楽な姿勢は腰痛を引き起こすという話

要点(まずここだけ)

  • 楽な姿勢=スウェイバック:姿勢保持筋(とくに脊柱起立筋)をあまり使わず、**靭帯・関節包・椎間関節の“引っかかり”**で体を支える。

  • その場は楽でも、下位腰椎の椎間関節に圧縮ストレスが蓄積→椎間関節炎や**滑走不全(癒着)**へ。

  • 炎症主体のときは安静と段階的な運動で改善しやすいが、癒着主体になるとモビライゼーション等の介入が必要。


スウェイバック(“楽な立ち方”)で何が起きる?

  • 重心が前へ下部体幹も前方。体幹後面の筋活動が減り、**下位腰椎は伸展(関節面が接近)**して“つっかえ”で安定。

  • 短期:筋疲労感は少ないが、椎間関節の局所負担↑ → 炎症(椎間関節炎)。

  • 長期:痛み回避や固定(コルセット常用)で関節包後方の滑走不全・癒着 → 屈曲時痛や可動域のひっかかり。


症状の出方の違い

  • 炎症優位

    • 立位後屈で痛い、障害関節の局所圧痛あり。

    • 安静・アイシング・一時的なサポートで落ち着きやすい。

  • 癒着・滑走不全優位

    • 立位前屈で痛い/朝がピークで動くほど軽くなる(潤滑が戻ると楽)。

    • 放置では自然消失しづらい。モビライゼーション等が必要


やってはいけない落とし穴

  • コルセットの“常用”固定:急性炎症期の短期使用は可。ただし長期固定は拘縮・滑走不全を助長

  • いきなり強い伸展ストレッチ:下位腰椎伸展の“つっかえ”をさらに押し込む恐れ。


評価の観点(臨床メモ)

  • 姿勢:下部体幹前方位/骨盤後傾気味/膝やや伸展。

  • 疼痛誘発:後屈痛(炎症)か、前屈初動痛(癒着)か。

  • 触診:下位腰椎の椎間関節内側縁の圧痛、関節間“スプリング”の減弱。

  • 動作:長時間立位・子ども抱っこ時の反り姿勢で悪化。


介入:段階的アプローチ

1) 炎症期(数日〜1週)

  • 負担軽減:反り姿勢回避、立位は骨盤を軽く前傾→体幹を“まっすぐに”。

  • 相対安静+局所冷却(必要時)/呼吸+骨盤前傾の軽運動

  • コルセットは短期・場面限定(長時間は避ける)。

2) 亜急性〜回復期

  • 関節の“離開・滑走”を回復

    • 侧臥位での椎間関節モビライゼーション(離開方向・痛み回避範囲)

    • 椎間関節離開ポジションでの骨盤ロッキング(小可動・反復)

  • 軟部組織:関節包後方・多裂筋周囲の軽圧+持続リリース(痛みなく2–3分保持)。

3) 再発予防(運動療法)

  • インナー優先:多裂筋・腹横筋の低負荷高頻度(四つ這いバーズドッグ、骨盤前傾保持座位ドリル)。

  • 姿勢保持の再学習

    • 立位で踵寄り荷重→母趾球も使って中間へ

    • 肋骨を下げすぎず(腹圧のみで潰さない)、骨盤軽前傾・胸郭やや上方に伸びる意識

  • 生活指導:長時間立位はこまめに体重移動・骨盤ロッキング、抱っこは片脚前出し+股関節で支える


よくある質問(Q&A)

Q1. コルセットは付けたほうがいい?
A. 急性炎症の強い数日間は“補助”として有効。ただし常用は拘縮リスク。痛みが落ち着いたら外し、運動へ移行。

Q2. 反り腰ストレッチで治りますか?
A. 反りを強めるだけの伸展ストレッチは逆効果。離開→滑走回復→インナー活性→中立アライメントの順が安全。

Q3. 朝が一番痛いのはなぜ?
A. 夜間で関節包が固まり、滑走が低下しているため。小さな可動域運動で温め・潤滑を戻すと軽くなります。

Q4. 再発を防ぐ“合図”は?
A. 立ち仕事終盤に反り姿勢が増える/お尻が前へ出る感覚。感じたら骨盤ロッキング・一歩前出しで中立に戻す。


セルフエクササイズ(目安)

  • 朝の“ほぐし前屈”:膝軽く曲げ、骨盤から小さく屈曲⇄戻す×10

  • 骨盤ロッキング(立位/座位):前傾⇄後傾を小さく各10回

  • バーズドッグ:四つ這い、中立保持で対角をわずかに挙上 5秒×左右5回

  • 壁立ち中立練習:後頭部・背中・骨盤を壁に軽く添え、腰間に手の甲1枚を保つ×30–60秒


最終更新:2025-10-08