平成28年度の診療報酬改定の具体的な内容が、厚労省より個別事項として掲示されました。全文の閲覧はコチラから可能です。
その中で、維持期リハビリの減額や新設された目標設定等支援・管理料についてわかりやすく解説していきます。
この記事の目次はコチラ
維持期リハビリは延長となる
従来より何度も維持期リハは廃止になる案が浮上していましたが、その度に猶予期間が設けられて確定することはありませんでした。
また、今回の改定でも引き延ばしが決定し、平成30年3月31日までに介護保険に移行するようにと通達がありました。
維持期リハの定義ですが、具体的には以下のすべてに該当する方が対象となります。
- 維持期(脳血管リハ:発症等から180日以降、運動器リハ:発症等から150日以降)
- 脳血管リハ又は運動器リハ(心血管リハ,呼吸器リハなどは含まず)
- 入院中以外
- 介護保険を取得している(要支援も含む)
これらの全てに該当している場合は、次回の改定後(平成30年4月)からは算定が不可となるとのことです。しかしまあ、もう毎回のことなので無視でよさそうですけど。
算定単位が90%から60%に大減額
無視していいと書きましたが、その減額の大きさについては無視できない状況となりました。
従来は要介護被保険者に対する維持期リハは、通常料金の90%に減額となっていましたが、今回の改定で60%まで減額となりました。
介護保険のリハビリテーション実績がない場合は、その額から90%に減額となっていましたが、今回の改定で80%まで減額となりました。
わかりやすく例を用いて書くと、運動器リハ(Ⅰ)は180点(今回の改定で5点増額したので本当は185点)ですが、それが従来なら90%なので163点になります。
維持期でさらに介護保険のリハビリテーション実績がない場合は、その額から90%なので147点まで落ちることになっていました。
それが今回の改定で、180点の60%なので108点、さらに80%なので86点まで下がる計算になります。えげつないですね。
ただし!!以下に示す例外に関しては、この条件には当てはまりません。
維持期リハビリが算定できる場合(例外)
上記に該当する場合であっても、以下の例外に該当する場合は、通常通りに算定できる可能性があります。詳しくは主治医と相談してみてください。
1.以下の症状に該当し、治療継続により状態の改善が期待できると医学的に判断される場合
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2.以下で、治療上有効と医学的に判断される場合
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3.疾患別リハ以外のみを実施している場合
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目標設定等支援・管理料(新設)
平成28年度の改定より、「目標設定等支援・管理料」という項目が新設されました。
簡単に説明すると、要介護被保険者に対しては3月に1回、患者の予後についての説明を行い、介護保険でのリハビリに移行するように促してくださいってことです。
促した証拠として、医者と共同して「目標設定等支援・管理シート」を作成し、カルテに挟むようにし、さらに説明時の状況もカルテに記載してねって感じです。
そうすることで、初回の場合は250点、2回目以降の場合は100点を加算できますよということです。
患者が要介護被保険者にも関わらず、目標設定等支援・管理料を算定していない場合は、積極的に移行を促してないよねってことで減額対象になるようです。(100分の90)
【追記】入院中の方は目標設定等支援・管理料は算定できるかの問題について、説明会にて入院中も対象となるとのコメントをいただきました。
目標設定等支援・管理料の具体的な算定要件は以下になります。
【算定要件】
(1) 脳血管疾患等リハビリテーション、廃用症候群リハビリテーション、運動器リハビリテーションを実施している要介護被保険者等に以下の指導等 を行った場合に、3月に1回に限り算定する。
① 医師及びその他の従事者は、共同して目標設定等支援・管理シートを作成し、患者に交付し、その写しを診療録に添付する。
② 医師は、作成した目標設定等支援・管理シートに基づき、少なくとも次に掲げる内容について、医師が患者又は患者の看護に当たる家族等に対して説明し、その事実及び被説明者が説明をどのように受け止め、ど の程度理解したかについての評価を診療録に記載する。
ア) 説明時点までの経過
イ) 治療開始時及び説明時点のADL評価(Barthel Index又はFIMによる評価の得点及びその内訳を含む。)
ウ) 説明時点における患者の機能予後の見通し
エ) 医師及びその他の従事者が、当該患者の生きがい、価値観等につ いてどう認識しており、機能予後の見通しを踏まえて、患者がどのような活動ができるようになること、どのような形で社会に復帰で きることを目標としてリハビリテーションを行っているか、又は行う予定か。
オ) 現在実施している、又は今後実施する予定のリハビリテーションが、それぞれの目標にどのように関係するか。
③ ①及び②の交付、説明は、リハビリテーション実施計画書の説明、又はリハビリテーション総合計画書の交付、説明の機会に一体として行って差し支えない
④ 当該患者が、以後、介護保険によるリハビリテーション等のサービス の利用が必要と思われる場合には、必要に応じて介護支援専門員と協力 して、患者又は患者の看護に当たる家族等に介護保険による訪問リハビ リテーション、通所リハビリテーション等を提供する事業所(当該保険 医療機関を含む。)を紹介し、見学、体験(入院中の患者以外の患者に限 る。)を提案する。
(2) 脳血管疾患等リハビリテーション、廃用症候群リハビリテーション又は 運動器リハビリテーションを実施している要介護被保険者等のうち、標準的算定日数の3分の1を経過したものについて、直近3か月以内に目標設 定等支援・管理料を算定していない場合、当該リハビリテーション料の 100 分の 90 を算定する。
【経過措置】
目標設定等支援・管理料を算定していない場合の脳血管疾患等リハビリテ ーション料、廃用症候群リハビリテーション、運動器リハビリテーション料 の減算については、平成28年10月1日から実施する。
