はじめに
「骨盤底筋を締めると腰が楽になった」「産後の骨盤底筋トレで腰痛も軽くなった」という人がいる一方で、「がんばって締めても腰は変わらない」「逆に腰がつらくなった」という人もいます。
これは骨盤底筋そのものの“強さ”よりも、骨盤底筋が《どの筋・どの呼吸パターンとつながっているか》で効果が変わるからです。
1. 効きやすい人はこんなタイプ
下のどれかに当てはまったら、骨盤底筋トレをそのままやってOKです。
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産後〜中年でゆるみやすい
くしゃみでもれそう/長く立つと会陰まわりが重い → 引き上げるだけで腰回りが安定しやすい -
お腹に力が入りにくい(ドローインが苦手)
「下から締めて→お腹がちょっと薄くなる→背中が楽」になりやすい人 -
立つと腰が反りすぎる・骨盤が前にずれる
締めると骨盤が少し後ろに戻るので、腰にかかる反りのストレスが減る -
締める+内ももorかかとで力を入れるとやりやすい
連鎖が残ってるので成果が出やすい
2. 先に“ゆるめる”ほうがいい人
逆に下のどれかなら、すぐ骨盤底筋を頑張ると腰がしんどくなりやすいです。
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いつも力んでるタイプ(おしり・内もも・お腹もギューッとなりがち)
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胸が落ちてて、肋骨が全然広がらない
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お尻・背中の筋力が弱くて、全部お腹で支えてる感じ
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締めるとお腹が前にボーンと出る(腰が反る)
上記の場合は、先に深呼吸を1〜2分した後に軽く締めるという順番にすると、腰にきにくいです。
3. 家でできる超かんたん骨盤底筋メニュー
①呼吸で下から起こす(スタート)
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椅子かベッドで楽に座る/仰向けでもOK
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鼻から軽く吸う
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口から「フーッ」と吐きながら、肛門〜尿道をちょっとだけ上に吸い上げる感じ
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3〜4割の力で5秒→力を抜いて10秒休む(この流れで3回)
②仰向け・膝立てで締める(メイン)
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仰向けで膝を立てる(腰は軽く床にあたるくらい)
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さっきと同じように吐きながら骨盤底筋を引き上げる
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そのままお腹をペタンと平らに保つ
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5秒キープ → 10秒休む(この流れで10回)
できる人は、ここで膝の間にタオルを軽くはさむともっと入りやすいです(内転筋との連動)。
③締めたままちょっと動く(応用)
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②の姿勢で締める
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締めたまま、かかとを床上で5cmくらいスライド(片脚ずつ)
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左右5回ずつ
「締める→動く」ができると、歩く・立ち上がるときにも使えるようになります。
④立位バージョン(忙しい日用:日中に数回)
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立ったまま軽くおしりを締める
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吐きながら骨盤底筋を上に引き上げる
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胸が出ないようにアゴを軽く引く
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3秒キープ → 5〜6回
4. 続けるためのコツ
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1セットを短くする:毎日30分より、1日3回×1分のほうが続く
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トイレのあとに1回やると決める:骨盤底筋トレはこれがいちばん習慣化しやすい
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「腰が反ったら中止」のルールを入れる:腰が反る人はやりすぎサイン
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痛い日は呼吸だけにする:ゼロにはしないで“マイクロムーブメント”にしておく
5.治療効果について
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単独でやったときの効果は“小〜中くらい”
PFMTだけを追加した群は、痛みスコアで約1ポイント前後下がる報告が多い(0〜10でつけるNRS)。つまり「なんとなく楽」「生活で気づくくらい」レベル。PubMed+2PubMed+2 -
コア・体幹・骨盤安定化とセットにするともう少し伸びる
腹横筋や骨盤安定化エクササイズと一緒に実施することで、痛み+機能(ODIで5〜10点くらい)まで改善したRCTが存在し、**“他の体幹トレに足すと目に見えてわかる”**改善が期待できる。BioMed Central+1 -
産後・骨盤帯痛のような骨盤底筋群が落ちていることが明確な場合は効きやすい
産後の骨盤帯痛や腰~骨盤まわりの痛みでは、安定化+骨盤底筋で有意に痛みが減少した報告がいくつも存在する。jcgo.org+2Wiley Online Library+2 -
エビデンス全体で見ると「小さな追加効果にとどまることが多い」
2021年のレビューで「PFMTを他の運動に足すと、痛みは若干改善するが質は低く効果も小さい」と記載されており、効果の範囲は限定されているのが実情である。サイエンティフィックダイレクト
まとめ
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腰痛の原因が「不安定そう」「腹圧つくるのが下手」「産後でPF明らかに弱い」なら → わりと効く(メイン級)
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腰痛の原因が「椎間関節性」「仙腸関節そのものが痛い」「胸郭がめちゃ固い」なら → ほとんど効かない(補助にとどめる)