シンスプリント(MTSS):骨膜“だけ”では語れない—筋膜滑走と負荷設計で再発を断つ

概要

  • 定義:反復的な走跳動作で脛骨遠位1/3〜近位2/3内側縁に出る運動誘発痛。初期の骨応力障害スペクトラム(疲労骨折連続体の前段階)。 国立バイオテクノロジー情報センター+1

  • 痛みの実体:骨膜刺激+深部筋膜(後脛骨筋・ヒラメ筋腱膜など)滑走不全+骨梁のリモデリング不均衡の複合。 PMC

  • まずやること:①活動量の再設計(週内の高衝撃回数と連日実施の是正)②疼痛ガードライン設定(走ってOKの痛み基準)③足部‐股関節の力学再配分(過回内/骨盤ドロップの補正)。 国立バイオテクノロジー情報センター+1

  • 除外必須:脛骨疲労骨折/慢性労作性コンパートメント症候群(CECS)/神経・血管障害。夜間痛・限局性圧痛・腫脹・痺れは要注意。 bjsm.bmj.com


病態の考え方(“層”でみる)

  1. 骨膜・皮質骨:反復荷重で骨改変速度<負荷速度になると痛み(早期応力障害)。

  2. 深部筋膜・腱膜滑走:後脛骨筋・ヒラメ筋腱膜が脛骨内側縁でズレ/摩擦増→刺激源に。

  3. 荷重線と地面反力:過回内・前額面での“膝内側落ち”+骨盤ドロップで脛骨内側縁へ剪断集中。
    →「炎症だけ」「骨膜だけ」では説明しきれず、骨×筋膜×力学の三層で整理するのが実践的。 PMC


リスク因子(介入ターゲット)

  • 訓練量(頻度・総距離・連日高衝撃)/既往歴足部過回内・舟状骨ドロップ股関節内旋増大や骨盤前額傾き などが報告。女性、BMI、股外旋可動域などの関与も指摘。 MDPI+1


鑑別プロトコル

  • 脛骨疲労骨折:限局性の“点”圧痛、叩打痛、ラン後〜夜間痛の遷延。画像適応を低めに。

  • CECS:一定時間走行で疼痛・張り→休息で速やか寛解、神経症状を伴い得る。

  • 伏在神経/脛骨神経枝の絞扼、筋ヘルニア:感覚異常・局所膨隆。 bjsm.bmj.com


評価(現場で使える最小セット)

  • 圧痛分布:脛骨内側縁に帯状(長さ>5cm)で広がるか。

  • 機能評価:片脚スクワットで骨盤ドロップ/膝外反/過回内の三徴を確認。

  • 軟部組織:後脛骨筋・ヒラメ筋腱膜の滑走痛・局所の張り。

  • 荷重履歴:週当たりラン回数、連日性、路面、シューズの摩耗パターン。


介入ロードマップ

1. 負荷線量の再設計(初期1–2週)

  • 痛み基準(ガードライン)

    • ラン中:痛み3/10以下、終了後24–48hで悪化しないを継続条件に。

  • 頻度>距離>スピードの順で調整(高強度連日を避け、休養日を挟む)。

  • 代替有酸素:バイク/ディープウォーターランで骨負荷を回避し循環維持。 国立バイオテクノロジー情報センター

2. 組織別の手当て(初期〜中期)

  • 骨・骨膜:路面を柔らかく、履き潰れたミッドソール交換。必要に応じショック吸収系インソール(予防・再発抑制で有望)。 PMC

  • 筋膜滑走:脛骨内側縁に沿う低負荷フリクション+スライド、ヒラメ筋–後脛骨筋間のファシア改善。

  • 力学再配分

    • 足部:内在筋(母趾外転・短母趾屈筋)活性、距骨下の中立化。

    • 近位:中殿筋前部束・外旋筋群で骨盤ドロップ・過回内の“源流”を抑制。 MDPI

3. 走りの再教育(中期)

  • ケイデンスわずかに増(衝撃ピーク低下狙い)

  • 接地の静粛性・体幹前傾の過度を避ける

  • 上肢の対側スイングで骨盤水平保持を促す

4. 段階的リターン・トゥ・ラン(R2R)

  • 原則距離→頻度→速度の順に上げ、痛み指標で翌日判定。

  • 開始条件:歩行痛なし、ジャンプ10回で痛み残存なし、階段OK。

  • 進め方(例)ウォーク×ランのインターバルから→連続走へ。速度は最後。最新レビューも個別化・症状誘発管理を推奨。 PMC+2slu.edu+2


エクササイズ処方(週2–4/各2–3セット)

A. 足部・下腿(末端の制御)

  • タオルスクランチ→母趾外転アイソ(足内在筋)

  • カーフレイズ(ヒラメ筋狙い:膝屈曲位)/後脛骨筋の足内反+底屈等尺

  • 脛骨内側縁のティッシュグライド(軽摩擦+関節運動)

B. 近位(股・骨盤の再配分)

  • サイドブリッジ with ヒップアブダクション(中殿筋前部束

  • スプリットスクワット(前額面アライメントを鏡で確認)

C. ラン準備のプライオ

  • リズムスキップ/ショートバウンディング(“静かな着地”に拘る)


装具・シューズ

  • 衝撃吸収インソール:予防面でエビデンス有望(万能ではないが再発対策に位置づけ)。 PMC

  • 過回内が強いケースアーチサポート系で接地圧配分を平準化。 MDPI

  • ミッドソール圧縮の可視化(履き潰れ)→交換の客観基準に。


よくある質問(Q&A)

Q1. どれくらいで走りに戻れますか?
A. 個人差がありますが、歩行・階段で痛みがなく、10回ジャンプで無痛になってからウォーク×ランの比率で開始。距離→頻度→速度の順で増やします。最新レビューでも個別化と症状誘発の管理が推奨。 PMC

Q2. インソールは効きますか?
A. 予防・再発抑制で有望というエビデンス。痛みゼロの“特効薬”ではないので、負荷設計とセットで。 PMC

Q3. ストレッチやマッサージは?
A. ヒラメ筋・後脛骨筋の滑走改善目的で低負荷・短時間を推奨。翌日の痛み増悪があれば量を下げます。

Q4. 何をしたら危険サイン?
A. 夜間痛、限局性の強い圧痛、腫脹、痺れ・脱力は受診目安。疲労骨折やCECS鑑別が必要です。 bjsm.bmj.com


参考(主要ソース)