この記事では、ばね指(弾発指)のリハビリ治療について解説していきます。
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ばね指の概要
指を曲げた状態から伸ばそうとすると引っ掛かり感があり、さらに伸ばすときに弾発音が生じる現象をばね指といいます。
ばね指の原因としては、屈筋腱に結節が生じており、その太くなった部分が狭い空間である腱鞘を通過できずに引っかかります。
そこから強く指を伸展させることで結節部分が押し出され、指が伸展するのと同時に弾発音が発生することになります。
ここまでが一般的な説明ではありますが、実際は全身的な筋膜の硬さなどが影響しており、筋膜調整で治るケースもあります。
ばね指は中高年の女性に多く、全指に起こりますが、とくに母指や中指に起こりやすいのが特徴です。
ばね指の自然寛解
ばね指が長期的に自然寛解することは少なく、3ヶ月以上の寛解が認められない場合は手術の適応となります。
適切な処置がなされずに放置されると、屈筋腱が腱鞘を通過できずにロッキングされてしまい、指を伸ばせなくなるといった状態に陥ります。
治療で指を伸展位に保持する装具を用いることもありますが、効果が認められない場合も多く、拘縮の原因となるために使用する場合は適応を見誤らないことが大切です。
具体的な適応としては、腱鞘炎の発生初期であり、過用症候群が引き金となっているケースのみとなります。
注射療法
注射療法は有効とされており、腱鞘内ステロイド注射(特にトリアムシノロンは有効)が使用されます。
実施直後には半数以上の患者でばね指の解消が期待でき、効果は3ヶ月ほど続きますが、再発することも多いです。
注射療法や局所の安静、筋膜治療でも寛解できない場合に、手術が適応されます。
手術療法
手術では、A1滑車を切除する方法が選択されます。
この手術は局所麻酔下にて、外来でも比較的簡単に行える方法です。
ばね指で手術となるケースは非常に多く、再発群も含めると2/3の患者で必要になると報告されています。
リハビリテーション
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ばね指は筋膜障害で起こっているケースもあるため、上記のラインはしっかりとリリースするようにします。
具体的には、以下のポイントを中心にアプローチしてください。
①短母指屈筋
短母指屈筋は屈筋支帯(浅層)より起始しており、緊張の増大は深筋膜へ強い影響を及ぼすことになります。
短母指屈筋と長母指屈筋は母指球の部分で結合し、高密度化を起こしやすくなっています。
指(特に親指)を使う仕事の場合は、オーバーユースを起こしている可能性もあるので内容について確認します。
リリースポイントは、「母指球の高密度化した部位(手指A)」です。
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②長母指屈筋
長母指屈筋は前腕骨間膜の前面より起始しており、緊張の増大は深筋膜へ強い影響を及ぼすことになります。
長母指屈筋腱や長母指外転筋腱は、それぞれ支帯の下を通過して向きを変えます。
屈筋支帯から起始している短母指屈筋に緊張増大があり、支帯が硬い場合は、第1中手関節に影響を及ぼします。
リリースポイントは、「前腕遠位の前外側(手根al1・al2)」です。
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③長母指外転筋
長母指外転筋は前腕骨間膜の前面より起始しており、緊張の増大は深筋膜へ強い影響を及ぼすことになります。
長母指外転筋は、前方では長母指屈筋、後方では長母指伸筋と隣接している。
そのため、それらの筋腱間接合部に高密度化が存在すると、手関節橈側部や第1中手関節に影響を及ぼします。
リリースポイントは、「前腕遠位の後外側(手根rl1・rl2)」です。
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④背側骨間筋
第1背側骨間筋は外方の筋膜ラインに存在しており、背側骨間筋の中でも特に硬くなりやすいのでチェックしておくとよいです。
リリースポイントは、「第1および第2中手骨の間(手指L)」です。