この記事では、腓腹筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
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腓腹筋の概要
腓腹筋は膝関節と足関節をまたぐ二関節筋であるため、足関節の底屈と膝関節の屈曲に作用します。(ヒラメ筋は足関節の底屈のみ)
ヒラメ筋と比較して日常生活(歩行)ではあまり使用されず、走るなどの緊急時に使用される筋肉であるため、白筋線維の割合が高いです。
ただし、腓腹筋の内側頭は外側頭よりも赤筋線維が豊富であり、日常的に使用されやすい傾向にあります。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | 脛骨神経 |
髄節 | S1-2 |
起始 | ①外側頭:大腿骨の外側上顆
②内側頭:大腿骨の内側上顆 |
停止 | 踵骨隆起 |
動作 | 足関節の底屈、膝関節の屈曲 |
筋体積 | 322㎤ |
筋線維長 | 5.0㎝ |
速筋:遅筋(%) | 51.8:48.2 |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
足関節底屈 |
膝関節屈曲 |
1位 | ヒラメ筋 | 半膜様筋 |
2位 | 腓腹筋 | 半腱様筋 |
3位 | 長腓骨筋 | 大腿二頭筋 |
4位 | - | 腓腹筋 |
下腿三頭筋の概要
下腿三頭筋は腓腹筋とヒラメ筋の総称で、ふたつの筋は踵骨隆起に停止する際にアキレス腱を形成します。
アキレス腱は人体で最も強靱かつ太い腱であり、長さは約15㎝ほどです。
前述したようにヒラメ筋は遅筋線維が豊富なため、持久力が必要な普段の歩行にはヒラメ筋が、瞬発力が必要な走行には腓腹筋が主に活躍します。
腓腹筋の触診方法
写真では、膝関節伸展位での足関節底屈運動にて、腓腹筋外側頭の収縮を触知しています。
下腿の断面図
下腿中央を断面でみた場合、腓腹筋は表層に位置してヒラメ筋を囲い込んでいることがよくわかります。
ヒラメ筋の奥には強力な筋膜が張っており、さらに奥には後脛骨動静脈が通過しています。
そのため、下腿三頭筋(とくにヒラメ筋)が収縮することで後脛骨静脈の血流が促進され、浮腫などの予防につながります。
ストレッチ方法
膝関節伸展位で台(本など)に足先を乗せて足関節を背屈させます。
下腿を内旋することで腓腹筋内側頭を、外旋すること腓腹筋外側頭を選択的に伸張することができます。
筋力トレーニング
立位の姿勢をとり、背伸びをするように踵を上げていきます。腓腹筋は二関節筋ですので膝関節伸展位にて実施します。
トリガーポイントと関連痛領域
腓腹筋にトリガーポイント(TrP)が存在すると、ふくらはぎから踵後方まで痛みが放散します。
腓腹筋にTrPが形成される原因としては、筋肉酷使(例:登り坂を歩く/走る)、不動(例:ギプスを装着する)、S1神経圧迫などがあります。
アナトミートレイン
腓腹筋はSBLという筋膜ラインに属しており、その深筋膜上に滑走不全が生じるとライン上に問題を起こします。
具体的には、足底腱膜炎や膝窩部痛、膝関節屈曲拘縮、腰痛などがあります。
腓腹筋の中でも内側頭が滑走不全を生じやすい場所なので、足関節底屈位(筋膜を伸張したポジション)でヒラメ筋との筋間をたどるようにして触診していきます。
歩行時の筋活動
|
腓腹筋は立脚中期(MSt)ら立脚終期(TSt)にかけて活動します。
MStは遠心性の収縮によって足関節を安定させ、TStは最後の一瞬だけ蹴り出すようにして求心性に収縮(プッシュオフ)します。
前述したように、歩行時の筋活動で重要なのはヒラメ筋であり、腓腹筋は走行時などの強い収縮が必要な場面で活躍します。
関連する疾患
- こむら返り/腓腹筋肉離れ
- 慢性腰痛症
- アキレス腱断裂
- アキレス腱周囲炎 etc.
こむら返り(腓腹筋肉離れ)
腓腹筋は人体で最も筋痙攣を引き起こしやすい部位であり、一般的には腓返り(こむらがえり)とも呼ばれています。
筋痙攣とは、自分の意思とは無関係に筋肉が強く収縮してロックされた状態を指しており、強い痛みを伴うことが特徴です。
こむら返りの発生には、筋肉量の減少や筋疲労、神経障害、新陳代謝の低下、脱水、動脈硬化による血行不良が指摘されています。
臨床的に多いのは深筋膜の硬さであり、前述したようにSBLをリリースすることで改善するケースも多いです。
慢性腰痛症
腓腹筋はSBLを通じて脊柱起立筋群と強く連結しているので、体幹の前屈や後屈で痛みを訴えるケースでは硬さをチェックする必要があります。
臨床的に問題となりやすいのは腓腹筋内側頭であり、起始付近の膝窩部とアキレス腱移行部のヒラメ筋との筋間は滑走不全が好発します。
腓腹筋内側頭が硬いケースでは、連結する内側ハムストリングスの緊張も増大している場合が多く、さらに仙結節靭帯や脊柱起立筋群にも影響を与えます。
脊柱起立筋群の筋・筋膜性腰痛が疑われる場合は、下肢にまで治療範囲を拡げてアプローチしてみてください。