高齢者の筋力トレーニングにおける注意点

今回は、高齢者が筋力トレーニングを実施する上での注意点について解説していきます。

筋力トレーニングの原則

筋力を強化するために必要なことは、筋肉に一定の負荷をかけることです。例えば、1セット10回のダンベルトレーニングを実施する場合は、10回目が上がるか上がらないかくらいの負荷をかけます。そうすることで、筋肉のエネルギーを使い切ることができます。

エネルギーを使い切らないうちにやめてしまうと、筋肉に十分な負荷が伝わらず、思うような効果が得られない場合があります。なので、鍛えるときは限界まで出し切ることが原則です。

頻度としては、ボディービルダーのように二時間ほどかけて重点的に鍛えるのであれば、週2回ほどで最大限の効果を発揮できるとされています。ただし、確実に筋肉痛が現れるほどに筋肉を追い込む必要があります。

高齢者に対する筋トレのポイント

筋トレの原則を上述しましたが、高齢者に筋トレを実施していただく場合はそうはいきません。そんな高負荷で実施すると、一日で身体が動かなくなります。以下に高齢者に対する筋トレのポイントを4つにまとめて解説していきます。

一定の負荷を与える

高齢者の場合は、筋トレに全力で取り組んでいない場合も多く、10回では負荷が足りていない場合が多々あります。なので、負荷量が変化しないようなプログラムを組むことが大切です。

例えば、椅子からの立ち上がり練習は負荷量が大きく変化しません。しかし、スクワットのような練習になると楽をしようとして、腰を下げる位置を高めにしたりします。

軽い負荷量では、いくらやっても筋肉はつきませんので、しっかりと筋肉に負荷が与えられるようにプログラムは組まなければなりません。そのさじ加減を決めるのが私たちの仕事です。

筋肉痛を起こさせない

私もよく失敗するのですが、高齢者に筋トレを実施する場合は、筋肉痛を起こさせないように注意が必要です。筋肉痛が起きると、「運動をしたから痛くなった」と言われて、二度と実施してくれなくなります。

また、高齢者にとっての筋肉痛は、多くの場合が生活動作に支障をきたすことになります。それだけは何としても避けなければなりません。筋肉痛が起きなくても筋力をつけることは可能なので、最優先はあくまで安全性と考えてください。

高頻度の実施

筋力トレーニングの原則は、筋肉のエネルギーを使い切ることだと書きましたが、高齢者に関しては筋肉痛のリスクがあるのでそうはいきません。負荷量はややキツい程度とし、翌日に疲労が残らないことを指標とします。

運動頻度に関しては、高負荷で重点的に実施するなら週2回ほどで最大限の効果が期待できるとされていますが、中程度の負荷なら週4,5回は運動が必要となります。また、運動に慣れていくにつれて、漸増的に負荷は増やしていくようにします。

自主練習の定着

前述したように、中負荷の筋トレでは筋肉をつけるために週4,5回は運動を実施する必要があります。しかし、この回数は入院でもしていない限りは、リハビリの時間のみでは実現することはほぼ不可能です。

なので、筋トレは自宅でも実施できるようにしていく必要があります。しかし、ほとんどの方は自宅での運動が定着しません。その理由として、運動内容のわかりにくさがあると思います。

自宅での練習を定着させるためには、とにかくわかりやすく説明することが大切です。その他にも、運動内容を記載したパンフレットを配布したり、ご家族さんに説明して協力してもらうように要請するなども効果的です。

おわりに

以前の記事(維持期にはもう理学療法士はいらないんじゃないかって話)にも書きましたが、高齢者が実施している運動は圧倒的に量が足りていない傾向にあります。

今後は、予防での運動が重要視されていくようになるので、在宅での自主練習の定着率などもより大切になってくると考えられます。なので、そういったノウハウを今のうちから持っておくことで、重宝される人材になることは間違いありませんよ!


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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