認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)(Ⅱ)の算定要件【通所リハビリ】

通所リハビリにおける、認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の単位や算定要件等について解説していきます。

単位

報酬項目 単位
認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)/日 240
認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅱ)/月 1920

対象の事業所(介護度)

  • 通所リハビリテーション(要介護)

加算が(Ⅰ)と(Ⅱ)に分けられた理由

平成27年度の介護報酬改訂にて、認知症短期集中リハビリテーション実施加算は(Ⅰ)と(Ⅱ)に分けられました。

その背景として、認知症高齢者は個別リハビリよりも集団活動が有用である場合も多いため、状態に合わせた効果的な方法や介入頻度、時間を選択できるようにしました。

そのため、どちらを算定するかは利用者の症状に合わせて選択することが望ましいです。

加算(Ⅰ)の算定要件

認知症短期集中リハビリテーション加算(Ⅰ)を算定するためには、以下の要件を満たしている必要があります。

  1. 概ね週2日以上、1日あたり20分以上の個別リハを実施
  2. 通所リハビリテーション計画書に、①リハビリの実施頻度、②実施場所、③実施時間等を記載
  3. 退院(所)日又は認定日から起算して3月以内
  4. 生活行為向上リハビリテーション実施加算又は短期集中個別リハビリテーション実施加算を算定していない
  5. リハビリテーションマネジメント加算(Ⅰ)〜(Ⅳ)を算定している

加算(Ⅱ)の算定要件

認知症短期集中リハビリテーション加算(Ⅱ)を算定するためには、以下の要件を満たしている必要があります。

  1. 月4回以上リハビリテーションを実施すること(8回程度を推奨)
  2. 利用者の居宅を訪問して生活環境をあらかじめ把握しておくこと
  3. 通所リハビリテーション計画書に、①リハビリの実施頻度、②実施場所、③実施時間等を記載
  4. 退院(所)日又は認定日から起算して3月以内
  5. 生活行為向上リハビリテーション実施加算又は短期集中個別リハビリテーション実施加算を算定していない
  6. リハビリテーションマネジメント加算(Ⅰ)〜(Ⅳ)を算定している

留意事項

認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)(Ⅱ)を算定する際には、以下に示す留意事項に従う必要があります。

①認知症短期集中リハビリテーション実施加算におけるリハビリテーションは、認知症を有する利用者の認知機能や生活環境等を踏まえ、応用的動作能力や社会適応能力(生活環境又は家庭環境へ適応する等の能力をいう。以下同じ。)を最大限に活かしながら、当該利用者の生活機能を改善するためのリハビリテーションを実施するものであること。
【解説】リハビリ内容は、応用的動作能力や社会的能力を活かした内容が望ましい。
②認知症短期集中リハビリテーション加算(Ⅰ)は、精神科医師若しくは神経内科医師又は認知症に対するリハビリテーションに関する専門的な研修を修了した医師により、認知症の利用者であって生活機能の改善が見込まれると判断された者に対して、通所リハビリテーション計画に基づき、1週間に2日を限度として、20分以上のリハビリテーションを個別に実施した場合に算定できるものである。なお、当該リハビリテーションの提供時間が20分に満たない場合は、算定はできないこととする。
【解説】加算(Ⅰ)を算定するには20分以上の個別リハビリが必要となる。なお、算定の上限は週2日までとする。
③認知症短期集中リハビリテーション加算(Ⅱ)は、精神科医師若しくは神経内科医師又は認知症に対するリハビリテーションに関する専門的な研修を終了した医師により、認知症の利用者であって生活機能の改善が見込まれると判断された者に対して、通所リハビリテーション計画に基づき、利用者の状態に応じて、個別又は集団によるリハビリテーションは、1月に8回以上実施することが望ましいが、1月に4回以上実施した場合に算定できるものである。その際には、通所リハビリテーション計画にその時間、実施頻度、実施方法を定めたうえで実施するものであること。
【解説】加算(Ⅱ)は加算(Ⅰ)とは異なり、個別リハビリでも集団リハビリでも算定が可能となる。月4回未満しか実施できなかった場合は算定ができない。
④認知症短期集中リハビリテーション加算(Ⅱ)における通所リハビリテーション計画の作成に当たっては、認知症を有する利用者の生活環境に対応したサービス提供ができる体制を整える必要があることから、利用者の生活環境をあらかじめ把握するため、当該利用者の居宅を訪問すること。
【解説】加算(Ⅱ)を算定するには利用者の居宅を事前に訪問している必要がある。
⑤認知症短期集中リハビリテーション加算(Ⅱ)における通所リハビリテーション計画に従ったリハビリテーションの評価に当たっては、利用者の居宅を訪問し、当該利用者の居宅おける応用的動作能力や社会適応能力について評価を行い、その結果を当該利用者とその家族に伝達すること。なお、当該利用者の居宅を訪問した際、リハビリテーションを実施することはできないことに留意すること。
【解説】居宅訪問時に動作練習などを実施しても、それはリハビリテーションの回数に含めることはできない。
⑥本加算の対象となる利用者は、MMSE(Mini Mental StateExamination)又はHDS―R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)においておおむね5点~25点に相当する者とするものであること。
【解説】MMSEやHDS-Rで5点未満の場合は改善が難しいと判断されて算定ができず、26点以上の場合は認知症はないと判断されて算定できない。
⑦本加算の算定に当たっては、リハビリテーションマネジメント加算の算定が前提となっていることから、当該加算の趣旨を踏まえたリハビリテーションを実施するよう留意すること。
【解説】認知症短期集中リハビリテーション加算(Ⅰ)(Ⅱ)はリハビリテーションマネジメント(Ⅰ)又は(Ⅱ)を算定しないと加算することはできない。
⑧本加算は、認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)についてはその退院(所)日又は通所開始日から起算して3月以内の期間に、認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅱ)についてはその退院(所)日又は通所開始日の属する月から起算して3月以内の期間にリハビリテーションを集中的に行った場合に算定できることとしているが、当該利用者が過去3月の間に本加算を算定した場合には算定できないこととする。
【解説】(Ⅰ)は日で加算することから開始日から3か月間とし、(Ⅱ)は月で加算することから開始月から3カ月とする。なお、新規利用者であっても過去3カ月の間に別の施設で加算をとっていたなら算定はできない。

