからしばらくは効果が持続されますので、自主トレーニングを指導して動かせる範囲を保てるようにします。

方法は自動介助運動を行った場合と同じで、目的としない筋肉の収縮が入らない範囲で行える負荷量で実施してください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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