目標設定等支援・管理料(Q&A)
Q.目標設定等支援・管理料を算定した患者に対して介護保険のリハビリテーションを紹介した場合、体験等の目的で介護保険のリハビリテーションを1月に5日を超えない範囲で受けても、引き続き医療保険のリハビリテーションを算定することが可能とされているが、介護予防通所リハビリテーションのように月額で算定されるリハビリテーションはどのように解釈するべきか。 |
A.支払いの方式にかかわらず、当該患者が介護保険のリハビリテーションを受けた日数が1月に5回を超えないことが要件である。なお、目標設定等支援・管理料を算定した患者に介護保険のリハビリテーションを紹介した医療機関は、紹介先の事業所への照会等によって、当該患者による介護保険のリハビリテーションの利用が暦月で5日を超えたことがあるかを把握し、当該患者を他の保険医療機関に紹介する場合等にも当該情報が引き継がれるよう留意すること。 |
Q.目標設定等・支援管理料とリハビリテーション総合計画評価料は同一月に併算定できるか。 |
A.できる. |
以下は、疑義解釈資料の送付について(その7)に記載。(2016/9/16)
Q. 「H001」脳血管疾患等リハビリテーション料の注6等においては、要介護被保険者等である患者に対し、標準的算定日数の3分の1を経過した後に要介護被保険者等に対し引き続きリハビリテーションを実施する場合において、過去3月以内に目標設定等・支援管理料を算定していない場合に100分の90に相当する点数により算定することとされている。ここでいう「過去3月以内に算定していない場合」とは、具体的にどのような場合をいうのか。 |
A.リハビリテーション料を算定する月の前月を1月目と数えた上で、3月目の初日以降に目標設定等支援・管理料を算定していない場合が該当し、例えば、以下の期間に算定していない場合をいう。
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Q.目標設定等支援・管理料は、3月に1回に限り算定可能とされているが、 継続して算定が必要な場合に、いつから算定可能となるのか。 |
A.目標設定等支援・管理料を継続して算定する必要がある場合には、直近の算定日が属する月を1月目と数えた上で、4月目の初日以降に算定可能であり、例えば、以下のとおり算定可能である。
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Q.目標設定等支援・管理料を算定した上で、脳血管疾患等リハビリテーショ ンを実施している患者に、骨折等の別の疾患別リハビリテーションを必要とする疾患が生じた場合に、目標設定等支援・管理料「初回の場合」を再算定することが可能か。 |
A.可能である。ただし、リハビリテーションを必要とする疾患が2つ以上にわたる患者であっても、患者の状態を総合的に勘案した目標設定等支援・管理料が行われることが適切であり、「初回の場合」を再算定した後に、継続して目標設定等支援・管理料(2回目以降の場合)の算定が必要な場合は、3月に1回の算定に限られること。 |
医療保険と介護保険のリハビリを併用できる期間
従来は、医療保険から介護保険のリハビリに移行する場合は、移行した日から完全に医療保険でのリハビリが実施できない(併用できない)状況でした。
しかし今回の改定では、目標設定等支援・管理料を算定してから3月以内なら、患者が介護保険のリハビリを把握するという意味合いで、一時的な併用が可能となりました。
具体的には、1月に5日を超えない範囲で、介護保険によるリハビリが受けられることになります。お試し期間が設けられるというのは、患者にとっても有益なのではないでしょうか。
1.現行 |
要介護被保険者等である患者に対 して行うリハビリテーションは、同一 の疾患等について、医療保険における 疾患別リハビリテーションを行った 後、介護保険におけるリハビリテーシ ョンに移行した日以降は、当該リハビ リテーションに係る疾患等について、 医療保険における疾患別リハビリテ ーション料は算定できない。 |
2.改定後 |
要介護被保険者等である患者に対して行うリハビリテーションは、同一の疾患等について、医療保険における疾患別リハビリテーションを行った後、介護保険におけるリハビリテーションに移行した日以降は、当該リハビリテーションに係る疾患等について、医療保険における疾患別リハビリテーション料は算定できない。なお、目標設定等支援・管理料を算定してから3月以内に、当該支援における紹介、提案等によって、介護保険におけるリハビリテーションの内容を把握する目的で、1月に5日を超えない範囲で介護保険におけるリハビリテーションの提供を受ける場合は当該「移行」に含まない。 |
病院や診療所は通所リハビリを作るべきか
厚労省は維持期リハを受けている患者を通所リハ(とくに短時間型)に移行してもらうために、以下のような図を用いています。
維持期の患者が医療保険から介護保険に移行した場合、月あたりの報酬額等に大きな差はないと書かれていますが、これは真っ赤な嘘です。
私は今から四年ほど前に、当時勤めていた整形外科クリニックで、維持期リハの受け皿として短時間型デイケアの設立に携わりました。
いずれは維持期リハがなくなるのだから、これはとても自然な流れだったと思います。
しかし、翌年の診療報酬改定では経過措置がとられ、さらに翌年の介護報酬改定では短時間型デイケアの単位がガッツリと削られる結果になりました。
上の図では単純に報酬のみを書いていますが、実際に通所リハを運営するとなると人員や設備も必要ですし、書類業務も膨大に増えることになります。
それにも関わらず、「報酬は大差ないから通所リハに移行してよ!移行支援料(500単位)も払うからさ!」というのは本当に納得がいきません。
しかも移行したらしたで単位は削られますし(今後も介護報酬は削られるはず)、なんのメリットもないですよ。
もしもこれから通所リハを作ろうと考えているなら、短時間型にはせず、大規模にやっていくことをお勧めします(政府は効率化を求めているので1箇所に集めたいみたいです)。
もう日本には財源がありませんので(あっても回さない)、細かなケアよりもとりあえず批判の出ない範囲での効率的な方法を目指していくことになります。
あまり明るい話ではありませんが、是非とも参考にされてください。