腰部脊柱管狭窄症のリハビリ治療

腰部脊柱管狭窄症の概要

  • 定義:脊柱管が狭くなり馬尾/神経根が圧迫されて症状が出る状態。好発は L4/5>L3/4>L5/S1

  • 主症状:しびれ・脱力・感覚低下+間欠性跛行(歩行で悪化、前屈・座位で軽快)。

  • 自然経過:50歳以上の約13%に所見。10年で 改善3:不変3:悪化4 とばらつく。

  • 治療の柱:①保存(教育・姿勢・活動量・鎮痛)→ ②除圧術(適応ありで)。

  • リハの役割構造狭窄は治せないが、腰椎過前弯の是正活動量低下による二次障害の予防は大きな価値。

馬尾:脊髄はL2の高さで終了し、それより下部は馬尾と呼ばれる神経根の束になるのでLCSは馬尾障害(末梢神経障害)を指す。

病態と分類(ざっくり)

  • 正中型:馬尾優位(両側症状に出やすい)

  • 傍正中型:椎間孔直前の根(片側優位)

  • 椎間孔型:椎間孔内の根(片側性)

  • 主な成因:椎間板膨隆/骨棘/椎間関節・黄色靱帯肥厚/後縦靱帯肥厚/脊椎すべり/過前弯姿勢 など
    ※ 画像で“狭い”だけでは病気ではない。神経学的所見との一致が必須。

診察・臨床の勘所

  • 後屈で悪化・前屈で軽快 → 狭窄を強く示唆。

  • 神経学的評価:しびれ、筋力低下/反射低下、知覚障害。

  • 間欠性跛行:カート押し・自転車で楽(前屈で管が広がる)。

  • 画像:MRIで横断面狭小化・黄色靱帯肥厚・椎間板膨隆などを確認(症状と整合を見る)。

鑑別のコツ

  • 椎間板ヘルニア前屈で悪化しやすい(若年に多い)。

  • 末梢動脈疾患(PAOD):自転車でも早く辛い/足背・後脛骨動脈の拍動↓。ABIで確認。

手術適応の目安

  • 保存で十分な改善なし

  • 100 m未満で跛行発現

  • 進行性麻痺膀胱直腸障害

  • 成績:長期で良好が多数・再手術およそ1割。椎弓切除は関節切除量を抑えれば不安定化しにくい傾向。


リハビリの目的

構造狭窄は戻せないが、(1)過前弯の是正(2)体力と活動量の維持(3)長く安全に歩ける工夫でQOLを上げる。

1)姿勢・運動(過前弯の是正が効くタイプに)

  • 骨盤中間~軽後傾の練習(仰臥膝立て→座位→立位)。

  • 腸腰筋の過緊張を緩める(反り腰回避、徒手/セルフリリース)。

  • 大殿筋・腹部の持久力を優先(息を止めずに軽く腹圧を張る)。

  • 胸椎伸展の可動を出し、反る動きを腰だけに集めない。

  • 椎間関節拘縮が強い場合はモビライゼーションを選択肢に。

2)有酸素と筋持久力

  • エアロバイク:RPE11–13、15–30分、週3–5回(前傾で楽)。

  • トレッドミル:軽い前傾・緩傾斜で時間が延びやすい。

  • プール歩行:浮力で痛み軽減。深水での反り腰に注意。

3)日常生活アドバイス

  • 休息は前かがみ(カウンターにもたれる/前屈座位)。

  • カートを押して歩くのは理にかなう。

  • 起き上がり・持ち上げは股関節主導(ヒップヒンジ)

  • 杖など補助具は歩行距離が伸びるなら積極的に。

4)二次障害の予防

  • 150分程度の中等度有酸素を目標に分割可。

  • 抑うつ・廃用を運動習慣でブロック。

受診を急ぐサイン(レッドフラッグ)

  • 膀胱直腸障害、会陰部のしびれ

  • 進行性筋力低下/歩行不能化

  • 発熱+体重減少・がん既往など

  • 明確な外傷後の激痛


よくある質問(Q&A)

Q1. 画像で狭いと言われた=原因?
A. いいえ。症状と神経所見の一致がなければ“所見”止まりです。

Q2. 歩くと辛いのに自転車は平気な理由は?
A. 前傾で脊柱管が広がるから。カートサインも同じ理屈です。

Q3. コルセットは毎日?
A. 急性期の短期使用は可。長期常用は卒業を目指す(筋活動が落ちる)。

Q4. リハで治りますか?
A. 狭窄自体は不可逆なことが多い。ただし歩行距離延長と生活の質改善は十分狙えます。

Q5. 手術のタイミングは?
A. 保存で不十分/100 m未満で跛行/麻痺や排尿排便障害があれば除圧術を検討

Q6. どんな筋トレが良い?
A. 反り腰を助長する高負荷背筋は避け、殿筋・腹部の持久力股関節主導の動作学習を。

Q7. 動脈の病気との見分けは?
A. ABIが有用。自転車でもすぐ辛い、足部拍動弱いならPAODを疑う。


最終更新:2025-10-18