フレイルとは?—定義・評価基準・予防介入まで一気に理解

概要(はじめに)

フレイルは、「加齢にともなう心身の活力低下を基盤に、生活機能が脆弱化した可逆性のある状態」。適切な介入・支援で維持・改善が可能です。
フレイルは「完全自立」と「要介護」の中間に位置し、疾患がなくても予備能低下だけで要介護へ進行しうる点が特徴です。


1. 2つの進行モデル

  • A. 疾病モデル
    脳血管障害・骨折・肺炎など疾患の蓄積で要介護に至る。

  • B. フレイルモデル
    疾患がなくても加齢に伴う予備能低下のみで要介護に至る。
    ※ 自立⇄フレイル⇄要介護の両方向の移行が起こりうる(可逆性)。

高齢化に伴い「高齢による衰弱」が要介護の主因となる割合は増え、90歳以上では最も多い原因


2. フレイルの分類(包括概念)

  • 身体的フレイル:筋力・歩行・活動性などの低下

  • 認知的フレイル:身体的フレイル+軽度認知機能障害(ただし認知症ではない)

  • 社会的フレイル:独居・外出減少・交流低下・経済的困窮など社会参加の弱体化


3. 身体的フレイルの判定(日本の推奨5項目)

次の5要素のうち3つ以上=フレイル、1–2つプレフレイル

判定要素 基準
体重減少 過去6か月で2–3kg以上減少
筋力低下 握力:男性<26kg、女性<18kg
疲労 過去2週間「理由なく疲れる」
歩行速度低下 通常歩行**<1.0 m/秒**
身体活動性低下 「軽い体操」・「定期運動」いずれもしていない

有病率(地域在住65歳以上)

  • フレイル:7.4%

  • プレフレイル:48.1%

  • 加齢とともに増加し、女性で高率

予後
身体的フレイル/プレフレイルは、3年・7年後の死亡・転倒・ADL障害リスクが上昇
特に「体重減少・筋力低下・歩行速度低下」は要介護移行の強いシグナル。


4. 認知的フレイル

  • 定義:身体的フレイル 軽度の認知機能障害(認知症は除く

  • 頻度:地域在住高齢者で約1.2%

  • 影響:公共交通・買い物・金銭管理・家事など手段的ADLが有意に低下。将来の認知症発症リスク上昇

  • 評価MMSENCGG-FATなど(現時点で統一基準は未確立)


5. 社会的フレイル

  • 明確な国際統一定義は未確立だが、独居/外出頻度低下/友人訪問なし/家族との接触低下/毎日会話なしなど、2項目以上該当で社会的フレイルとする簡易基準が広く用いられる(Makizakoら など)。

  • 頻度:地域在住高齢者で約8.4–11.1%

  • 影響:身体的フレイル・うつ・要介護移行のリスク増大


6. 包括評価ツール:基本チェックリスト(25項目)

運動機能・認知・口腔・栄養・社会参加を網羅。
合計点0–3点=健常/4–7点=プレフレイル/8点以上=フレイル
一次スクリーニングとして有用(地域包括ケアの現場でも使いやすい)。


7. 病態メカニズム(なぜ起こる?)

  • 分子レベルの老化(ミトコンドリア障害・細胞老化)→慢性炎症(例:IL-6)・内分泌変化(IGF-1・DHEA低下など)

  • 多臓器の生理機能低下(中枢・自律神経・免疫・造血・代謝)→
    サルコペニア/低栄養体重減少・筋力低下・歩行速度低下・活動性低下・疲労という症候へ

  • 加齢に伴う身体組成変化:体脂肪率↑、筋量↓(50歳以降顕著)

  • 代謝:基礎代謝・身体活動による消費・総消費ともに加齢で低下(筋量↓が寄与)

フレイルサイクル(悪循環)

サルコペニア → 筋力低下/歩行速度低下・疲労 → 活動性低下 → 消費エネルギー↓/基礎代謝↓ → 食欲・摂取量↓(社会的要因も介在) → 低栄養サルコペニアの加速
どこか1点を断つだけでも悪循環は止められる


8. 危険因子(介入標的)

  • 臨床所見:高血圧・糖尿病・冠動脈疾患・COPD・脳血管障害・変形性関節症・多剤服用・栄養失調・肥満/低体重・認知障害・うつ

  • 生物学的:慢性炎症、内分泌因子不足、微量栄養素不足

  • 生活不活動低たんぱく摂取、喫煙、過量飲酒

  • 社会:高齢、女性、教育歴の低さ、独居/孤独、社会経済的困窮


9. 何をすべきか(エビデンスに沿った介入の柱)

  1. 運動(最優先)

    • レジスタンス:下肢・体幹中心、週2–3回、RPE13前後から開始

    • 歩行・バランス:転倒予防プログラム(段階的難易度)

    • 多成分:筋力+有酸素+バランスの組み合わせが最も効果的

  2. 栄養

    • 目安:たんぱく質1.0–1.2 g/体重kg/日(腎機能に応じ調整)

    • エネルギー不足の是正ビタミンDロイシン含有BCAAの検討

  3. 社会参加の強化

    • 週1回以上の外出、役割づくり、グループ運動、ボランティア等

  4. 内科的最適化

    • 多剤服用の見直し、慢性疾患の管理、うつ・睡眠の介入

  5. 口腔機能・嚥下

    • 口腔ケア、咀嚼訓練、摂食嚥下リハ、歯科連携


10. 現場での“実装フロー”(スクリーニング→介入)

  1. 一次スクリーニング

    • 5要素(体重・握力・疲労・歩行速度・活動性)

    • 可能なら基本チェックリスト25項目で包括評価

  2. 領域別の深掘り

    • 身体:握力・歩行速度・TUGなど

    • 認知:MMSE/NCGG-FAT(疑わしければ専門医へ)

    • 社会:独居/外出頻度/交流/経済状況

  3. 多職種カンファで計画

    • 運動+栄養+社会参加+内科的最適化のパッケージ

    • 3か月を目安に再評価(握力・歩行速度・体重・活動量・IADL)

  4. 再評価でコース変更

    • 改善が乏しければ用量増(運動量・たんぱく質)や障壁介入(疼痛・うつ・環境)


まとめ

  • フレイルは可逆性があり、早期発見・多面的介入で改善可能。

  • 身体(筋力・歩行・活動)/認知/社会の3領域をセットで評価・介入する。

  • 現場では5要素+基本チェックリストでスクリーニングし、運動×栄養×社会参加を中核に、多剤・慢性疾患・口腔までカバーするのが実践的です。