EMGバイオフィードバック療法とリハビリテーションでの活用

Biofeedback(以下、BF)トレーニングは、1960年代より始まり、徐々にその概念が臨床に取り入れられ、近年では多方面にわたって応用されています。

現在、理学療法領域に応用されているBF訓練には、筋収縮を感知する筋電図(Electromyography;EMG)を用いるものや、関節の動きを捉える角度計、体重圧を捉える圧力計など種々の機器があります。

それらを使用して実施するバイオフィードバックについてまとめてみました。

バイオフィードバックの定義

Basmajianは以下のように定義しています。

”人間の体内の不随意で感知できない生理的現象を、通常電気的な道具を使い、他の知覚信号に変え外部刺激として捉えることにより随意的コントロールを可能とすること。

難しいので簡潔に書くと、視覚的または聴覚的に運動が確認できるような機器を用いて、それを本人が確認しながらフィードバック(自分でうまく調節していく作業)をしていくことをバイオフィードバックと呼びます。

そして、最終的には機器を使用しなくても、自らでコントロールできるレベルを目指すことです。

BFの原理について

専門書などでは、以下のように説明されています。

”正常な人間の随意運動は、外部情報が生体の外受容器に加わると、求心性および遠心性の中枢神経系を経て効果器である筋肉に伝わり運動が起こります。この間は、体内の各種の受容器より運動中の時間的・空間的な変化が中枢神経系にフィードバックされます。一方、中枢神経系では、フィードバックされた情報をもとに正しく運動がなされているかチェックし、誤った情報であれば修正のインパルスが発射され運動が修正され合目的な運動が遂行できます。このように、入力と出力が運動中常に行われていますが、反復練習によりその頻度は少なくなります。

こちらも難しいので簡潔に書くと、パソコンのキーボードで文章を打とうとした場合、最初はキーの位置もわからないので視覚的な情報でフィードバックしながら練習します。

それが慣れてくるとキーボードを見なくても打つことができるようになります。

さらに熟練してくると、どこにキーがあるなどを意識しないでも反射的に打てるようになってきます。

BFでは、このメカニズムを利用して、通常では見ることのできない筋電図などの波形を視覚的にとらえ、脳へのフィードバックを増やします。

そして、何度も繰り返していくうちに筋電図を見なくてもコントロールできることを目指していくということです。

バイオフィードバックの種類と目的(一例)

種類

目的

筋電図計 筋再教育、随意弛緩、筋力増強
脳波測定器 神経教育
血圧計 自律神経機能の調節
荷重センサー 荷重練習、歩行練習
姿勢鏡 姿勢調節、位置感覚の改善

リハビリテーションの適応

リハビリ領域では主に、筋に対する抑制と、筋に対する促通に利用されます。

抑制とは、痙性斜頚のような筋活動が異常に亢進している筋に対して、随意的弛緩を得ることを目的に利用されます。

促通では、麻痺筋や萎縮筋に対して、筋肉の収縮力を増強する目的で用いられます。

筋に対する促通を目的とした場合

  1. 末梢神経損傷後や脳血管障害後の中枢神経麻痺に対する筋の賦活
  2. 腱移行術後の移行筋の機能転換
  3. 神経移行術後の移行神経の機能転換
  4. 関節疾患による構造性、廃用性、疼痛による筋力低下に対する増強
  5. 骨盤底筋群や肛門括約筋などを対象とした排泄コントロール etc.

筋に対する抑制を目的とした場合

  1. 痙性斜頚や書痙などの過緊張を伴う不随意運動に対する随意弛緩
  2. 病的共同運動に対し不随意に収縮する筋のコントロール、分離運動の再教育
  3. 相反抑制障害による主動筋と拮抗筋の同時収縮に対しての拮抗筋の抑制
  4. 反射性筋スパズムに対する抑制
  5. 不眠症や不安神経症に伴う生理的ストレス反応のセルフコントロール etc.

フィードバックは視覚と聴覚のどちらがいいか

代表的なフィードバック方法である視覚と聴覚ですが、どちらの効果が高いかを比較検討した研究では、聴覚による方がよいとする報告が比較的多いです。

しかし、患者によっては視覚の方がよいとする報告や、両者共に効果であるとする報告も多数あります。

バイオフィードバック療法の効果と利点

BF療法の利点として、安全で副作用がないことが挙げられます。

また、機器より情報が直ちに得られ、正確な訓練の指標となります。

指標があるので、患者も訓練に対する意欲と興味を得られやすく、訓練内容も非常にわかりやすくなります。

筋電図の小型機器を用いることで、家庭や日常生活場面での訓練も可能となります。

しかし、理解力や集中力が乏しい患者に対しては、効果が得られにくいので注意が必要です。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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