脊椎の構造と付着する筋肉について

脊椎の基本構成

脊椎側面

脊椎(脊柱)は以下で構成されます。

  • 頸椎(C1–C7):7椎

  • 胸椎(T1–T12):12椎

  • 腰椎(L1–L5):5椎

  • 仙椎:5椎が成人で癒合して仙骨

  • 尾椎:3–5椎が成人で癒合して尾骨

可動椎は頸椎・胸椎・腰椎の計24椎。仙骨・尾骨は癒合骨として扱います(個体差により総数は26–33)。


生理的弯曲(S字カーブ)

脊柱は矢状面でS字状の生理的弯曲を示します。

  • 第1次弯曲(胎生期の後弯が残存)

    • 胸椎後弯

    • 仙骨部弯曲

  • 第2次弯曲(乳幼児期に獲得される前弯)

    • 頸椎前弯(頸定〜座位獲得に伴い形成)

    • 腰椎前弯(立位・歩行の獲得に伴い形成)

骨癒合の目安:仙椎は概ね**〜30歳**、尾椎は**20歳代後半〜**で癒合が進みます(個人差あり)。


生理的弯曲の代表角度(目安)

%e8%84%8a%e6%a4%8e%e3%81%ae%e7%94%9f%e7%90%86%e7%9a%84%e5%bc%af%e6%9b%b2

  • 胸椎後弯角20–50°(T4下縁–T12下縁)

  • 腰椎前弯角約30–60°(T12下縁–S1上縁/測定法により差)

  • 仙骨傾斜角(sacral slope)25–45°

測定法・体位・個体差で幅が出るため、経時変化と臨床症状の整合で判断を。


脊椎の可動域の見方(屈伸・側屈・回旋)

1) 屈伸

  • 腰椎は5椎しかないが、1椎あたりの可動が大きく、動作寄与が大きい

  • 胸椎は12椎あるが肋骨連結・棘突起形状のため総可動は見かけより小さい

2) 側屈

  • 頸椎が最大。ただしC1–C2(環軸関節)は側屈しないのがポイント。

3) 回旋

  • 腰椎の回旋は極めて小さい(椎間関節面の配向による)。

  • 頸椎回旋の約半分はC1–C2で担う(環軸関節の特性)。

なぜ弯曲が必要か(力学的意義)

  • 衝撃吸収・荷重分散:弯曲があることで直線柱よりも耐荷重性が増す

  • 過不足は不利

    • 弯曲が減少(平背など)→ 耐衝撃性低下

    • 弯曲が過大(過前弯・過後弯)→ 剪断力増大で疼痛・障害リスク上昇

※従来から「カーブにより柱の強度が増す」と説明されますが、過度の弯曲は逆に剪断ストレスを増やす点に注意。

第1頸椎(環椎)の概要

環椎(atlas)は脊椎の最上部にある椎骨で、後頭骨と環椎後頭関節を、軸椎と外側環軸関節および正中環軸関節を構成します。

環という漢字には輪の形といった意味があり、丸い円形の形を成しており、軸椎の歯突起が突き刺さるようにして環軸関節は形成されます。

環椎上面
上関節窩 【関節】環椎後頭関節
歯突起窩 【関節】正中環軸関節
下関節窩 【関節】外側環軸関節
前結節 【停止】最長筋上斜部(一部)
後結節 【起始】小後頭直筋
横突起 【起始】肩甲挙筋(一部),上頭斜筋(一部)
【停止】頚板状筋(一部),下頭斜筋
横突孔 【通過】椎骨動脈,椎骨静脈
椎骨動脈溝 【通過】椎骨動脈,後頭下神経
外側塊 【起始】前頭直筋
起始する筋肉
肩甲挙筋、前頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋
停止する筋肉
頸板状筋、下頭斜筋、最長筋上斜部

※赤文字の筋肉は起始・停止の一部のみを環椎にもつ

第2頸椎(軸椎)の概要

軸椎(axis)は頸椎の2番目にあり、環椎と環軸関節を、第3頸椎と椎間関節を構成します。環軸関節は全脊椎間の関節で最大の回旋可動域を誇ります。

軸椎側面
歯突起 【関節】正中環軸関節
上関節面 【関節】外側環軸関節
下関節面 【関節】椎間関節
横突起 【起始】肩甲挙筋(一部),中斜角筋(一部)
【停止】頚板状筋(一部),頚最長筋(一部)
起始する筋肉
肩甲挙筋、中斜角筋、大後頭直筋、下頭斜筋
停止する筋肉
頚最長筋、頚棘筋、頚板状筋、頚半棘筋、多裂筋、回旋筋、最長筋垂直部

