先日にAKA-博田法の提唱者である博田節夫先生の施術を間近で見る機会をいただいたので、その効果について書いてみたいと思います。
まずは仙腸関節の痛みがAKA(関節運動学的アプローチ)で改善するかについてですが、改善する人はするし、しない人はしないです。
これは博田先生が治療をしたとしても同様の結果であり、ゴッドハンドでも治せないものは当然ながらにあります。
次にどのような仙腸関節障害が改善するかですが、仙腸関節にロッキングが存在している場合は劇的に痛みも良くなります。
AKAは動きの少ない関節に効果を発揮しやすい手技ですが、これは動きの少ない関節ほどロッキングが起こりやすいことに由来します。
関節に正常な動きとは異なる外力が強制されると、関節は正常とは異なった位置にはまり込んでしまいます。
動きの少ない関節ほど自力でその状態を外すことは困難となりますので、ここを外すことができたら症状は即時に改善するわけです。
とくに仙腸関節はデコボコした関節面をしているため、非常にずれやすい場所であることが伺えます。
また、下肢と体幹をつなぐための継ぎ目であるため、ここにズレが生じると股関節の痛みや腰痛などにつながります。
次に改善しない仙腸関節障害についてですが、仙腸関節に炎症が存在している場合は即時に改善することはできません。
これは肩関節周囲炎でも膝関節の炎症でも全て同じですが、炎症がある関節を徒手的に消炎させることは不可能です。
炎症の有無については、①疼痛、②腫脹、③熱感、④発赤といった四大徴候を確認することが必要となります。
ただし、仙腸関節のように直接的な確認が難しい部位に関しては、関節の可動性を確認することでもある程度に炎症の有無は判断が可能です。
具体的には、炎症のある関節は正常の関節よりも粘り気があり、モビライゼーションを加えたときの感覚に違いが認められます。
ここはかなり重要な部分であり、この感覚を掴むことで、治せる痛みと治せない痛みが少しずつ判断できるようになります。
炎症のある関節は安静が第一ですが、ある程度に落ち着いてきたら、軽く動かしていくほうが消炎も早くなることがわかっています。
このさじ加減は「痛み」が指標となり、例えば、膝関節に炎症所見が認められても、痛みがないなら少しずつ歩いたほうが治りは早いです。
このあたりの炎症コントロールができるようになると、リハビリにおける治療がグッと楽になるはずです。
どうしても治療をしていると、自分もゴッドハンドのようにすべての人をすぐに治せるようになりたいという欲求が出てきます。
それ自体は決して悪くないのですが、炎症が存在する限りはゴッドハンドでも治すことは絶対に不可能です。
そのあたりの「治せる」と「治せない」の境界線を見極められるようになったときが、本当に腕のいい治療家だと思います。
最後に、もうひとつAKAで仙腸関節障害が改善しない場合を書くなら、それは仙腸関節以外に問題がある場合です。
当たり前のように聞こえるかもしれませんが、腰痛の85%は原因不明と書かれているように、原因を特定することは難しいのが実情です。
ただし、ある程度に解剖学や運動学を勉強していくと、それなりにどこに問題があるかは見えてくる部分も増えてきます。
博田先生もそのあたりを詳しく評価することはなかったので、結局は仙腸関節以外に問題がある場合は対処できないかと思います。
ここまでの内容だと少し否定的な部分が多かったですが、実際に目の前で治療をみるとゴッドハンドであることは疑いようもなかったです。
評価と治療も含めてわずか3分ほどで、女性の股関節痛が10分の1まで改善したり、麻痺がある患者の痛覚が改善したりもしました。
そういった意味でも、仙腸関節にアプローチすることで改善する患者はかなり多いのだと再実感することができました。
大切なのは、必要な人に必要な治療が提供されることであり、そのためには正しく評価することがなによりも重要です。
ここではAKA-博田法を賛美することも否定することもありませんが、興味がある方は勉強する価値はあるかと思います。
この世にゴッドハンドは存在しません。治せないものは治せないです。
しかし、治せる患者は確実に治していくことが、業界を発展させるためには重要となるので、是非とも技術を研鑽し続けてください。