「走るときに股の付け根が痛い」
「最近は歩くだけでも響くようになってきた」
でも病院でレントゲンを撮ったら、
「骨には異常ありません」
と言われて、どうしていいか分からない――
そんなパターンはとてもよくあります。
この記事では 「レントゲンで異常なし」と言われた人 を対象に、
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走る・歩くと鼡径部が痛くなる よくある原因
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痛みを悪化させやすい 歩き方のクセ
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今日から試せる 少しラクになる歩き方のコツ
を、なるべく専門用語を少なくして整理していきます。
レントゲン異常なしで多いのは「筋肉と筋膜まわり」のトラブル
レントゲンは主に 骨の異常(骨折・変形など) を映す検査です。
一方、鼡径部には次のような 筋肉・腱・筋膜 がたくさん集まっています。
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太ももの内側の筋肉(内転筋群:長内転筋・短内転筋など)
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ももの付け根の奥の筋肉(腸腰筋)
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お腹の筋肉(腹直筋・腹斜筋)のつけ根
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鼡径部の筋膜・腱膜(いわゆるスポーツヘルニアの出入口)
こういった 「軟部組織」 はレントゲンには写りません。
なので、骨に異常がなくても
筋肉・腱・筋膜が引っ張られすぎて炎症を起こしている
ということは十分にありえます。
この記事では、レントゲン異常なしで多い原因を
ざっくり次の3パターンに分けて説明します。
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内転筋(内ももの筋肉)まわりのトラブル
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腸腰筋(ももの付け根の奥)のトラブル
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鼡径部の筋膜・腹壁まわりのトラブル(“軽めのスポーツヘルニア”手前も含む)
① 内転筋まわりのトラブル(内転筋性グロインペイン)
どんな症状が多い?
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太ももの内側のつけ根〜恥骨の少し横あたりが痛い
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走り始めやスピードを上げると痛みが強くなる
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脚を外に開くストレッチで同じ場所がツーンとする
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痛い側の足を閉じる(内側に寄せる)力を入れると痛い
なぜ走る・歩くと痛くなる?
内転筋は、
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片脚に体重を乗せたとき、骨盤が横にブレないように支える
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足が外側に流れないように「内側に引き戻す」
という役割を持っています。
走る・歩くときに、
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歩幅(ストライド)が大きすぎる
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真っすぐではなく“1本線の上”を歩くような歩き方(クロス歩行)
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上半身が左右に大きく揺れる
と、内転筋は
「伸ばされながら、必死に踏ん張る」
状態が増え、恥骨のつけ根で引っ張られストレス(牽引ストレス)が溜まりやすく なります。
② 腸腰筋まわりのトラブル(股関節前面が奥のほうで痛いタイプ)
どんな症状が多い?
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鼡径部というより、股関節の前面の奥のほうが痛い/詰まる
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坂道や階段、走り出しで痛みが出やすい
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ヒザを胸のほうに抱え込むと、付け根の奥がつまる感じがする
なぜ走る・歩くと痛くなる?
腸腰筋は 太ももを前に振り出す筋肉 です。
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「歩幅を大きくしよう」と頑張りすぎる
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坂道や階段をグイグイ昇る
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普段座りっぱなしで腸腰筋が硬くなっている
と、股関節の前面で
腱が擦れたり、付着部が繰り返し引っ張られる
ことで痛みが出やすくなります。
③ 鼡径部の筋膜・腹壁まわりのトラブル(スポーツヘルニア系)
※ここでは実際の「ヘルニア(脱腸)」確定ではなく、
その手前〜軽い段階の筋膜・腱膜のトラブルも含めて説明します。
どんな症状が多い?
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鼡径部のちょっと外寄り〜お腹の下のほうが痛い
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走ったり、方向転換したりすると痛い
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咳やくしゃみ、腹筋に力を入れたときにズキッとすることがある
なぜ走る・歩くと痛くなる?