※赤文字の筋肉は起始・停止の一部のみを軸椎にもつ

第3-7頸椎の概要

頸椎は7個の骨が前彎を示すように連結していますが、第1頸椎と第2頸椎のみは他の下位頸椎と形態がまったく異なります。

第3-7頸椎はほとんど同じ形状をしとり、上下の脊椎間にて椎間関節を構成しています。頸椎は胸椎や腰椎と比較してやや可動域が大きいのが特徴です。

第3頸椎以下は、前方の椎体と後方の椎弓から形成されます。下図は第7頸椎になります。

第7頸椎上面
椎体 【停止】頚長筋垂直部
前結節 【起始】前斜角筋(一部),頭長筋(一部),頚長筋上斜部
後結節 【起始】肩甲挙筋(一部),中斜角筋(一部)
【停止】頚腸肋筋(一部),頚最長筋(一部)
起始する筋肉
僧帽筋中部線維、小菱形筋、前斜角筋、中斜角筋、頭最長筋、頚棘筋、頭半棘筋、頭板状筋、多裂筋、回旋筋、最長筋垂直部
停止する筋肉
胸半棘筋、多裂筋、回旋筋

※赤文字の筋肉は起始・停止の一部のみを頸椎もつ

第1-12胸椎の概要

胸椎は基本的な椎骨の形状をなしていますが、棘突起が長いことが特徴です。下図は第7胸椎になります。

第7胸椎上面
肋骨窩 【関節】肋椎関節(肋骨頭関節)
横突肋骨窩 【関節】肋椎関節(肋横突関節)
起始する筋肉
頚最長筋、頚板状筋、頚半棘筋、胸半棘筋、大菱形筋、僧帽筋中部・下部線維、頚長筋、広背筋、小菱形筋、大腰筋、小腰筋、頭最長筋、頭半棘筋、頭板状筋、胸棘筋、頚棘筋、多裂筋、回旋筋、上後鋸筋、下後鋸筋
停止する筋肉
胸棘筋、胸最長筋内側、胸半棘筋、多裂筋、回旋筋

※赤文字の筋肉は起始・停止の一部のみを胸椎にもつ

第1-5腰椎の概要

腰椎は体重を支えるためにとても頑丈な構造をしています。その特徴は、下部にいくほどに増していきます。

しかしながら、最も障害を受けやすい部位であり、椎間板症や椎間関節障害、椎間板ヘルニアなどのあらゆる障害を引き起こします。

腰椎の横突起は肋骨突起と呼ばれ、肋骨が退化して腰椎に結合したものをいいます。腰椎下部は仙骨に連結します。下図は第5腰椎になります。

第5腰椎上面
肋骨突起 【特徴】胸椎では肋骨にあたる
【起始】大腰筋深頭(一部),回旋筋(一部)
【停止】胸最長筋(一部),腰方形筋(一部)
副突起 【起始】胸最長筋(一部)
【停止】胸最長筋内側
乳頭突起 【起始】多裂筋(一部)
起始する筋肉
広背筋、大腰筋、小腰筋、胸最長筋、胸棘筋、下後鋸筋、多裂筋、回旋筋、横隔膜腰椎部
停止する筋肉
胸最長筋、多裂筋、回旋筋、腰方形筋

※赤文字の筋肉は起始・停止の一部のみを腰椎にもつ

仙椎・尾椎の概要

仙椎は5椎ありますが、成年では骨化してひとつの骨(仙骨)になります。仙骨と第5腰椎は椎間関節を腰仙関節と呼びます。

また、仙骨は寛骨と仙腸関節を構成し、連結として骨盤を形成します。

尾椎は3-5椎ありますが、こちらも成年では骨化してしまっており、ひとつの骨(尾骨)となります。尾骨は仙骨と癒合しており、仙尾連結(仙尾関節)と呼びます。

1.前面から見た仙椎・尾椎
仙骨正面
2.後面から見た仙椎・尾椎
仙骨後面
上関節突起 【関節】腰仙関節
耳状面 【関節】仙腸関節
仙骨尖 【関節】仙尾関節
前仙骨孔 【通過】仙骨神経の前枝
【起始】梨状筋(一部)
尾骨 【停止】骨盤底筋群(一部)
後仙骨孔 【通過】仙骨神経の後枝
起始する筋肉
大殿筋、広背筋、梨状筋、胸最長筋、腰腸肋筋、多裂筋
停止する筋肉
骨盤底筋群

※赤文字の筋肉は起始・停止の一部のみを仙椎・尾椎にもつ


よくある質問(Q&A)

Q1. 成人で椎骨は何個ありますか?
A. 可動椎は24個(頸7・胸12・腰5)。仙椎5と尾椎3–5は癒合して仙骨・尾骨となり、総数表記は26–33程度の幅があります。

Q2. 腰は捻りに弱いって本当?
A. はい。腰椎は回旋可動がごく小さく、捻り負荷は椎間板や椎間関節にストレスとなります。荷物を持つ際のひねり動作は禁忌

Q3. 良い姿勢=弯曲ゼロ?
A. いいえ。生理的なS字カーブがあることが正常。真っすぐすぎる(平背)と衝撃吸収性が落ちます。

Q4. 胸椎が硬いと何が起こる?
A. 胸椎伸展が不足すると、腰椎過伸展や頸椎過前弯で代償し、腰痛・頸肩痛のリスクが上がります。胸郭ストレッチや胸椎モビライゼーションが有効。

Q5. 頸椎の回旋の半分がC1–C2って本当?
A. はい。環軸関節が頸部回旋の50%以上を担います。可動域評価時はC1–C2の寄与を意識しましょう。


最終更新:2025-09-04