胸腰筋膜の概要
胸腰筋膜は、腰背部を広く覆う線維性の筋膜であり、脊柱起立筋(最長筋・腸肋筋)を包み、さまざまな筋と連結しています。
胸腰筋膜は浅葉(前葉)と深葉(後葉)に分かれ、脊柱-骨盤-下肢間の力伝達や腰椎・仙腸関節の安定化などに重要な役割を果たします。
胸腰筋膜の構造
| 層 | 主な連結筋 | 特徴 |
|---|---|---|
| 浅葉(前葉) | 広背筋、大殿筋、外腹斜筋、僧帽筋(下部)、大菱形筋 | 腰背部中央は筋が薄く、胸腰筋膜が腱様に肥厚。 L5–S2付近で広背筋と大殿筋が交差し強靭な構造。 |
| 深葉(後葉) | 中殿筋、脊柱起立筋(最長筋・腸肋筋)、内腹斜筋、腹横筋、下後鋸筋 | 上後腸骨棘・腸骨稜・後仙腸靱帯にも付着。 浅葉より薄いが、腹横筋や内腹斜筋の起始腱膜となり腰椎を補強。 |
胸腰筋膜の機能的役割
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脊柱・骨盤・下肢の力学的連結(運動連鎖の橋渡し)
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下部腰椎・仙腸関節の安定化(受動的な剛性を増加)
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腰椎屈曲の制限(過度な前屈を防ぎ椎間板を保護)
胸腰筋膜と腰痛
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慢性腰痛患者では多裂筋萎縮が多く、腰椎安定性が低下
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胸腰筋膜は多裂筋とともに腰椎安定性に関与
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多裂筋トレーニング群では腰痛再発率が約半減した報告あり
→ 胸腰筋膜がうまく働かないと腰椎・仙腸関節の不安定性や疼痛につながる
胸腰筋膜を強化するために重要な筋
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広背筋:浅葉と連結し、上肢運動と体幹を協調させる
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大殿筋:浅葉と連結し、対側広背筋と交差連鎖を形成
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腹横筋:深葉や中層と連結し、腹腔内圧を高めて腰椎・骨盤を安定
これらを同時に働かせることで、胸腰筋膜の張力を高め腰椎安定性が向上する。
胸腰筋膜に問題が起きると
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脊柱-骨盤-下肢間の力伝達不全
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腰椎・仙腸関節の不安定性 → 腰のだるさや痛み
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連結する筋(広背筋・大殿筋など)の機能障害 → 上肢・下肢への二次障害
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関節部へのストレス増加 → 椎間関節障害、仙腸関節炎など
アプローチの実際(臨床ポイント)
🧘♀️ ストレッチ・リリース
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胸腰筋膜そのものではなく連結筋を間接的に介して伸張する
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例:大殿筋・広背筋・腹斜筋群に過緊張がある側をリラクゼーション → ストレッチ
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体幹回旋・側屈ストレッチや四つ這いローテーションなどで左右差を解消
💪 安定化トレーニング
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広背筋+大殿筋の協調収縮:ヒップリフト with 上肢前方伸展、デッドバグなど
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腹横筋の選択的収縮:ドローイン、四つ這いホバリング
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目的:胸腰筋膜の緊張を高めて腰椎剛性を増加
Q&A
Q1. 胸腰筋膜は何のためにある?
A. 脊柱・骨盤・下肢間の力伝達、腰椎・仙腸関節の安定化、腰椎前屈の制限に関与します。
Q2. 胸腰筋膜はどの筋と連結している?
A. 浅葉は広背筋・大殿筋・外腹斜筋、深葉は腹横筋・内腹斜筋・脊柱起立筋などと連結しています。
Q3. 胸腰筋膜が硬い/歪むとどうなる?
A. 力学的連結が乱れ、腰椎や仙腸関節の不安定性・腰痛・下肢障害などにつながります。
Q4. 治療では何を重視する?
A. 胸腰筋膜自体ではなく連結する筋のバランス改善(リリース・ストレッチ)と安定化筋トレを重視します。
最終更新:2025-09-19
