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慢性閉塞性肺疾患(COPD)のリハビリ治療【ガイドライン参考】

慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)のリハビリ治療について、ガイドラインを参考にして解説していきます。目次は以下になります。

慢性閉塞性肺疾患の概要

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COPDは、たばこ煙を主とする有害物質を長期に吸入暴露することで生じた肺の炎症性疾患です。こちらは気管支喘息とは異なり、不可逆性の気流閉塞を引き起こします。

気流閉塞には肺胞病変と気道病変があり、その割合によって気道病変型優位(慢性気管支炎)と気腫優位型(肺気腫)に分類されます。主な発生因子は以下になります。

原因 最重要 重要 可能性
外因性 タバコ煙 大気汚染、受動喫煙、粉塵 呼吸器感染、社会経済的要因
内因性 α1-アンチトリプシン欠損症 遺伝子、気道過敏性、自己免疫、老化

日本における死亡原因としてCOPDは9位(16,639人)【2011年】で、男性に多く発症します。しかし、主因であるタバコという要素を取り除いたら、男女差はないともいわれています。

COPDは進行性であるため、基本的に予後は不良であり、長期酸素療法患者の5年生存率は約40%と報告されています。

COPDの主な症状

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呼気の気流制限によって換気量が減少するため、動作時の呼吸困難が強いのが特徴です。

そのため、運動耐容能が著しく低下し、呼吸筋の機能異常と疲労、動的肺過膨張、心循環系の機能障害が発生します。

これらの症状により、二次的な廃用症候群が発生し、筋力低下やADL能力の低下を進行させていく要因となります。また、心理的にも活動が億劫となってしまいます。

慢性的な咳嗽や痰が発生する場合が多く、進行例では体重減少、食欲不振、貧血などの全身症状が認められるようになっていきます。

肺機能検査

COPDは気流閉塞が原因であり、1秒率が70%以下となれば閉塞性障害と診断されます。1秒率とは、最大限に吸えるだけの息を吸い込み、そこから一気に空気を吐き出してもらいます。

その中で、1秒間に吐き出した空気量が全体の何%であるかを示したものが1秒率になります。正常なら最初の1秒間に80%以上を排出することができます。

しかし、COPDでは気流閉塞が認められるため、勢いよく空気を排出することができなくなり、1秒率が大きく低下します。

拘束性疾患と閉塞性疾患

診断にはスパイロメーターが用いられ、計測すると呼気吸気ともに流速が低下するため、以下のような形状をとります。

閉塞性疾患のフロー・ボリューム・カーブ

COPDの進行度は、1秒率(%FEV1)の低下度合いによって分類されます。

Grade 重症度 基準値
Ⅰ期 軽度 %FEV1≧80%
Ⅱ期 中等度 50%≦%FEV1<80%
Ⅲ期 重度 30%≦%FEV1<50%
Ⅳ期 最重度 %FEV1<30%

主観的な評価として、MRC(British Medical Research Council)息切れスケールやボルグ・スケール(修正ボルグ・スケール)が用いられます。

1.MRC息切れスケール
Grade 内容
0 息切れを感じない
1 強い労作で息切れを感じる
2 平地を急ぎ足で移動する。または穏やかな坂を歩いて上るときに息切れを感じる
3 平地歩行でも同年齢の人より歩くのが遅い。または自分のペースで平地歩行していても息継ぎのため休む
4 約100ヤード(91.4m)歩行した後息継ぎのために休む。または数分間平地歩行した後息継ぎのため休む
5 息切れがひどく外出できない。または衣類の着脱でも息切れがする
2.Borg Scale
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その他の検査

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胸部X線写真では、肺野の透過性亢進、横隔膜の平坦化、滴状心(過膨張となった両肺によって心臓が押されて小さくなる)などの所見が認められます。

胸部CTでは、肺胞壁が壊れた部位が黒っぽく見えるため、肺胞病変や気道病変まで捉えることが可能です。

視診では、胸式呼吸有意となりやすく、Hoover’s sign(吸気時に下部胸郭が引かれる)の出現、呼気時間の延長などを認めます。また、チアノーゼやばち状指、呼吸補助筋の過緊張や樽状胸郭、頸動脈怒張も確認できます。

1.チアノーゼ
口唇、爪、耳たぶなどの毛細血管が外から観察できる部位で認められる
発生時はO2飽和度が75%以下であることが疑われる
貧血があるとHbの絶対量が少なくなるので現れにくい
2.ばち状指
爪の付け根が隆起して側方からみて180度以上になった状態
通常では160度程度で陥没している
慢性気管支炎、肺気腫、肺癌、うっ血性心不全、肝硬変などにみられる

打診では、病変が気腫優位型の場合は含気が多くなるため、鼓音が聴取できます。横隔膜の水平化に伴い、打診で確認できる横隔膜の高さが低下します。(正常は鎖骨中線で第6肋間前後となります)

聴診では、呼吸音が全体的に低下する傾向にあります。左右差がみられることは少なく、呼気の時間が延長します。痰の貯留が認められる場合は、水泡音や捻髪音、鼾音が認められます。

薬物療法(吸入療法)

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COPDに対する薬物療法の中心は気管支拡張薬になります。その他として、去痰薬や鎮咳薬、感染症を予防する抗菌薬が使用されます。

