「治療直後から余計に痛くなった気がする」
「前回のリハのあと、しばらく動けないくらいしんどかった」
こんな訴えを受けた経験は、多くのセラピストにあるはずです。
患者さんのためを思ってしっかり介入したつもりが、「悪化した」と受け取られてしまうと、お互いに不信感ややりづらさが残りやすくなります。
本記事では、いわゆる**「効かせすぎリハ」**を避けながら、
それでも機能改善・活動性向上につなげていくための考え方と実践ポイントを整理します。
1. なぜ「効かせすぎ」が起こるのか?
1-1. セラピスト側の要因
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“変化を出さなければ”というプレッシャー
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1回1回で目に見える変化を出そうとして刺激量が増える
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徒手療法・運動療法の「効いた感」に引っ張られる
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強いストレッチやモビライゼーションでその場の軽さを狙う
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翌日の反応よりも「即時変化」を優先しがち
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痛みと組織損傷の切り分けが曖昧
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「多少痛がっていても組織的には大丈夫」と理解していても、
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その“多少”の基準が患者と共有できていない
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1-2. 患者側の要因
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痛みへの不安・注意バイアス
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わずかな違和感でも「悪化」と感じやすい
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これまでの医療体験
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「強くやってもらうと効く」「翌日揉み返しがくるくらいがちょうどいい」などの価値観
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逆に、「少しでも痛くなったら絶対ダメ」と思い込んでいるケースも
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二次的なベネフィットや環境要因
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痛みが強いことで休職・休養できている
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家族や職場からの配慮が得られている など
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1-3. 痛みのメカニズム(ざっくり)
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急性期:組織損傷+炎症反応メイン
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刺激量の増やし方には慎重さが必要
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慢性期:過敏化+心理社会因子の影響が大きい
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“効かせすぎ”の多くは、こちらのフェーズで起こりやすい
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わずかな負荷増加でも「痛い=悪化」と解釈される
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2. 介入前に押さえておくべき3つのポイント
2-1. レッドフラッグと神経学的チェック
まずは前提として、「本当に負荷をかけてよい状態か」を確認します。
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夜間痛・発熱・体重減少・がん既往 などのレッドフラッグ
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下肢の筋力・感覚・反射、膀胱直腸障害の有無 など
ここに怪しさがある場合は、効かせる/効かせない以前に主治医へ相談が最優先です。
2-2. 「痛みの意味」の共有
介入前に、簡単でいいので痛みの位置づけを共有しておきます。
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「いまの痛みは、組織がボロボロになっているサインというより、神経が敏感になりすぎている状態に近いと思います」
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「なので、少しの刺激でも大きく痛みとして感じやすいという前提で、今日は“優しめ”でやっていきますね」
このひと言があるかどうかで、
リハ後の痛みの受け止め方がかなり変わります。
2-3. 目標と“ゴールイメージ”を合わせる
「今日のゴール」を共有しておきます。
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NGパターン
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「今日で痛みをゼロにしましょう」
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望ましいパターン
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「今日は、この動きが怖くなくできることを一番の目標にしましょう」
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「痛みそのものよりも、“動いても大丈夫”という感覚を増やすことをゴールにします」
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3. セッション中の「効かせすぎ」を防ぐ技術
3-1. 刺激量は「NRS+24時間ルール」で管理する
よく使われる一つの目安として、
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介入中の痛み強度:NRS 0〜3/10 以内
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介入後の反応:
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「一時的な増悪はあっても、24時間以内に元に戻る」範囲
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を許容ラインとする方法があります。
伝え方の例
「今から行う運動や手技は、
痛みの強さが 10段階中3くらいまで を上限にします。
もしそれを超えそうなら、すぐ教えてくださいね。」
「終わったあと、数時間〜その日中くらい 軽くだるいような感じが出るかもしれませんが、
翌日まで続くようなら教えてください。
次からは刺激をもっと弱く調整します。」
このように “OKライン”と“アウトライン”を事前に言語化しておくと、
「少し重くなった=全部ダメ」になりにくくなります。
3-2. マイルドな刺激から始める
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皮膚・皮下の軽いモビライゼーション
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筋膜のスライド感を意識したソフトタッチ
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呼吸に合わせた仙骨や腰椎周囲へのリズミカルな接触 など
**「気持ちいい〜少し物足りないくらい」**からスタートし、
患者の表情や呼吸を確認しながら、必要であれば段階的に負荷を上げていきます。
3-3. セルフモニタリングを習慣化する
患者さんに、自分の状態をモニタリングしてもらう“癖”をつけます。
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施術中
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「今の刺激、0〜10でいうとどれくらいですか?」
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「怖さはどれくらいですか?」
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セッション後〜次回来院まで
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「今日から次回までの間で、
①一番痛かった時の強さ、
②一番楽だった時の強さを、
おおよそでいいので覚えておいてください」
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“効かせすぎ”が起きやすい患者ほど、
「痛かった瞬間」だけが強く記憶に残りやすいので、
「楽になった瞬間」も一緒に記録させることが大事です。
4. リハ後に「悪化した」と言われたときの対応
実際には、どれだけ気をつけていても「悪化した」と言われることはあります。
そのときの対応次第で、その後の関係性は大きく変わります。
4-1. まずは否定せず、事実と感情を分けて受け取る
NGな反応:
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「そんなはずはないんですけどね」
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「やるべきことはやってますから」
望ましい反応:
「そうだったんですね、つらかったですね。」
「教えてくださってありがとうございます。」
まずは**“事実+感情”を受け止める**ことが最優先です。
4-2. 具体的に“どの程度・どのくらい続いたか”を確認する
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どの動作で一番痛かったか
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NRSでどれくらいまで上がったか
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どれくらいの時間/何日続いたか
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それによって日常生活がどこまで制限されたか
ここで 24時間ルール の話を再度使えます。
「教えていただいた感じだと、
当日の夜まではしんどかったけれど、翌日には元に戻った ということですね。
これは、前回の刺激に神経が反応した“練習中の反応”という範囲かなと思います。」
「もし2〜3日続くような悪化があれば、
刺激量を明らかに下げる必要があります。
今回はギリギリのラインだったので、
次回はもう少し優しめに調整してみましょう。」
4-3. 安全性の説明と“次回の改善案”をセットで伝える
「大丈夫です」とだけ言われても、患者さんは納得しにくいものです。
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「いまの症状から考えると、組織が新しく壊れたサインというより、
神経がびっくりして反応した感じに近い と思います。」 -
「ただ、しんどかったのは事実なので、次回は刺激量を下げて、別のアプローチを試しましょう。」
“安全性の説明”+“具体的な修正案” をセットで伝えることで、
「この人はちゃんと考えてくれている」という信頼につながります。