Q&A(厚生労働省通達)

Q.認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅱ)について、1月に4回以上のリハビリテーションの実施が求められているが、退院(所)日又は通所開始日が月途中の場合に、当該月に4回以上のリハビリテーションの実施ができなかった場合、当該月は算定できないという理解でよいか。
A.認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅱ)は、認知症の利用者であって生活機能の改善が見込まれると判断された者に対して、通所リハビリテーション計画に基づき、利用者の状態に応じて、個別又は集団によるリハビリテーションを1月に4回以上実施した場合に取得できることから、当該要件を満たさなかった月は取得できない。なお、本加算におけるリハビリテーションは、1月に8回以上実施することが望ましい。
Q.通所リハビリテーションの認知症短期集中リハビリテーション実施加算の起算日について、「通所開始日」とは 通所リハビリテーションの提供を開始した日と考えてよいか。
A.貴見のとおりである。
Q.認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)を算定していたが、利用者宅に訪問して指導する又は集団での訓練の方が利用者の状態に合っていると判断した場合、認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅱ)に移行することができるか。
A.退院(所)日又は通所開始日から起算して3月以内であれば、移行できる。ただし、認知症短期集中リハビリテーション(Ⅱ)は月包括払いの報酬であるため、月単位での変更となることに留意されたい。
Q.認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)については、「1 週に 2 日を標準」とあるが、週2日の計画が作成されている場合で、やむを得ない理由がある時は週1日でも算定可能か。
A.集中的なリハビリテーションの提供を目的とした加算であることから、1週に2日実施する計画を作成することが必要である。ただし、当初、週に2日の計画は作成したにも関 わらず、①やむを得ない理由によるもの(利用者の体調変化で週1日しか実施できない場 合等)や、②自然災害・感染症の発生等により、事業所が一時的に休養するため、当初予 定していたサービスの提供ができなくなった場合であれば、算定できる。
Q.認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)又は認知症短期集中リハビリ テーション実施加算(Ⅱ)について、通所リハビリテーション事業所に算定要件を満たす医師がおらず、算定要件を満たす外部の医師が情報提供を行った場合、算定は可能か。
A.算定できない。ただし、算定要件を満たす医師については必ずしも常勤である必要はない。

これより以下は、平成30年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(介護保険最新情報vol.629)より内容を抜粋しています。

Q.認知症短期集中リハビリテーション実施加算の要件である「認知症に対するリ ハビリテーションに関わる専門的な研修を終了した医師」の研修とは具体的に何か。
A.認知症に対するリハビリテーションに関する知識・技術を習得することを目的とし、 認知症の診断、治療及び認知症に対するリハビリテーションの効果的な実践方法に関する一貫したプログラムを含む研修である必要がある。 例えば、全国老人保健施設協会が主催する「認知症短期集中リハビリテーション研 修」、日本リハビリテーション病院・施設協会が主催する「認知症短期集中リハビリ テーション研修会」、全国デイ・ケア協会が主催する「通所リハ認知症研修会」が該 当すると考えている。また、認知症診療に習熟し、かかりつけ医への助言、連携の推進等、地域の認知症医療体制構築を担う医師の養成を目的として、都道府県等が実施する「認知症サポート医養成研修」修了者も本加算の要件を満たすものと考えている。

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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