基本的には吸入薬であるため、患者には吸入方法の指導や確認が必要となります。高齢者ではひとりでの使用が難しい場合もあるため、家族や介護者に手伝ってもらうことも考慮します。

薬物療法のみでは改善が望めず、低酸素血症に陥る場合は、酸素療法の有無についても検討します。

リハビリテーション

病期によってアプローチが異なり、軽症例では持久力や筋力強化を開始時より主体とし、強度も高負荷から開始することが推奨されます。

重症例では、コンディショニングやADL練習を行い、低負荷で持久力や筋力強化を実施します。

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日本呼吸器学会が発行しているガイドラインでは、COPD等の呼吸器疾患に対する運動療法は、エビデンスレベルが「A」に位置しており、治療の中核を担っています。

具体的な内容として、運動療法の開始時には、効率のよい運動トレーニングを目指したコンディション作りのために、呼吸パターンの修正や柔軟性のトレーニングを行うこと。

また、運動療法は継続して定期的に行われる必要があることが記載されています。以下の表に、具体的な効果とグレードについてまとめています。

Grade 内容
A 運動能力の改善、呼吸困難感の軽減
健康関連のQOL(生活の質)の向上
入院回数と入院日数の減少
COPDによる不安と抑うつの軽減
B 上肢の筋力と持久力トレーニングによる上肢機能の改善
効果はトレーニング終了後も持続
生存率の改善
C 呼吸筋トレーニングは特に全身運動トレーニングと併用すると効果的
心理社会的介入が有用

運動①:リラクゼーション

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呼吸時に過剰な働きをしている呼吸補助筋の過緊張を軽減することがリラクゼーションの目的となります。主に斜角筋や胸鎖乳突筋、大胸筋、僧帽筋などに対してアプローチします。

具体的な方法として、まずは呼吸がしやすいポジションに誘導して、そこから対象の筋肉の筋腱移行部に軽い圧迫と伸張を加えていき、Ib抑制をかけていきます。

筋緊張が抑制できたら、無理のない範囲でストレッチングしていきます。また、必要に応じて呼吸介助手技を行い、ゆっくりとした深呼吸を反復するように促します。

運動②:口すぼめ呼吸

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腹式呼吸などの指導とともに多用されるのが口すぼめ呼吸です。口をすぼめることで、口腔内圧を陽圧に保ち、気道内圧上昇による気道虚脱を防ぐことができます。

それにより、酸素飽和度が上昇し、呼吸困難の軽減効果が期待できます。吸気時間と呼気時間は1:5となることを目標に、徐々に呼気を延長させていきます。

運動③:胸郭のストレッチ

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COPDでは、筋肉の過緊張などが原因で胸郭の可動域が制限されている場合が多いです。そのため、余計に呼吸がしにくくなっており、悪循環を作っています。

その流れを断ち切るためにも、胸郭のストレッチは欠かすことができません。棒などを利用して、胸郭を拡げるような体操は普段から実施することが推奨されます。

運動④:全身持久力・筋力トレーニング

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持久力トレーニング(有酸素運動)は、呼吸困難感を軽減するためにも非常に有効な方法です。そのため、軽症である初期より積極的な運動が必要となります。

実際によく実施されているのは、エアロバイクやトレッドミル、階段昇降などがあります。運動強度は、ボルグスケールを基準にして、「ややつらい」程度の負荷で実施します。

COPDの患者では、運動の継続が難しい(途中リタイアが非常に多い)ため、実施する際は運動の効果と必要性をしっかり説明し、なによりも続けられることを目標にすることが大切です。

補助具の検討

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電動車椅子や押し車などの補助具を使用することで、移動時の酸素消費量の減少が期待できます。

また、生活動作に応じてボンベからの酸素供給量を調節することにより、呼吸困難感がなく動作を生活を営めるように設定します。

早期リハビリテーションの功罪

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英国レスター大学病院の研究で、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息の慢性呼吸器疾患の急性増悪入院患者への早期リハビリテーション開始は、再入院リスクを低下せず、身体機能の回復増進にも結びつかなかったことがわかりました。

結果として、介入群のほうが12ヵ月時点の死亡率が高かったことも示されており、むしろリスクを高める可能性も示唆しています。

慢性呼吸器疾患の急性増悪で入院した患者の再入院率は高く、呼吸器ガイドラインでは増悪後の呼吸リハビリテーションが推奨されていますが、早期からの介入について再検討の余地がありそうです。

上記の研究では、介入群は通常ケア(気道クリアランス、運動能の評価と管理、禁煙指導など)に加えて、有酸素運動、神経筋電気刺激療法などが複合的に実施されています。

これまで多くの疾患で早期リハの重要性が謳われてきましたが、呼吸器疾患の急性期に関しては安易に介入すべきでないことが示されました。

COPDの食事について

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慢性的に呼吸困難がある患者では、努力性呼吸のために通常より多くのエネルギーを消費します。また、肺の過膨張や疲労感から食事量が減少する傾向にあります。

そのため、COPDを発症している高齢者の多くが体重減少や栄養不足となっています。エネルギー比でいうと、健常者よりも1.2-1.5倍は摂取したいところです。

そのためには、一日の食事回数を5回ほどに増やし、消化管内でガスを発生させる食品(炭酸飲料やイモ類など)はなるべく避けるようにすることが大切です。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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