お腹の筋肉(腹直筋・腹斜筋)と、鼡径部の筋膜・腱膜の接合部にねじれや引き伸ばしストレスが繰り返しかかることで小さな筋膜の傷・ゆるみが起こりやすくなります。
完全な「脱腸」までいかなくても、その手前の段階でも 走る・歩くと痛い鼡径部痛 は十分に起こります。
痛みが出やすい歩き方のクセ
走るだけでなく 歩くだけでも痛い のは、
「歩き方のクセで、いつも同じところに負担が集中している」
ことが多いです。代表的なものを挙げます。
1)1本線の上を歩く「クロス歩行」
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モデル歩きのように、両足が正中線上で交差する歩き方
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痛い側の股関節が、
外に振られた状態から内側に引き戻される負荷が増え、内転筋に負担大
2)歩幅が大きすぎる
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「大股で歩くほど健康!」と思って無理に歩幅を広げていると着地のたびに股関節周辺の筋肉が遠心性に引き伸ばされ、内転筋や腸腰筋の負担がアップ
3)上半身が左右に大きく揺れる
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片脚立ちになったときに、骨盤が横にガクッと落ちる
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それを支えるために、内転筋や腹斜筋が「伸ばされながら必死に踏ん張る」時間が増える
4)反り腰+胸を張りすぎ
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腰を反らせて胸だけ前に出すような姿勢で歩くと股関節の前面(腸腰筋まわり)が常に短くなり、歩行のたびに前面に詰まり感+牽引ストレスがかかりやすくなります。
今日から試せる「少しラクになる歩き方」のコツ
ここからは、痛みをゼロにする魔法の歩き方ではなく、「負担を少し散らしてラクにするコツ」を紹介します。
コツ① 足を「肩幅ライン」に置く
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意識としては、レールが2本ある上を、それぞれの足が1本ずつの上を進む イメージ
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片脚立ちのときに骨盤がグラつきにくくなり、内転筋・鼡径部への横方向のストレスが減る
👉 クロス歩行気味の人ほど、これだけでかなりラクになることがあります。
コツ② 歩幅は「いつもより1〜2割小さく」
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「頑張って大股で!」ではなく、“ちょっと小股かな?”くらいでOK
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歩幅が小さくなると
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筋肉の伸び縮みの幅が少しマイルドになる
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着地衝撃もやわらぐ
→ 内転筋・腸腰筋の 遠心性の引き伸ばしストレスが減る
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特に 痛みが強い時期は“歩幅を控えめに” が安全です。
コツ③ 少しだけピッチ(歩くリズム)を速くする
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歩幅を小さくした分、テンポを少しだけ速くする
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1歩あたりの衝撃が減り、片脚に体重が乗っている時間が短くなる ので、内転筋や鼡径部への負荷時間も短縮されます。
👉 「足音を小さく、テンポは軽快に」くらいのイメージです。
コツ④ 体を“前に倒す”のではなく「みぞおちを前に運ぶ」
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頭から前に突っ込むように歩くと、腰と股関節前面に負担が増えます。
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みぞおち(みぞおち~おへそのあたり)を真っすぐ前にスーッと運ぶ 意識にすると、
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腰の反りすぎが抑えられる
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股関節の前面に詰まりが出にくくなる
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👉 正面から見ると、みぞおち~おへそが 一直線に前進しているイメージ です。
コツ⑤ 痛い側の脚で「踏ん張らない・止まらない」
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信号待ちなどで 痛い側の脚だけに体重を乗せてボーッと立つ
→ これ、地味に悪化要因です。 -
立つときは
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両脚に均等に体重をかける
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片脚荷重をする場合は、痛くない方に体重を預ける
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歩くときも、
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痛い側の脚でグッと強く蹴り出さない
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体重を乗せたらスッと次の一歩に移る(長時間踏ん張らない)
というだけでも、鼡径部への負担はけっこう変わります。
それでも痛いとき・歩き方を変えても改善しないとき
ここまでの歩き方の工夫は、あくまで
「典型的な筋肉・筋膜由来の鼡径部痛」で
「レントゲンで骨に異常なし」と言われた人
を想定したものです。
次のような場合は、自己判断で我慢せず、再度医師に相談することをおすすめします。
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2〜3週間以上、痛みがほとんど変わらない
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歩き方を工夫しても 日常の歩行で強い痛みが続く
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夜間痛や安静時痛がはっきりある
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熱感・腫れ・赤みが強い
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以前よりも 股関節の動きが明らかに悪くなってきた 感じがする
こういった場合は、
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MRIなど、レントゲン以外の画像検査
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股関節の関節内病変(FAI・関節唇損傷など)
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ごく初期の疲労骨折 など
別の原因を丁寧にチェックしたほうが安全なことがあります。