顔面神経麻痺のリハビリ治療に関する目次は以下になります。
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顔面神経麻痺の概要
顔面神経麻痺は、顔面神経によって支配されている顔面筋の運動麻痺です。顔面神経麻痺の約70%はBell麻痺とHunt症候群で占められています。
その発生機序は、膝神経節再活性化したウイルスの関与が考えられています。
また、外傷性、腫瘍性、症候性(多発性硬化症、筋委縮性側索硬化症、Guillain-Barre症候群)、先天性などでも発生する場合があります。
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種類 | 顔面神経麻痺を起こす主な疾患 |
特発性 | Bell麻痺 |
感染性 | Hunt小国群、急性・慢性中耳炎、悪性外耳道炎 |
外傷性 | 頭部外傷・側頭骨骨折、手術損傷、顔面損傷 |
腫瘍性 | 小脳橋角部腫瘍、耳下腺腫瘍、顔面神経鞘種 |
その他 | ギラン・バレー症候群、糖尿病 |
顔面神経麻痺の症状
- 麻痺側の眼瞼下垂や口角下制
- 眉毛挙上や閉眼が困難となる随意運動障害
- 病的共同運動
- 顔面拘縮 etc.
予後について
Bell麻痺では、70%程度が自然経過で予後良好とされています。
しかし、完全麻痺を呈している場合や発症後3週以内に回復傾向がみられない場合、Hunt症候群、電気生理学的検査にて強い神経変性を示唆する場合は予後不良とされています。
顔面麻痺の治療方法
薬物療法では、ステロイドや抗ウイルス薬、ビタミンB12などが処方されます。
外科的治療とて、顔面神経減荷術、舌下-顔面神経吻合術、形成外科的手術などが施術されることもあります。
リハビリテーションでは、顔面筋マッサージ、温熱療法、EMGバイオフィードバックなどが多用されます。
機能評価(柳原法)について
ほぼ正常 | 部分麻痺 | 完全麻痺 | |
①安静時非対称 | 4 | 2 | 0 |
②額のしわ寄せ | 4 | 2 | 0 |
③軽い閉眼 | 4 | 2 | 0 |
④強閉眼 | 4 | 2 | 0 |
⑤片目つぶり | 4 | 2 | 0 |
⑥尾翼を動かす | 4 | 2 | 0 |
⑦頬を膨らます | 4 | 2 | 0 |
⑧イーっと歯を見せる | 4 | 2 | 0 |
⑨口笛 | 4 | 2 | 0 |
⑩口をへの字にまげる | 4 | 2 | 0 |
柳原法は、Bell麻痺やHunt症候群の麻痺を評価するために作成されました。
最悪時のスコアが10点以上の不全麻痺例で予後良好、最悪時のスコアが8点以下で予後不良とされています。
また、高齢者ほど予後不良となりやすいです。点数が36点以上で治癒と判定されます。
リハビリテーション
顔面神経麻痺に対するリハビリの効果については、まだ不明な点もありますが、概ね有効であることが示唆されています。
表情筋の随意運動を行わず、頻回な伸張マッサージや眼瞼挙筋による開瞼運動を行うことで、1年後の機能回復が良好というデータも存在します。(逆の報告もあります)
他には、鏡やEMG機器を用いたフィードバック療法が病的共同運動の予防に有効であるといった報告もあります。こちらは悪化リスクはないため自主練習の指導が有用です。
理学療法の基本方針
リハビリの内容は随意収縮の有無をみて決定します。随意収縮のない段階では、眼のケアや顔面マッサージが主になります。
随意収縮が認められる場合は、筋力の増強、協調性のある機能的筋活動の獲得、病的共同運動・拘縮の改善を行っていきます。
眼のケア
眼を閉じることができない場合は、角膜などに損傷を受けやすい状態にあります。そのため、ケアとして目薬の使用やテープ・眼帯による閉眼誘導を行います。
また、保護用のメガネの使用や加湿器の使用など、乾燥しないようにした生活動作の始動が必要となります。
顔面マッサージ
マッサージを施術する筋肉は、①眼輪筋、②後頭前頭筋、③大・小頬骨眼、④口輪筋、⑤広頚筋が主な対象となります。
具体的な方法として、表情筋をほぐすような感覚で力を入れずにリラックスした状態で行っていきます。
強すぎるマッサージは逆効果となりますので、マイルドに実施するように指導し、暇な時間に気掛けて実施していただくと効果的です。
1.眼輪筋 |
2.後頭前頭筋 |
3.大頬骨筋 |
4.口輪筋 |
5.広頚筋 |
物理療法
顔面の筋肉をリラックスさせるために、一般的には温熱療法が推奨されています。
蒸しタオルなどを使用して、顔に5-10分ほど置いて温めていきます。リラックスできる体勢で行うようにし、一日に三回ほど行います。
電気刺激療法は神経発芽の抑制、病的共同運動が助長される可能性にあることが報告されており、推奨度は低いとされています。
筋力強化(バイオフィードバック療法)
鏡を確認して目を開けながら、口を動かす運動や口を動かさずに目を閉じる運動(分離運動)を実施します。
顔面筋に過剰な収縮が入らないように、フィードバックを行いながら実施することが大切です。運動前後に顔面マッサージを実施し、疲労感の強くない程度で実施してください。
わかりやすいパンフレット
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おわりに
顔面神経麻痺は、発症からの経過が長い場合も多く、リハビリ期間が1年以上に及ぶ場合も少なくありません。
そのためにも、患者自身がセルフトレーニングを行えるように指導することや、病態について理解できるように説明することが不可欠です。
顔面は身体の中でも最初に目につくデリケートな場所ですので、改善傾向が弱くても諦めずにアプローチしていくことが大切です。
引用画像
- 森上鍼灸整骨院
- ハント症候群・顔面神経麻痺の治療とリハビリ